新しいお仕事は期間限定妻になりました[本編完結]

キャロル

文字の大きさ
15 / 31

15 資格

しおりを挟む
あの日から私は無理矢理心に蓋をし鍵をかけた。

そうしなければ、胸が苦しくて心が潰れてしまいそうだったから。こんなにも私は……既に……。

何度も何度も何度もこれでいい、忘れられる、私は大丈夫、呪文のように自分に言い聞かせ暗示をかけた。


伯母様は時折心配そうに見ていたが、あれから、あのクラウス様話題には触れて来なかった。私自身も前を向いて皇女としての責務を果たしラグラン皇国の人々の為に力を尽くそうと、より一層勉強に励み、忙しく日々を過ごしていくうちに20歳誕生を迎えの皇女としてのお披露目の日迎えた。



会場では各国の要人が多く主席する中、皇帝陛下に紹介され祝辞の挨拶の後、私は皇帝陛下ご夫妻に挟まれ一段高い位置の席で賓客を見下ろす形になっていた。

会場には1000人位以上の人が出席していて、私の所に次々と各国王族や高位貴族の方、主に独身適齢期の方達がこぞって挨拶にきた、あまりの多さと、慣れない賛辞に正直うんざりしていたが、これも仕事、仕事、頑張れ私!と自分に言い聞かせ顔の筋肉が攣りそうなほど笑顔を振りまいた。お祝いして頂いているのだが、流石に疲れたなあと、何気に視線を奥に向けたら……多くの人がいる中、ふと目が合ってしまった。

ウソ!


参加者リストに目を通した時に彼の名前が連ねてあったから、会場の何処かに居るとは思っていたけど……まさか視線が合うなんて、思いもせず動揺して、手にしていたグラスをカチャリと皿に当ててしまった。

……あんなに心に固く蓋をしたはずだったはず……なの…に、ほんの少し顔を見ただけで胸が熱い、苦しい、……じわっと目頭が熱くなる……。

「レティア?どうしたの?気分でも悪くなったの、人に酔ったのかしら?顔色が優れないわ。」
伯母様は私の異変に気づいて心配そうに顔を覗き込んだ。

「え、あ、だ、大丈夫です。緊張しただけです。」

「主だった方の挨拶は済んだから、少し席を外しても大丈夫よ、別室で休みなさい。」

「…で、でも……」
戸惑っっていると伯父様皇帝
「レティア、席を外すしても問題ない、あとは我が適当に足らっておく!休むが良い」
主役が退席するのはよくないと思ったが気にせず早く行けと言う叔父上の言葉に甘える事にした。

「すみません、叔父様、お言葉に甘えて少し休んできます。落ち着いたら、戻ります。」

伯母様皇妃と一緒に席を立ち休憩の為に用意された部屋に移動した。
部屋にはアンナが控えていて、暖かい紅茶と私の大好きなマカロンを用意してくれた。私と伯母様はソファに向かい合わせに腰掛け、紅茶を口に含みほっと一息ついたところで伯母様が、少し話を聞いて欲しいと口を開いた。

「レティちゃん、私達伯父伯母はあなたを皇族だからと縛るつもりはないの、もっと肩の力を抜いて、自分の気持ちを押さえつけないで、苦しまないで欲しかったのに…あなたを守りたい幸せになって欲しいと良かれと思ってした事離婚は結果、苦しめる事になってしまったのね、ごめんなさい」

「…そんなこと…ありません、私を大切に思って下さっての事だったと理解してます。苦しめるとか、縛られてるなんてそんな事ありません。」

「それなら、なぜ、心に鍵をかけてしまったの?なぜ、彼への思いを否定するの?確かに貴方達の出会い方は褒められたものではないけれど、それがなんなの?そんな事些末な事でしょ。むしろそれがあったから、貴方達は出会えたのでしょう?彼はレティちゃんにとって心に蓋をすれば簡単に切り捨てられるその程度の存在?」
切り……捨てる?……。そんな事……、

「……それが、…それが出来たらどんなに楽か、…忘れる事が出来たら……時間トキが経てば忘れられると、人の心は移ろいやすいものだから、彼もきっと私を忘れていずれ誰かと……きっと彼には他に愛する人が出来てる筈だから…だから、彼には幸せになって欲しいから、早く忘れなければいけないと、でも…忘れることが出来なくて、辛くて、苦しくて、……」
いつの間にか、伯母様は私の隣に座り溢れる涙を優しく拭い背中を撫でてくれていた。

「レティアちゃん、誰かを愛する気持ちは、心は自由なのよ、あなたは以前愛される資格はないと言っていたけど、誰かを愛する事に資格なんてそんなものいらないのよ。あなたのお父様とお母様には国を隔て更に大きな身分の差があったのよ。一介の伯爵風情が大国ラグランの皇女に思いを寄せるなんてと、諌めれられても、それでも諦めず一途にお母様ビビアン皇女を思い続け、愛を伝え2人は結ばれたのよ。ねぇ、誰かを愛するのに資格って必要?愛されることに資格は必要?」

「…………」

「顔を上げて素直な気持ちで前を向きなさい。_じゃぁ、私は先に戻るわね!レティちゃんはもう少し休んでなさい。」
そう言うと伯母様は私の頭を優しく撫でて部屋を出て行った。

私は目に手を当ててしばらくソファにもたれていた。

程なくして部屋をノックする音が聞こえ、アンナが対応していた。すると、アンナに連れられ、誰か部屋に入って来たようだ。





__どうして、あなたがここに?__。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました

小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」 二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。 第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。 それから二十年。 第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。 なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。 不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。 これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。 ※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。

メリザンドの幸福

下菊みこと
恋愛
ドアマット系ヒロインが避難先で甘やかされるだけ。 メリザンドはとある公爵家に嫁入りする。そのメリザンドのあまりの様子に、悪女だとの噂を聞いて警戒していた使用人たちは大慌てでパン粥を作って食べさせる。なんか聞いてたのと違うと思っていたら、当主でありメリザンドの旦那である公爵から事の次第を聞いてちゃんと保護しないとと庇護欲剥き出しになる使用人たち。 メリザンドは公爵家で幸せになれるのか? 小説家になろう様でも投稿しています。 蛇足かもしれませんが追加シナリオ投稿しました。よろしければお付き合いください。

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

逆ハーレムの構成員になった後最終的に選ばれなかった男と結婚したら、人生薔薇色になりました。

下菊みこと
恋愛
逆ハーレム構成員のその後に寄り添う女性のお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

処理中です...