はずれスキル「ゴミ強化」で、ゴミ扱いされて追放された俺が鬼強化された。実家から帰ってきてほしいと言われたけどもう遅い。

アメカワ・リーチ

文字の大きさ
10 / 24

10.

しおりを挟む


 ――その頃、レノックス家では。


 レイの異母弟であるマルコムと、父親が話していた。

 レイが追放された今、マルコムがレノックス公爵家の跡取りとなっている。

「マルコム。お前は、必ずや大勇者になるのだ。そのために、まずは冒険者として名をはせる必要がある」

 父であるレノックス公爵が、息子に言い聞かせる。

「はい、父上」

「とはいえ、お前はまだまだ経験が浅い。まずは、街の近くにあるダンジョンで修行をしろ。“神聖剣”の力を引き出せるようにするのだ」

「わかりました、父上」

 †

 マルコムは、父の命を受けて、街のギルドへと向かった。
 もちろん、黒エルフの奴隷、アラベラも一緒である。

「おい、今あるダンジョンで一番難しいダンジョンを紹介してくれ」

 ギルドの建物の中に入るなり、受付に上から目線で頼むマルコム。

 それに、お姉さんは少しムッとした表情を浮かべたが、しかし努めて冷静に対応する。

「大変失礼ですが、新規の冒険者はまずはステータスのチェックがございますが、よろしいですか?」

 お姉さんがそう聞くと、マルコムは胸を張って「もちろんだとも」と答えた。
 超レアスキルである“神聖剣”を見せびらかすいいチャンスだと思ったのだ。

 実際“神聖剣”のスキルによって、マルコムのステータスは3倍に強化されていた。

「マルコム様はユニークスキル“神聖剣”をお持ちなのよ。その辺の冒険者とはわけが違うの」

 アラベラが横から自慢げに語る。

「へぇ、それはすごいですね……」

 受付のお姉さんは、驚いて見せた。ただ、その反応はマルコムが期待したそれに比べれば、かなり控えめだった。

 ――“神聖剣”は、超絶レアスキルだぞ?
 ボク以上の、ユニークスキルを持ったやつなんてそうそういるはずがない。
 とマルコムは内心でそう抗議する。
 
「それでは失礼して――」

 お姉さんは、鑑定の力でマルコムのステータスを見る。

「なるほど、ほとんどのステータスが60超えですか。ええ、CからBランクのダンジョンに行くには十分でしょう」

 と、受付のお姉さんは特に驚くこともなく言った。
 それにマルコムはムッとして聞く。

「――なんだ、それだけか? 18になったばかりで、ボクほど強力なステータスを持った男はそうそういないだろ?」

 だが、受付のお姉さんは「いや、まぁ確かに同い年の冒険者よりは高いですが……」と口ごもる。

「ですが、なんだよ」

 マルコムは聞き返す。
 お姉さんは、どうやらマルコムは言葉を濁しても察してはくれないと理解して、その事実をハッキリと告げることにした。

「昨日、同い年でステータス1000越えの冒険者が来たものでして」

「1000!? そんなばけものがいるのか!?」

「でも、あのかたは特別だと思いますから。あなた様も十分にお強いと思いますよ」

 とお姉さんは、とってつけたように言う。

 マルコムは内心で歯ぎしりした。
 同じ年齢で俺の何十倍以上のステータスを持った奴がいるのか。

 ……いや、だが、まだボクには伸び代がある。
 まだボクは神託を受けたばかりなのだ、俺より強い人間がいるのは当たり前だ。

「……それでは、早速ですが、今攻略可能なダンジョンでいうと、ボス討伐済みのBランクダンジョンでなどいかがでしょうか」

「Bランクか。まぁいいだろう。肩慣らしにちょうどいい」

「二階層の奥に、満月の日にだけ開く扉があるそうです。そこについても攻略を済ませてください。ボスを倒した方によると、全体的にあまりモンスターは出ないそうです。なので、1日で片付くかと」

「わかった。1日と言わず半日で片付けてやる」

 マルコムは自分の力を証明するために、ダンジョンへと繰り出すのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

処理中です...