犬、やめました。【コミカライズ企画進行中作品】

花澄そう

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サークル飲み会

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「どうして、ここにサークルメンバーじゃない人がいるんですか?」
「誘われたんだよ」

「ふーん」
さすがにこんなに沢山の人がいる所だし、アキラは何もしてこないだろうから別にいいけど。ただ酒が不味くなるだけ。


昔は酷いものだったけど、大人になったアキラは東十条ひがしじゅうじょうけホールディングスの看板を背負せおっているのを自覚したのか、私以外には多少だけど外面たしょうそとづらが良くなっている。


だからきっと、こういう場のアキラは無害だ。

「遥ちゃん何飲む?」
わざわざメニュー表を手に注文を聞きに来てくれた美月さんに、カシスオレンジをお願いする。


「お前弱いから飲み過ぎんなよ」
「心配してくれてありがとう」
弱くなんて無いんですけど?何言ってんの?
心の中で喧嘩を売りながら完全な作り笑いで返す。

「お前、飲むと馬鹿になるからな」
皮肉な口調にカチンとくる。

「飲むと、馬鹿?⋯⋯どういう事よ」
アキラと仲いいとも思われたくない私は、出来るだけ表情をあまり変えずに返す。

「あれ?お前もしかしてあの日の事、全く覚えてねぇの?」
アキラはグラス片手に少し驚いた顔を見せる。



「あの日……?」
あの日って、多分アキラと再会した、あの宅飲み会の事を言ってるんだろうけど……。
そういえば、宅飲み会の翌日のメールに今アキラが言ったような事が書いていたような?

じゃあ……何?
あの日、私が何かおかしな事をしたって事?

あの日の事はほとんど記憶が無いから、一緒に行った友達に特に変わったことがなかったってちゃんと聞いたのに。

『何もなかった』って言ってる友達と、何かあったような口調のアキラ、一体どっちが本当なの?

「ふぅん、そうなんだ。馬鹿って幸せ者だな」
考え込む私の顔を覗くアキラは、意味深な言い方をした。

「な、なによ、なんかムカつくわね」


相変わらずかんに障るヤツ。
言うなら勿体もったいぶらずに言えばいいのに。
でも『教えて』なんて言うと、負けてる気がして絶対に聞けない。

「さっきから仲良さそうだけど、2人って知り合いですか?」
向かい側から声を掛けられる。
私たちの話に割って入ってきたのは、メイクが濃くなって戻って来たサークル友達。

「知り合い……?」
そう言われてアキラの方を向くと、胡散臭い笑い方をする端正な顔のアキラが映る。

ああ、どう見たらこんな奴と仲良さそうに見えるのか、是非教えて欲しいところです。

「言えば知り合い……なのかな?」
私の希望は完全に他人なんですけど。

アキラとの仲をあまり公言はしたく無い私は曖昧あいまいな返事をする。

仲のいい友達だけに口止め有りで話すならまだしも、こんな沢山たくさんの人がいる所で話すなんて論外だ。

「え、どっちなんですか?」
あれ、まだ掘り出そうとするの?もうこの話題嫌。

「えっと……」
答えないと逃げられなさそうな状況に、なんと言えばいいのか困っていると、横からアキラが片肘ついて横から話し出す。

え!?ちょっとまさか……待って待って!
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