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1章
◇ミザイアの転換。
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「詐欺師ィ?」
「そ、まー詐欺ってよりは、言いがかりつけて金とる当たり屋」
古びてぎしりと音をたてるテーブルに、ドン、と酒入のコップが着地する。小悪党ってのは、本当に次々と湧いてくる。ため息も長くなろうというものだ。
「先月も居ただろ、似たようなの」
「あー。占いだっけ? 魔族の手が伸びようとしていますぅ~~ってやつ!」
ゲラゲラと笑うおっさんどもが、入口付近にいる見慣れぬ男に視線を滑らせる。酒に酔っているようにみえて、警戒は怠っていないあたりに、馬鹿に出来ない年の功を感じる。
「まあ、見回りしてくるか。裏に何か居ないとも限らないし」
「おう。2つ向こうの通りで見かけたって話だぜ」
「どーも」
テーブルにコインを放り投げてから、フードを被って外へ出る。
平民街、なんて貴族共が呼んでるこの一帯は、比較的貴族街に近いところを外れると、途端に油断ならない影が顔を出す。
先月横行した占いによる水面下の扇動は、一歩間違えば笑い事で済まないところだった。
――光の加護を授かりし寵児は、魔の者である。
貴族筆頭、神殿の一派であるシア一族の輝かしい光となっている、ユフィル・シア。
国に迫る魔を退け、安寧をもたらした奇跡の子。
平民の間でもその伝説は広く知れ渡っていて、さっきのおっさんだって宿に姿絵を飾っているほどのファンらしいそいつを、占い師は魔族と断じた。
普通なら相手にもされない話であるのに、噂は不自然な広がりを見せ、調査に乗り出した俺をあざ笑うように忽然と姿を消した。
「今回のは、しょうもねえ奴であってくれよ」
しかし、その願いは。
「そんな……。一体、何があったのですか!?」
斜め上に裏切られることとなった。
「マコト。アンタこの後予定あるか?」
「え? いえ、特には」
「なら、面白いモノ見せてやるよ」
宿にて着替え、こちらを見てぽかんと口をあける、くたびれた男を見て笑う。カフスに触れつつ髪をかき上げて、ついてこい、と指先で示せば、案の定警戒心もなく着いてくる。
帰り際仲間に小太り当たり屋の対処を任せてから、通りを2つまたいでその先へ。
古びた建物に、最近作り直したばかりの看板が浮いているそこは、俺の本拠地。
「ようこそ、庶民の味方、冒険者ギルドへ」
きっと見るのも初めてに違いないそれに目を丸くするのを見て、俺は満足げに笑った。
「いやようこそとは言ったけど待て。そっちは登録窓口だ」
「すみませんなんだか感動してしまって。今すぐこの契約を勝ち取らねばならないんです」
何言ってんだコイツ。
とりあえず説き伏せて落ち着かせてから、テーブルについて水を飲ませる。
喜びを通り越して執念すら感じるが、一体何がコイツを突き動かしているのか。
「いいか? 冒険者ってやつに憧れてんのかもしれねえけど、場合によっては隣国に常駐なんて仕事もあるし」
「ほう」
「こっちに帰ってくることが出来るとも限らないし」
「ほうほう」
「最悪の場合命を落とす場合もある」
「つまり頑張れば生き残れると。ありですね」
「話聞いてたか???」
俺が唸る間にも、いつの間にかしれっとマコトの隣に陣取った受付の人間が淀みなく説明にかかる。
いかにも前向きに検討しています、サイン5秒前です、といった前のめりおじさんを前に決して逃さない構えだ。
「まあまあ、いいじゃねえか。力不足なら試験で落ちるさ」
当たり屋小太り男の情報をくれたおっさんが、眉間を揉む俺の肩に手を置く。
まあ、確かに。悠々自適に暮らしてきたような人間が、実践で使えるわけもない。
それに、やる前から頭ごなしに否定するのはよくない。
