新しいお仕事は期間限定妻になりました[本編完結]

キャロル

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13 近々、妻の仕事が無くなるそうです。

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目が覚めると、そこは……可愛らしい天蓋付きベットの上だった。
そうか、ここは皇宮の一室……?!?!…!!うわ!…確か昨夜は…食事中…泣いちゃって…しかもルベル皇太子様の胸で……あわわ、やっちゃった?。

初日から大失態やらかしました。


久しぶりの暖かい団欒に糸が切れたように制御できない感情が込み上げ止めどなく溢れる涙を止める事はできなかった。

ふと、泣いて、泣いて、ん?その後の記憶が…ない、はて?どうやってここに?誰が?思い出そうにも微塵も記憶がない…
どうしよう、お兄様に聞いてみた方がいいかも、きっと迷惑かけたはずだから、ベットから出てアンナを呼んで支度をお願いした。

軽く汗を流し、アンナが用意してくれた淡いブルーのふんわりしたパフスリーブドレスに身を包み、左サイドに緩く編み込んだ髪に花型の金細工に紫の宝石が散りばめられた髪飾りをつけお姫様風の装いが完成した所で私の部屋付きの侍女からお兄様の訪問の知らせが届いた。

「レティア様、ルーカス様がお見えになりました。」
私から、尋ねようと思っていたから丁度いいタイミングだった。

「リビングにお通ししてくださるかしら?後、お茶と軽く摘めるものもお願いししますね。」

「「はい、かしこまりました」」

リビングの扉を開けるとお兄様は既にソファに座りお茶を飲んでいた。流石!皇宮侍女仕事が早い。

「おはようございます。お兄様。」

「おはよう、レティア。昨夜はよく眠れたかい?」

「え、ええ、眠れたと言って良いのか…昨夜は皆様にご迷惑おかけして申し訳ございません。えーと、正直泣いてしまった後の記憶が……気がついたら、朝で、……。どなたかが、私をベットまで運んでくれたようですね」苦笑
聞くのが怖いが、お兄様じゃない事だけはわかる、何せお兄様は文系で線が細く腕力はない。それでも抱き上げるぐらいはできるが、抱いたまま部屋まで歩くなんて体力は残念ながら持ち合わせていない。

「私じゃないことは予想ついてるみたいだね、その通り私じゃない。皇帝陛下だよ」

「えーーー!嘘、護衛の方じゃなく?……嘘だと言って欲しい。お兄様、そこは、殴ってでも私を叩き起こすべきでしょ!(元々、私が寝ちゃったのが悪いんだけど)よりによって、陛下だなんて……」
初日から、大失態どころか不敬罪で投獄?ヒエー 顔面蒼白な私にお兄様は

「それはいいんだよ、陛下が譲らず嬉々としてレティアを運んでいたしあの中では陛下かルベル様以外部屋まで運べる人がいなかったんだ。」

確かにお二人はお兄様と違い文武両道でご立派なお体をお持ちだから、私なんか軽々運べちゃうんだろうけど、だからって、そこは背負ってでもお兄様に運んで欲しかった…

「後で、お詫びに行かなくちゃ」

「それには及ばないと思うよ?」
なぜ?お兄様らしくない返事に疑問を感じていたら、いつもと違う硬い表情で次に口にした言葉に蒼白になる。

「レティア、クラウス様とは契約結婚だったそうだね。」

「ブゥーっ!…ゲホゲホ…」
私は飲みかけのお茶を吹き出した。

「ど、ど、どうしてそれを、」
ま、まずい!よりによってお兄様に知られた?なんで?どうして?うわーどうしよう。

「理由と経緯は知ってるから、あえて聞かない、元はと言えば私が不甲斐ないことが原因だから、でも相談もなく自身を犠牲にするやり方を取ったことに、そしてクラウス様に正直がっかりしてる。今更、言ってもしょうがないが、知った以上このままにするわけにいかない。これから、すぐに婚姻無効の手続きをとってもらう。いいね!」

「こ、婚姻無効の手続き?つ、つまり離婚…ということですか?」
初めてのお兄様の私への強い口調に戸惑っていたら。

「当たり前だろ!こんな事契約結婚ゆるす訳にいかない!結婚だなんてレティアは父上のような一途な愛を向けてくれる人と愛し合って結婚するんだって言ってじゃないか、それがどうだい! 確かに貴族の結婚の多くは政略が多いがそれはそれぞれの家の為だったりするが、これは違う!お互い愛もなければ多くの女性と浮名を流すような男と、しかも1人に縛られるのが嫌で僅か17歳の世間知らずな少女にこんな話契約結婚を持ちかける奴なんかと、許せる訳ないだろ!」
お兄様にのいうことは尤もだ、返す言葉がない。ないが……私も同罪。

「………でも、…契約に関しては私が、」
悪いと言いかけた言葉を遮られた。

「それは違う。向こうはクラウス様は多くの商人、王族、貴族相手に有利に商談したり政策を担う策略家だ!世間知らずの小娘の扱いなんか造作もない。都合のいいお飾りにする為にうまく誘導されただけだ!」
確かに、そうかもしれないが、悪い人だとは思えない……思ったより公爵邸が居心地が良かったから……。


「それから、ここからが本題なんだが、私たちのビビアンが皇帝陛下の妹だった。つまり、皇帝陛下は私たちの伯父なんだよ」

「はっ?えっ!今なんて言った?……伯…父?…伯父」

「それと、ラグラン皇国の皇族は男系で滅多に女の子は生まれないんだ…皇族の血をひく女の子は愛子と呼ばれ瞳の中に金粒があるそうだ、母上とレティアの瞳のように、その瞳はラグラン皇族の姫の証であり皇女の証でもある。したがってレティアはラグラン皇国の皇女となりこれからは皇族に籍を置くことになる。」

?姫?」

「私たち兄弟は正式に皇帝陛下の身内、甥と姪として発表されそれに伴いダントン家の後ろ盾は皇帝陛下となるから我が家はグランハム家の後ろ盾がなくて問題ない。今は陛下の後ろ盾がなくても大丈夫なんだが、…兎に角レティアがこれ以上婚姻関係を続ける必要はない。自由になる」
自由?本当に?自由と言える?これから、私は……。

「お兄様、私はこれから…どうなるの?」

「レティアは手続きが済み次第皇女としてラグラン皇国で皇族としての仕事が始まるんじゃないか?追い追い好きな人でもできたら今度こそ幸せな結婚して欲しい…ラグランの皇族は代々恋愛結婚なんだそうだ。そうじゃなければただの伯爵が200年ぶりに生まれた皇女と結婚できるはずがないからね。私も落ち着いたら、勇気を出して彼女にアタックしてみるよ」
お兄様は、かなり大物だけど身内がいたのは嬉しかったと普通に陛下を伯父上と嬉しそうに呼んでいた。

確かに嬉しい、初めて会った時もすんなり受け入れられたのはお母様と関係があったからなのかと妙に納得していた。

話が終わり、伯父上と手続きを進めてくると笑顔で部屋を出た兄の後ろ姿を見つめふと、王国を出るときのクラウス様に言われた言葉を思い出していた。


__待ってる。必ず帰ってくるんだよ__

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