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涙の決断
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目の前の彰は、まるで幻のよう。
暫く目にしていなかった彰の姿は、初めて見た袴姿のせいか全く現実味が無い。
だから一瞬、『本当は会いたい』という強い気持ちが生み出してしまった、幻覚なんじゃないかとさえ思って、この目に見えている彰を疑った。
でも、目の前にいるのは幻でも幽霊でも無い、紛れもなく本物の彰のよう。
ああーー
死ぬ程会いたかったけど、絶対に会いたくなかった。
「え?もしかして、彰を見つけたのかい?」
驚いたような声がスマホ越しに聞こえてハッとする。
でも、それと同時に目の前の彰が機嫌悪そうに眉をしかめると、口をゆっくりと動かした。
その動きは『い、う、な』と言っているように見え、滑るように否定した言葉を口走る。
「……あ、いえ」
「そうかい。ほんと、どこに行ったんだろうね」
そんな残念そうな声を聞いて、すぐにこの嘘は駄目だと思った。
だって、この嘘はキヨコさんを困らせる嘘だから。
何から逃げたのか知らないけど、キヨコさんを困らせないで。
「キヨコさん、すみません。本当は⋯⋯」
彰を見つけました。
そう言いかけた口は、ふと浮かんだ考えによって中断される。
……あ、れ……
まさか『逃げて来た』ってーー
結納から!?
いやいや、考え過ぎでしょ?
普通そんな事する人いる!?
いや……でも気に食わない事があったら、彰なら全然やりそう。
結納の場から逃げて来たのなら、こんな大層な袴を着ている事も物凄く納得がいく。
いつもサラサラに下ろしている髪も、流し気味に整えられてるし。
ってか、見れば見るほど、それしか考えられないかも。
でも、なんで逃げたの?
あの日、先に約束していた私とのデートより、婚約者さんと会うのを選んだ位なのに。
しかも、お父さんに呼び出されたって嘘まで付いて会いたかった人との婚約の場から逃げ出すって、何があったらそうなるの?
あれ?ってか、待って!?
それよりも、あの時からずっと逃げ続けていたのに……
今この状況、やばいんじゃないの!?
逃げないと駄目だって頭の中で警告音が鳴った。
なのに、いきなり置かれた今の状況に、頭がパンクして逃げる事も出来ずにフリーズした。
そんな私と彰の間にはある程度距離があったはずなのに、気付けば手も届きそうな程の距離に彰が立っていた。
暫く目にしていなかった彰の姿は、初めて見た袴姿のせいか全く現実味が無い。
だから一瞬、『本当は会いたい』という強い気持ちが生み出してしまった、幻覚なんじゃないかとさえ思って、この目に見えている彰を疑った。
でも、目の前にいるのは幻でも幽霊でも無い、紛れもなく本物の彰のよう。
ああーー
死ぬ程会いたかったけど、絶対に会いたくなかった。
「え?もしかして、彰を見つけたのかい?」
驚いたような声がスマホ越しに聞こえてハッとする。
でも、それと同時に目の前の彰が機嫌悪そうに眉をしかめると、口をゆっくりと動かした。
その動きは『い、う、な』と言っているように見え、滑るように否定した言葉を口走る。
「……あ、いえ」
「そうかい。ほんと、どこに行ったんだろうね」
そんな残念そうな声を聞いて、すぐにこの嘘は駄目だと思った。
だって、この嘘はキヨコさんを困らせる嘘だから。
何から逃げたのか知らないけど、キヨコさんを困らせないで。
「キヨコさん、すみません。本当は⋯⋯」
彰を見つけました。
そう言いかけた口は、ふと浮かんだ考えによって中断される。
……あ、れ……
まさか『逃げて来た』ってーー
結納から!?
いやいや、考え過ぎでしょ?
普通そんな事する人いる!?
いや……でも気に食わない事があったら、彰なら全然やりそう。
結納の場から逃げて来たのなら、こんな大層な袴を着ている事も物凄く納得がいく。
いつもサラサラに下ろしている髪も、流し気味に整えられてるし。
ってか、見れば見るほど、それしか考えられないかも。
でも、なんで逃げたの?
あの日、先に約束していた私とのデートより、婚約者さんと会うのを選んだ位なのに。
しかも、お父さんに呼び出されたって嘘まで付いて会いたかった人との婚約の場から逃げ出すって、何があったらそうなるの?
あれ?ってか、待って!?
それよりも、あの時からずっと逃げ続けていたのに……
今この状況、やばいんじゃないの!?
逃げないと駄目だって頭の中で警告音が鳴った。
なのに、いきなり置かれた今の状況に、頭がパンクして逃げる事も出来ずにフリーズした。
そんな私と彰の間にはある程度距離があったはずなのに、気付けば手も届きそうな程の距離に彰が立っていた。
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