慰めの言葉を考えながら、俺は、試験場の扉をくぐるマコトの背中を見送った。
「そ、まー詐欺ってよりは、言いがかりつけて金とる当たり屋」
古びてぎしりと音をたてるテーブルに、ドン、と酒入のコップが着地する。小悪党ってのは、本当に次々と湧いてくる。ため息も長くなろうというものだ。
「先月も居ただろ、似たようなの」
「あー。占いだっけ? 魔族の手が伸びようとしていますぅ~~ってやつ!」
ゲラゲラと笑うおっさんどもが、入口付近にいる見慣れぬ男に視線を滑らせる。酒に酔っているようにみえて、警戒は怠っていないあたりに、馬鹿に出来ない年の功を感じる。
「まあ、見回りしてくるか。裏に何か居ないとも限らないし」
「おう。2つ向こうの通りで見かけたって話だぜ」
「どーも」
テーブルにコインを放り投げてから、フードを被って外へ出る。
平民街、なんて貴族共が呼んでるこの一帯は、比較的貴族街に近いところを外れると、途端に油断ならない影が顔を出す。
先月横行した占いによる水面下の扇動は、一歩間違えば笑い事で済まないところだった。
――光の加護を授かりし寵児は、魔の者である。
貴族筆頭、神殿の一派であるシア一族の輝かしい光となっている、ユフィル・シア。
国に迫る魔を退け、安寧をもたらした奇跡の子。
平民の間でもその伝説は広く知れ渡っていて、さっきのおっさんだって宿に姿絵を飾っているほどのファンらしいそいつを、占い師は魔族と断じた。
普通なら相手にもされない話であるのに、噂は不自然な広がりを見せ、調査に乗り出した俺をあざ笑うように忽然と姿を消した。
「今回のは、しょうもねえ奴であってくれよ」
しかし、その願いは。
「そんな……。一体、何があったのですか!?」
斜め上に裏切られることとなった。
「マコト。アンタこの後予定あるか?」
「え? いえ、特には」
「なら、面白いモノ見せてやるよ」
宿にて着替え、こちらを見てぽかんと口をあける、くたびれた男を見て笑う。カフスに触れつつ髪をかき上げて、ついてこい、と指先で示せば、案の定警戒心もなく着いてくる。
帰り際仲間に小太り当たり屋の対処を任せてから、通りを2つまたいでその先へ。
古びた建物に、最近作り直したばかりの看板が浮いているそこは、俺の本拠地。
「ようこそ、庶民の味方、冒険者ギルドへ」
きっと見るのも初めてに違いないそれに目を丸くするのを見て、俺は満足げに笑った。
「いやようこそとは言ったけど待て。そっちは登録窓口だ」
「すみませんなんだか感動してしまって。今すぐこの契約を勝ち取らねばならないんです」
何言ってんだコイツ。
とりあえず説き伏せて落ち着かせてから、テーブルについて水を飲ませる。
喜びを通り越して執念すら感じるが、一体何がコイツを突き動かしているのか。
「いいか? 冒険者ってやつに憧れてんのかもしれねえけど、場合によっては隣国に常駐なんて仕事もあるし」
「ほう」
「こっちに帰ってくることが出来るとも限らないし」
「ほうほう」
「最悪の場合命を落とす場合もある」
「つまり頑張れば生き残れると。ありですね」
「話聞いてたか???」
俺が唸る間にも、いつの間にかしれっとマコトの隣に陣取った受付の人間が淀みなく説明にかかる。
いかにも前向きに検討しています、サイン5秒前です、といった前のめりおじさんを前に決して逃さない構えだ。
「まあまあ、いいじゃねえか。力不足なら試験で落ちるさ」
当たり屋小太り男の情報をくれたおっさんが、眉間を揉む俺の肩に手を置く。
まあ、確かに。悠々自適に暮らしてきたような人間が、実践で使えるわけもない。
それに、やる前から頭ごなしに否定するのはよくない。
慰めの言葉を考えながら、俺は、試験場の扉をくぐるマコトの背中を見送った。
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