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11年越しの告白
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しおりを挟む恋なんて必要ない。
私が欲しいのは、そんなものじゃない。
私が欲しいのは、将来的に安定した職と――
本当の愛。
自分の部屋のドアが開く。
「どう?熱は」
そう聞いてくるのは、ヒラヒラのワンピースを着て、まつ毛までバッチリと決まったお洒落なお母さん。
今から和君とデートなんだろう。
見たくないのに、また見た事のない高そうな服が目に入って、背中からじわじわと押し寄せる黒い影。
私はそんな影を振り払うように頭を振る。
「どうしたの?大丈夫?」
「大丈夫。もう、ほとんど熱はないよ」
本当はまだまだ熱はあったけど、本当の事を言うと嫌な顔をされそうな気がして、つい嘘をついてしまう。
私の言葉にホッとしたように手を合わせて喜ぶお母さんに、電源を消した体温計を渡す。
「そう、良かったわー。
それにしても遥。まだあの東十条家と繋がっていたのね。とっくに切れてると思っていたのに」
その時、ピコンとスマホが鳴ってスマホを手にした私は、画面に目を向けたまま適当に返事をする。
「別に、たまたま通りがかった時に助けてくれただけだよ」
「ふーん。崇くん、とってもいい大人になってたわね。
それにあの車、一体いくらするのかしら?ねぇ……崇くんと何かあったりしないの?」
食い入るような質問を投げかけられてスマホからお母さんに視線を動かすと、作り笑顔が張り付いていた。
「あ、あるわけないでしょ!」
「そう?残念。やっと久しぶりに遥ちゃんの恋バナ聞けると思ったのにぃ⋯⋯。
いいなぁ~お母くんもあんなイケメンと恋愛してみたい」
「別にそんなんじゃないって言ってるでしょ。いつも言ってるけど私は恋愛とか、もう要らないの。
って、お母さんには和君がいるじゃん」
「まぁそうなんだけど。……あっ、もうこんな時間!
とりあえずお粥だけ作ってきてあげるわね」
そう言って部屋を出ていくと、ものの2分で戻ってきたお母さんの手には嫌ほど食べてきたカップ麺のようなものがあった。
でもよく見るとパッケージに『お湯だけ5分でお粥』と書いてあり、そこでお粥だと知る。
「お母くん、これから出ないといけないから。何かあったら連絡頂戴ね」
「うん。ありがとう」
ベットサイドにスプーンとそのカップ麺みたいなお粥を置くと、鼻歌を歌いながら部屋を出ていき、すぐにドアが閉まる音が聞こえた。
インスタントのお粥を見て呟く。
「作ってきてあげる……か」
欲張りなのかな。
……私。
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