はずれスキル「ゴミ強化」で、ゴミ扱いされて追放された俺が鬼強化された。実家から帰ってきてほしいと言われたけどもう遅い。

アメカワ・リーチ

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 俺は早速教えてもらった<剣の遺跡>へと向かった。

 そのダンジョンは、村からかなり離れたところにあった。
 ギルドの受付のお姉さんによると、あまりモンスターも多くなく、放置されているとのことだった。

 ――早速、ダンジョンに入ると、灰色の空と薄茶色のレンガでできた建物の痕跡が目に入ってくる。

 俺は、そのノスタルジックな風景の中を進んでいく。

 時折出てくるモンスターは、あまり強くなく全て瞬殺できたので、テンポよく進んでいくことができた。


 そして、一時間ほど歩いていくと、目当ての場所にたどり着く。
 そこは大きな古代のコロシアムだった。

 かつて人々がボスと戦ったであろうその土地には、まるで墓標のように剣が突き刺さっていた。

 いずれも野にさらされた結果、錆つき、ちょっとやそっと磨いたくらいでは使えないとわかる。

 俺は手近なところに刺さっていた剣を引き抜く。
 そして、スキルを発動する。

「“ゴミ強化”」

 ――錆びた剣が光り輝く。

 俺は鑑定スキルは持っていないので、剣が実際どれくらい強化されたかはわからない。
 だが、今までの経験則からいえば、相当強化されているはずだ。

 俺は強化した剣をマジックポケットの中にしまう。
 そして次から次に剣を抜いては、“ゴミ強化”をかけていくのだった。

 †

 ダンジョンで大量の“ゴミ”を仕入れて、強化した俺は、街に戻りその足で武器屋に向かった。

「いらっしゃい、今日は何の用で?」

 店主のおじさんが元気に出迎えてくれる。

「中古の武器の素材を売りに来たんですが、結構量があるんだけど見てもらえますか」

「もちろんいいが、品はどこにあるんだい?」

 俺はマジックポケットを取り出し、中から剣を取り出していった。

「兄ちゃん、珍しいもん持ってるね――って、なんだいこれ、ゴミばっかりじゃないか」

 取り出した“錆びた剣”を見ておじさんは顔をしかめた。

「素材もただの鉄だな。別に特別珍しい素材じゃねぇし、ここまでボロボロじゃぁ磨く方が時間がかかるだろう」

「いや、そうだと思うんですけど、多分結構ステータスは高いと思うんです。一度調べて見てもらえませんか?」

「……そうなのか。ただのゴミにしか見えねぇが。まぁいいだろう」

 と、おじさんは店の奥から一本の杖を取り出してきた。

「こいつは、触れた杖のステータスを調べられるアイテムだ。素材からステータスまでかなりの精度でわかるぜ」

 おじさんは、俺が机に並べた剣の一本を取り出し、杖で叩いた。

 ――すると、空中に文字が浮かび上がる。


 太古の鋼鉄の剣
 強度1000
 魔法耐性500


 鑑定結果を読み上げたおじさんは、飛び跳ねて驚く。
 
「ど、どうなってんだ!? み、ミスリルの剣よりも硬いじゃねぇか!?」

「え、まじですか?」

 俺も流石に驚く。

 見た目にはただの錆びた鉄の塊なのだが、まさか超高級素材であるミスリルよりも硬く強化されているとは。

「しかも、魔法耐性まであるってのか。これ磨いてちゃんと仕立て直したら、とんでもねぇ一品になるぞ」

 どうやら、ゴミ判定は受けずにすんだらしい。

「それじゃぁ、買い取っていただけますか?」

「ああ、もちろんだ。一本、十万ゴルでどうだ?」

「じゅ、十万!? 一ヶ月遊んで暮らせますよ!?」

「この素材をつかえば俺も名工の仲間入りだぜ。何としても買わせてくれ」

 売れるだろうとは思っていたが、まさかここまでとは思わなかった。

 †

 そんなわけで、結局強化したゴミ剣を売ったら、とんでもない金額になった。

 結局、武器屋の貯金があるだけと言うことで、全部で20本を買い取ってもらえた。
 つまり200万ゴルの収入だ。

 ゴミを拾って来ただけだと言うのに、一年間は遊んで暮らせる金が手に入ってしまった。

 ちなみに武器屋の資金が尽きたので買取は20本までだったが、強化した剣はまだまだ残っている。
 多分他の場所でも売ろうと思えば売れるだろう。

 おじさんから受け取った金貨を両手にして、その重みを感じる。

「――さぁ、どうしよう」

 これで、明日の宿を心配する必要は無くなった。

 だが、せっかく手に入れた金だ、武器を買うとか、何か有意義なことに使いたい。

 ――――と。

 俺は、そこで一人の少女のことを思い出した。


 ――神託の日に見た、あの虫と人間のキメラの奴隷。
 奴隷商人に無下に扱われ、文字通り虫けら扱いされていた少女。

 そうだ、これだけの金があれば、あの子を自由にしてあげられるではないか。

 ――――そうだ。それしかない。

 あの子を助けに行こう。
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