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始まりはきんつばから
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俺、折窪 優弥は幸せ者だ。
周りから可哀想と哀れまれるような境遇を生きてきてはいるが、そう思える。
小学生の時に両親を亡くし、姉二人と暮らして来た。
当時、上の姉は就職を目前にした学生で、一家の大黒柱としての重責を背負うにはまだ若かった。
しかし、優弥が心配になるくらいの働き詰めで、なんと三人が生活していくことが出来た。
それは勿論、両親が残してくれた遺産のおかげもあっただろうが、下の姉のおかげでもある。
大学入学を目前にした多感な時期で、自分も相当大変だろうに、それからの家事や優弥の世話などはほぼ全て彼女がやってくれた。
上の姉が父代わりに、下の姉が母代わりになった、と言ったところだろうか。
突然の不幸に見舞われ、それまでの生活がガラッと変わってしまった。
優弥はそれに耐えられずにやさぐれていた時期もあったが、二人の姉は見放さず、ずっと優弥のそばにいて一緒に苦難を乗り越えてきた。
今では二人にとても感謝しているし、いつか必ず恩返しをしたいと思っている。
それには早く自立した生活を送れるようにならないと。
優弥はもうすぐ高校卒業を迎えようとしていた。春からは大学生になる。
本当は高校を出たら就職しようと思っていたのだが、姉二人に断固として反対された。
大学に行くことによって、将来の道の幅が広がるから、絶対に行った方がいいと。
ここで成績が芳しくなかったのならばそれを理由に拒否できたのだが、あいにくと優弥は成績優秀だった。
成績が悪いと姉達が心配するのだ。勉強が手につかないような、心の問題があるのではないかと。
姉達に余計な心配をかけたくなかったので、名の通った大学に推薦してもらえる程の成績を取っていた。
実際、この春から通うのは国立の大学だ。
結構頑張った。
そんなとある日、優弥は帰りが遅くなってしまった。
サッカー部の友人の引退試合に誘われたのだ。
勿論、出場する方で。
引退試合と言っても行うのは部内で、三年生対一、二年生という、紅白戦のような意味合いだった。
優弥の学年にはサッカー部が十人しかおらず、助っ人として優弥に声がかかったのだ。
前にもこうやって、助っ人に何度も駆り出されている。
サッカー部だけではなくて、バスケ部やテニス部などからも声がかかり、果ては剣道部や柔道部、水泳部なんかからも助っ人を頼まれたことがある。
優弥は運動神経抜群だった。
スポーツテストでは全国でも上位に食い込む成績を残し、体育祭ではどの競技でも注目の的になる。
だが、それを鼻にかけずに人当たりが良く、頼られると断れない性格の優弥は、毎日色んな人から声をかけられていた。
そんなこんなで、今日の引退試合。
声をかけられはしたが自分はサッカー部に所属しているわけではないのだし、引退試合と銘打っているのだから今回はサポートに回ろうと、そう決めていた。
しかし、結果だけで言うと2ゴール3アシストの大活躍。
それ程、優弥の運動神経がずば抜けていた。
なんだか悪い気もしたが、みんなは笑っていた。
最後なんだか気にするな、と。
最後だから気にするのだが、誰も気にはしていなかった。
みんな笑って、そして泣いていた。
そう、最後なのだからと。
その後、打ち上げをやると言うのだが、それこそサッカー部だけでやるべきで、優弥は丁重に断って家路に着いた。
途中、試合を観戦していたクラスメイトの女子に声をかけられた。
なんだか嫌な予感がすると思ったが、その予感はズバリ的中し、告白されてしまった。
成績も良く、運動神経抜群で、見た目も割と良い部類に入るのだろう。
高校に入ってから、何度となくこのように女子から告白される。
しかし、優弥はその全てを断ってきた。
理由は単純、姉達よりも先に幸せになれないからだ。
姉達はあの日から彼氏など作らず、家族のためにずっと頑張ってくれている。
そんな姉達を差し置いて、自分が彼女を作るだなんてもっての他だ。
姉達からは気にするなむしろ作れと言われたが、これだけは頑として譲らず、幼馴染みにはシスコンと詰られる始末。
しかし、優弥は絶対に折れなかった。
姉達は幸せになってほしい、いや、幸せになっていいのだ。
家族のため、優弥のために身を粉にして働いてくれている姉達には幸せになる権利がある。
そんな姉達よりも先に、恋人を作って良いわけがない。
だから全て断ると決めていた。
それは、告白した方もわかっていたのか、あっさりと納得してくれた。
しかし、泣き出してしまった。
正直、こういうことは一度や二度ではない。それなりの回数に昇る。
しかしだからといって慣れているかどうかは別問題なのだ。
断った自分には何も出来ない。
だから、泣き止むまでそばにいてあげるだけだ。
しばらくして、クラスメイトは泣き止むとごめんと小さく一言残し、逃げるように離れていった。
優弥は一度ため息を吐き、再び帰路へと足を向ける。
すると、しばらくして幼馴染みがひょっこりと現れた。
どうやら、どこかの影から先程の様子を見ていたらしい。
優弥の隣に並ぶと、やれ女心がわかってないだの、やれシスコンだの、散々な言葉をぶつけてくる。
どれも本当のことなので、苦笑して聞き流す。
こんなことも日常茶飯事、いつもの風景だった。
やがて家の前に着き、幼馴染みと別れた。
