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23.
しおりを挟む俺とティオは二日かけて王都へとやってきた。
「すごい人です……」
ティオは、王都の人通りの多さに驚く。
俺は王都にくるのは初めてではなかったが、それでもやはり人の多さには圧倒される。
説明されなくても、ここがこの大陸の中心地なのだとよくわかる。
「さて、ギルドに行くか」
王都は広い。それゆえ、大小いくつかのギルドがあるが、俺たちが目指すのは一番大きく歴史がある王立ギルドだった。
俺たちは、地図を頼りにギルドへと向かった。そして、その建物には10分ほどでたどり着いた。
「――で、でかいな……」
王立ギルドは、他のギルドとは比べ物にならない大きさだった。
建物は3階建で、武器を携えた冒険者たちが吸い込まれるように入っていく。
俺たちは、一度顔を見合わせてから、恐る恐る中に入っていく。
――さすが国一番のギルドだ。
そこにいる冒険者たちは、どこか顔つきが他とは違う。明らかにツワモノが集まっていると直感でわかった。
俺たちはキョロキョロ辺りを見渡して、登録の受付窓口を見つける。
――事務手続き専用の受付があること自体、驚きだ。
育った街のギルドは、受付は一つで、全ての事務をそこで一人のお姉さんがこなしていた。
王立ギルドがいかに栄えているかよくわかる。
「すみません、冒険者登録をしたいんですが……」
俺が言うと、受付のお姉さんが笑顔で対応してくれる。
「それでは、こちらの書類に必要事項をご記載ください。そのあと、試験会場にご案内しますね。今日は他にも新規の方がいらっしゃるので、その方の後に試験を受けていただきます」
「わかりました」
俺は書類に必要事項を記載して、お姉さんに渡す。
「それでは、あちらにお進みください」
受付のお姉さんに、ギルドの建物の奥に向かうように指示される。
建物の裏は、かなり広い中庭のようになっていた。
おそらくここで実技試験や実技講習を行うのだろう。
――と。
そこには、先ほどお姉さんが言っていた「他の新規の方」がいた。
その顔を見て、俺は驚く。
そして、それは相手も同じだったようである。
「マルコム……!」
「レイ……!」
異母弟であるマルコム。
俺が家から追い出された今、レノックス公爵家の跡継ぎとなった男である。
後ろには、マルコムのパーティメンバーの二人がいた。
一人は、元々は神託の日に公爵が俺のためにと購入した黒エルフのアラベラ。
もう一人は、見知らぬ槍使いの男だった。
「なんでお前がここに」
マルコムが俺にそう聞いてくる。
「何って、試験を受けに来たんだが」
俺が言うと、マルコムは高笑いした。
「はは! 悪い冗談だな。<外れスキル>しか持ってないお前が、王立ギルドに? よしとけって」
俺は、マルコムの言葉に、もはや反論したいとも思わなかった。
もうあの家とは縁を切ったのだ。
別に気にしてやる必要はない。
――と、横から一人の男が声をかけてくる。
「新規登録希望のみなさま、今日はよろしくお願いします」
剣を携えた男。
中肉中背の男で、もし遠くから外見だけ見たら、特別強そうには見えないだろう。
しかし近くで見るとその強さはすぐにわかった。
立ち振る舞いに全く隙がない。
「初めまして。私が皆様の試験官を勤めさせていただきます、クロノと申します」
クロノと名乗った男は、冒険者登録のために集まった俺たちに軽く会釈をした。
「それでは、早速ですが、お一人づつ、手合わせをさせていただきます。それで、私が実力を測らせていただきます。それでは、まず先着のマルコム様から」
そう言うと、マルコムが一歩前に出る。
「手加減するけど、無理だったら怪我させちまうぞ? 大丈夫か?」
胸を張ってそう言うマルコム。
だが、クロノは特に表情を崩さず「ええ、問題ないです」とだけ答えた。
横から、ギルドの職員が説明する。
「クロノ様は、当ギルドの冒険者の中でも最強の一人でして、当然ランクはAランクです。相手にとって不足はないかと」
と、職員の説明にマルコムはふん、と鼻息を鳴らした。
――マルコムは、男の強さに気がついてはいない。
果たしてどうなるか。
「それでは、早速テストを開始しましょう」
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