犬、やめました。【コミカライズ企画進行中作品】

花澄そう

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この想いの正体

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運転手さんに車のドアを閉められると、すぐに投げかけられる質問。
「遥ちゃんこの後、時間ある?」

そんなの、無かったとしても、あると答えるに決まっている!
「あ、ありますっ!!」

つい意気込んで言ってしまった事がおかしかったのか、また眉を下げてフッと笑うお兄さん。

「良かった。じゃあ、遥ちゃんには僕の特別な場所に連れてってあげるね」
私はそんな王子様のような笑顔に吸い込まれる。

「特別な……場所?」
「そうだよ。彰だって連れてったことない場所だよ」
そんな凄い場所を出会って間もない私なんかに教えてくれるなんて、めちゃくちゃ嬉しい。
なんか、特別みたい。


短い高速を降りてしばらく豪華な家が続いたあと、少し山道にれる。
すると、すぐに車が止まった。

「到着致しました。崇お坊ちゃまと白藤お嬢様」

開けられた後部座席のドアから先に降りたお兄さんは、すぐに振り返って私に手を差し伸べる。

「どうぞ、遥ちゃん」
髪がキラキラ光って、更に王子様感がアップしていて、ずっと鳴りっぱなしの心臓に更に追い打ちをかけられる。

「ありがとう、ございます」
差し伸べられた手の上に遠慮がちにそっと手を乗せると、ギュッと握られる。

それだけでまた跳ねる心臓。


車から降りて周りを見ると、ここは山の上のようで、目の前には東十条の豪邸を思わせるような豪華な屋敷があった。

「遥ちゃん、見せたいものがあるんだ。でも、ここからは少し目を閉じててくれる?」



「え?はい」
そう言ってギュッと目を閉じると、繋いでない方の手に暖かいものが触れた。
握られて、やっとお兄さんの手だと分かった。

「今から少し歩くね。ゆっくり歩くからちゃんと僕の手を握っててくれる?」
そんな事を優しく言うお兄さんに静かに頷くと、握られた両手はゆっくりと引かれ始める。

見せたい物ってなんだろう。
初めての場所で目をつむる不安感はあったけど、期待感の方が大きい。


足に草の様なものが時々当たっている気がする。
足の裏の感触からしてフワフワしているから芝生とか、そういう上を歩いているのだろうか。

視界が遮断されているからか、森林の匂いが濃く感る。
私とお兄さんの足音がよく聞こえる。

繋がれたお兄さんの手は、暖かくて、柔らかい。

結構歩いている気がするのにまだ着かないのかな?
さすがに少し不安を感じて来る。

「まだ、目を開けちゃ駄目ですか?」
「うん、もう少し待って」
「はい」
手を繋がれていても、目を瞑りながら歩くって、こんなにも不安に感じるものなんだ。
と思っていた時、いきなり手を離された。

「えっ!?お兄さん!?」
慌てて手探りでお兄さんの手を探す。

すると両頬に手が添えらた感触がした。
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