初めての物語【B面】~First Story~

秋 夕紀

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第10章 初めての体験

4 初体験の名残

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 ベッドの中で二人が、初めてのセックスに疲れて間眠まどろんでいると、愛海は玄関が開く音がしたのに気が付いた。真斗に告げると、彼は「妹が帰って来た」と慌ててベッドから起き上がり、すばやく下着を身に着けGパンをいた。引き裂かれたロミオとジュリエットのような気持ちで、愛海も驚いて身づくろいに走った。髪を整え、何もなかったような顔をするのもつらかったが、精いっぱい演じながら真斗に付いて下へ降りて行った。麻実ちゃんは疑う様子もなく、「来ていたんだ」くらいの接し方だった。愛海は、何も知らないこんな子をだますのは居たたまれなかった。

 真斗が途中まで送ってくれて、愛海は家に帰った。歩くと股間の痛みがまだあり、何かがまだはさまっているようでもあり、自分でも変な歩き方になっていると意識していた。
 愛海が家に戻ると、妹の彩海は部活でまだ帰っておらず、母親も買い物に出ているようだった。「良かった」と愛海は心の中で思った。誤魔化ごまかすのはれたものだと言え、今日はさすがに顔を合わせるのはつらかった。真斗の汗の臭いが着いているような気がして、名残惜しい気持ちもあるが、シャワーを浴びる事にした。身体を洗い流していると、さっきまで真斗が触れていた感覚が呼び覚まされて動揺した。
 シャワーから出ると、母親が帰っていてびっくりした。
「何を驚いているの。シャワーに入っていたの?」母親の問い掛けに「うん」とだけ答えて、自分の部屋に駆け上がった。

 その晩、愛海はベッドの中でなかなか寝付かれなかった。今日の真斗との行為をもう一度思い出していた。その時は緊張していて夢中だった事から、初体験の実感があまりいてこなかった。真斗とこれからセックスの回数を重ねていく内に、自分はどう変わっていくのか、変えられていくのかを考えていた。
~愛海~真斗と結ばれて、名実ともに恋人と呼ばれる関係になった。あの時、
   私はどうしていいか分からずに、真斗の動きに身を任せるだけで精いっ
   ぱいだった。彼はどう思っただろうか。私とセックスした事を喜んでく
   れたのか、処女の私を喜んだのか、童貞を捨てたのが嬉しいのか、はっ
   きりと分からない。私は処女でなくなった事には、喜びとか悲しみとか
   の感情はあまりない。真斗だから痛みにえて受け入れた。彼への愛を
   示したかったし、彼からの愛を感じたかったからだ。
    初めてのセックスは、気持ち良いというよりも、どちらかというと滑稽で、
   気持ちの悪い行為だった。お互い裸になってするセックスは、普段は隠してい
   る部分をくっつけ合う行為に過ぎない。しかし、そこから二人の気持ちも深ま
   ったのも事実で、真斗の事をもっと知りたいと思う。

 愛海は真斗の熱い物が入って来た時を思い出して、そっと自分のあの場所に触れていた。まだ痛みはあったが、達成感に似た喜びを感じていた。同時に、自分の処女のあかしを、布団の下から回収するのを忘れていた事に気が付いた。
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