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しおりを挟む俺は早速指示されたダンジョンへと向かった。
街の外れの草原。そのある一箇所に黒い裂け目が浮かんでいる。
この裂け目が異世界であるダンジョンに繋がっているのだ。
かつて父親たちと一緒に探索したことはあるが、ソロでダンジョンを攻略するのは初めてだ。
しかも、ランクはBランク。手練れの勇者パーティが攻略するような難易度のものだ。
低階層のマッピングクエストとはいえ、気を引き締めていかないといけない。
俺は気を引き締めて、裂け目の中に入っていく。
中に広がっていたのは、一般的な迷宮型のダンジョンだった。
暗い廊下が広がっており、わずかな炎があたりを照らしている。
クエストは、初めの三階層の入り口までのをマッピングするという内容だった。
「よし、行こう」
俺は自分を鼓舞して、暗がりを進んでいく。
Bランクのダンジョンともなれば低階層であっても強力なモンスターが現れる。
油断は禁物――
――と、思っていると、早速モンスターが現れた。
ゴースト・ファイヤーだ。
青色の炎が空中に浮かび上がり、その上の方に黒く塗りつぶされたような目がついている。
魔力を燃やしながら体を維持している。見た目からして流動的で、物理攻撃に強く、切っても簡単に再生してしまいそうだ。いきなり面倒な相手が来た。
こういうタイプのモンスターは魔法使いが水や氷の魔法を使って倒すのが一般的だ。
だが、俺は剣士。
とらえどころがないので、いくら豪腕でも剣一本では勝てないだろう。
――いきなり詰んでるぞ?
俺はすぐさま思考を切り替えて、倒さずに逃げ切る方法を考え始めた。
しかし、敵はまっすぐこちらに体当たりしてきた。
あの炎に焼かれたら痛いでは済まない。
俺はしぶしぶ剣を抜いて、炎の幽霊に向かって斬りかかった。
体が実体を持たないといっても、物理攻撃が全く効かないというわけではない。
ステータスが“ゴミ強化”で強化された今なら、攻撃を食い止めるくらいは出来るだろう。
そう思ったのだが。
――一閃。
「ぎゃぁぁぁ!!!!!」
俺の斬撃を受けたゴースト・ファイヤーは断末魔をあげ、そのまま跡形も無く消え去った。
「あれれ?」
目の前で起きていることがすぐには理解できなかった。
「普通に……切っただけだぞ?」
別に何か魔法スキルを使ったわけではなかった。
それなのに、まるで魔法攻撃を受けたように、実体のないゴーストが倒されてしまったのだ。
考えられる理由は一つ。
――もしかして、俺の剣の攻撃って魔法属性も帯びてるのか??
俺は魔法使いではないので、魔法スキルは使えない。
けれど、魔力そのものはがゼロという訳ではなかった。
“ゴミ強化”で魔力が増加して、攻撃に魔力が付与されているのかもしれない。
とすると、これは嬉しい誤算だった。
「……もしかしたら、結構楽にクエストをこなせるかもな」
俺は少し自信を得て、ダンジョンを再び進み始めた。
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