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しおりを挟むマルコムとアラベラは、街のはずれにあるダンジョンへ向かった。
――そこは、その実、つい昨日レイが一人で攻略してしまったダンジョンだった。
「“神聖剣”があれば、こんなダンジョン楽勝だろ」
マルコムは胸を張ってそう宣言する。
「ええ、マルコム様なら、簡単でしょう」
黒エルフのアラベラも同意する。
「まぁ任せろ」
そう言って意気揚々と裂け目の中に入っていくマルコム。
そのまま暗がりの廊下をどんどん進んでいくと、一行はすぐにモンスターと遭遇した。
「――ゴースト・ファイヤーです」
アラベラは腰から杖を引き抜く。
だが、アラベラが魔法を放つ前に、マルコムが剣を抜き去って、突撃していく。
「死ねぇぇぇ!!!」
スキル“神聖剣”を発動すると、その剣が光り輝き、ゴーストの体を真っ二つに切り裂いた。
――だが、実体を持たないゴーストはすぐさま再生する。
「なに!?」
マルコムは再び剣を振るうが、やはりゴーストはすぐに再生する。
「マルコム様。物理攻撃は効きません。ここは私にお任せを」
そう言って、アラベラが氷の攻撃を放つ。
「“ブリザード・ウインド”」
無数の氷粒がゴースト・ファイヤーに襲いかかる。
「ギィィィィ!!!!!』
その攻撃に耐えかねてゴースト・ファイヤーが悲鳴をあげる。
そこにアラベラがさらに魔法を畳み掛けると、ゴースト・ファイヤーはついに魔力を失って四散した。
「なんだよ、剣で切れないのかよ」
自分ではなくアラベラがモンスターを倒したことに機嫌を悪くするマルコム。
「ゴーストは相性が悪かったのです。お気にならず」
アラベラはそう言って主人を慰める。
「……さっさと先に進むぞ」
「はい、ご主人様」
と、再び歩き出したマルコムたちだったが、角を曲がったところで、すぐに次のモンスターに遭遇した。
今度の相手はダンジョン・ウルフだった。
ウルフの中では凶暴だが、C、Dランクのダンジョンにもよく出没する下級のモンスターだった」
「今度こそ俺の“神聖剣”をくらえ!!」
マルコムは再び“神聖剣”で斬りかかる。
今度は流石にダメージを与えることに成功した。
ダンジョン・ウルフは一撃では死ななかったが、2度目の斬撃で四散した。
「こんなもんだ。Bランクダンジョンなんて楽勝だな」
「流石、マルコム様」
と、アラベラは主人を褒め称える。
――だが。
「――なに、またか!?」
向こう側から、ダンジョン・ウルフが再び現れる。
しかも、今回は十匹以上いる。
「“ブリザード・ウインド”!」
アラベラが魔法攻撃でダンジョン・ウルフたちに全体攻撃を仕掛ける。
敵が怯んだところで、マルコムが片付けていく。
だが、
「ちょっと、多すぎないか……?」
ギルド職員の話では、あまりモンスターは出ないという話だった。
だが、まだ入り口から少しのところなのに、多くのモンスターと遭遇している。
これでは話が違うではないか。
と、マルコムは憤るが――――それもそのはず。
レイが攻略した時、アンデット系のモンスター以外は全く現れなかった。
それは、単純に、ステータスが桁違いのレイに恐れをなして隠れていたにすぎないのだ。
それに比べて、マルコムは、神聖剣の強化があるとはいえ、せいぜい並みの冒険者程度の力しかなかった。
だから、モンスターたちは遠慮なく襲いかかってくるのだ。
「くそッ! また集まってきたぞ!」
「キリがないですね……」
二人は、なんとか襲いかかってくるモンスターを順番に倒していくが、いかんせん数が多すぎた。
なんとか全てのウルフを倒した時には、二人はヘトヘトになっていた。
「……クソッ。急ぐぞ、アラベラ。こんなとこで苦戦してたら、クエストが終わらない」
「は、はい……ご主人様」
――――初めてのダンジョン攻略に苦戦するマルコムパーティーだった。
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