恋する総受け悪役令息は、好意と押しに弱い。

ツキハ|BL小説

文字の大きさ
20 / 22
2章

周りから見ると明らかだけど本人だけ気付いてないアレ。

しおりを挟む
※若干の無理矢理描写があります。
********************************************



 レオンの指先が、俺の頬にかかって、髪をすいて右の耳にかける。そのまま耳に触れたかと思えば、カフスのあたりを執拗に擽るから思わず身をよじったのだが、レオンはそれが気に障ったらしい。

「なぜ今になって魔法具をつけ始めた」
「え、と。あの、み、ミザイアが」
「……あの男か」

 盛大な舌打ちが聞こえたかと思えば、次いで耳に生暖かいぬるりとした感触がして、情けない声が漏れる。とっさに耳を隠そうと腕を動かせば、容易くとらえられて両腕とも身動きが取れなくなる。

「ゃ、れ、おん」

 耳にダイレクトに響く水音が、思考を乱していくのがわかるけど、俺に出来ることと言ったら目の前の男に平謝りすることくらいで、しかもなんだか何か言えば悪化している気さえする。


「ごめ、なさ、れお、まって」

 いつの間にか頭上にひとまとめにされていた腕を抑える力が強まって、空いた手が服の裾から肌を撫でる感触がして、いよいよ俺の思考が止まって。


 ――廊下の方から、聞き覚えのある話し声がした。




「は、ぇ、ちょ、っと、待て待て待て」
「何故だ」
「なぜだ!? 人が! 来てんだよ!!」
「はっ」

 鼻で笑ったレオンが、全力で押し返そうとする俺を片手で容易くいなし、ならば脚でと思う俺を先回りして抑え込む。いや力つよ。


 いよいよ扉を開けて入ってきた奴らの人影が、ベッドのカーテン越しに見えて、そちらに気をとられた俺の顎をレオンがつかむ。

「は」

 レオンのそれと、俺の口がゼロ距離になるかと思われた瞬間、開いたカーテンの向こうから何かがとんできて、目の前のレオンが消えた。


 ケガを増やして保健室から戻ってきたレオンを見て、ユフィルに会いに行った生徒は白目を剥いたという。







「シアさまは、危機感が足りないと思います」
「す、すみません……?」
「一応聞くんだけどさ、お前、自分の容姿についてはどう思ってんだよ」
「絶世の美少年ですね」
「ユフィルは自己評価が高いのか低いのかよくわからないところがありますよね」

 レオンがぶっとばされて怪我を増やしたのちに保健室から追い出された後、俺は3対1の圧迫面接を受けていた。なぜ抵抗しなかったんですか? いやいや、したけど力強くて~などという問答をしつつ、アレクが消毒液で俺の耳を拭いているのを放置する。


「今のアレをコイツと二人きりにしたらまずいことぐらいわかるだろうが。何してんだよセンセイ」
「元凶が何か喚いているようですが、私としては教師としてすべき仲介をしたまでですので……」

 なぜか途中からいつものように罵り合いだしたカランド先生とミザイアは放っておくとして、問題は隣のアレクだ。まるで母親から言い聞かせられている気分になりながら、ごめんなさいを繰り返すマシンと化す俺である。


「今後は、レオンに会うようなことがあれば必ず俺を連れて行ってください。ミザイアはダメです」
「え? ミザイア、今は一応俺の護衛なのに?」
「ダメです」
「そ、そっか」
「俺がずっと傍についていますから、勝手に動き回らないでくださいね」
「お、おう……?」

「教室も一緒だったらよかったんですけど……。授業終わりは俺が迎えに来るまで待っててください」
「まあ、学年違うからね、俺たち。授業はしょうがない……、え?毎回来るの?」
「当然です」

 当然かなぁ。正義感の強いアレクに心配をかけたのは悪手だったとしか言いようがないが、それにしたって過保護が過ぎる。

 ミザイアとは……まあ、好意的に見てケンカップルのように見えなくも……ない、かも、しれない。の段階なので、出来る限り一緒に居る時間を作ってやりたい俺である。

 アレクが四六時中一緒に居てくれるならミザイアも呼べばいいか。

 

 

 そう軽く考えていた俺はきっと、明らかに燃え盛りそうな案件を前に一人だけ優雅にコーヒーを啜っていた後輩と、同じ目をしていたに違いなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜

中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」 仕事終わりの静かな執務室。 差し入れの食事と、ポーションの瓶。 信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、 ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

処理中です...