向かいの家に入っていく幼馴染みを見送ってから、優弥も自分の家に入る。
そこでふと思い出したのだ。
今日は両親の大好きだったきんつばを買ってこなければいけなかったのを。
周りから可哀想と哀れまれるような境遇を生きてきてはいるが、そう思える。
小学生の時に両親を亡くし、姉二人と暮らして来た。
当時、上の姉は就職を目前にした学生で、一家の大黒柱としての重責を背負うにはまだ若かった。
しかし、優弥が心配になるくらいの働き詰めで、なんと三人が生活していくことが出来た。
それは勿論、両親が残してくれた遺産のおかげもあっただろうが、下の姉のおかげでもある。
大学入学を目前にした多感な時期で、自分も相当大変だろうに、それからの家事や優弥の世話などはほぼ全て彼女がやってくれた。
上の姉が父代わりに、下の姉が母代わりになった、と言ったところだろうか。
突然の不幸に見舞われ、それまでの生活がガラッと変わってしまった。
優弥はそれに耐えられずにやさぐれていた時期もあったが、二人の姉は見放さず、ずっと優弥のそばにいて一緒に苦難を乗り越えてきた。
今では二人にとても感謝しているし、いつか必ず恩返しをしたいと思っている。
それには早く自立した生活を送れるようにならないと。
優弥はもうすぐ高校卒業を迎えようとしていた。春からは大学生になる。
本当は高校を出たら就職しようと思っていたのだが、姉二人に断固として反対された。
大学に行くことによって、将来の道の幅が広がるから、絶対に行った方がいいと。
ここで成績が芳しくなかったのならばそれを理由に拒否できたのだが、あいにくと優弥は成績優秀だった。
成績が悪いと姉達が心配するのだ。勉強が手につかないような、心の問題があるのではないかと。
姉達に余計な心配をかけたくなかったので、名の通った大学に推薦してもらえる程の成績を取っていた。
実際、この春から通うのは国立の大学だ。
結構頑張った。
そんなとある日、優弥は帰りが遅くなってしまった。
サッカー部の友人の引退試合に誘われたのだ。
勿論、出場する方で。
引退試合と言っても行うのは部内で、三年生対一、二年生という、紅白戦のような意味合いだった。
優弥の学年にはサッカー部が十人しかおらず、助っ人として優弥に声がかかったのだ。
前にもこうやって、助っ人に何度も駆り出されている。
サッカー部だけではなくて、バスケ部やテニス部などからも声がかかり、果ては剣道部や柔道部、水泳部なんかからも助っ人を頼まれたことがある。
優弥は運動神経抜群だった。
スポーツテストでは全国でも上位に食い込む成績を残し、体育祭ではどの競技でも注目の的になる。
だが、それを鼻にかけずに人当たりが良く、頼られると断れない性格の優弥は、毎日色んな人から声をかけられていた。
そんなこんなで、今日の引退試合。
声をかけられはしたが自分はサッカー部に所属しているわけではないのだし、引退試合と銘打っているのだから今回はサポートに回ろうと、そう決めていた。
しかし、結果だけで言うと2ゴール3アシストの大活躍。
それ程、優弥の運動神経がずば抜けていた。
なんだか悪い気もしたが、みんなは笑っていた。
最後なんだか気にするな、と。
最後だから気にするのだが、誰も気にはしていなかった。
みんな笑って、そして泣いていた。
そう、最後なのだからと。
その後、打ち上げをやると言うのだが、それこそサッカー部だけでやるべきで、優弥は丁重に断って家路に着いた。
途中、試合を観戦していたクラスメイトの女子に声をかけられた。
なんだか嫌な予感がすると思ったが、その予感はズバリ的中し、告白されてしまった。
成績も良く、運動神経抜群で、見た目も割と良い部類に入るのだろう。
高校に入ってから、何度となくこのように女子から告白される。
しかし、優弥はその全てを断ってきた。
理由は単純、姉達よりも先に幸せになれないからだ。
姉達はあの日から彼氏など作らず、家族のためにずっと頑張ってくれている。
そんな姉達を差し置いて、自分が彼女を作るだなんてもっての他だ。
姉達からは気にするなむしろ作れと言われたが、これだけは頑として譲らず、幼馴染みにはシスコンと詰られる始末。
しかし、優弥は絶対に折れなかった。
姉達は幸せになってほしい、いや、幸せになっていいのだ。
家族のため、優弥のために身を粉にして働いてくれている姉達には幸せになる権利がある。
そんな姉達よりも先に、恋人を作って良いわけがない。
だから全て断ると決めていた。
それは、告白した方もわかっていたのか、あっさりと納得してくれた。
しかし、泣き出してしまった。
正直、こういうことは一度や二度ではない。それなりの回数に昇る。
しかしだからといって慣れているかどうかは別問題なのだ。
断った自分には何も出来ない。
だから、泣き止むまでそばにいてあげるだけだ。
しばらくして、クラスメイトは泣き止むとごめんと小さく一言残し、逃げるように離れていった。
優弥は一度ため息を吐き、再び帰路へと足を向ける。
すると、しばらくして幼馴染みがひょっこりと現れた。
どうやら、どこかの影から先程の様子を見ていたらしい。
優弥の隣に並ぶと、やれ女心がわかってないだの、やれシスコンだの、散々な言葉をぶつけてくる。
どれも本当のことなので、苦笑して聞き流す。
こんなことも日常茶飯事、いつもの風景だった。
やがて家の前に着き、幼馴染みと別れた。
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