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しおりを挟む「え…?」
かすかな栄人の声を聞き取って稔を含めた班のメンバーが振り向いた時には栄人の姿はなかった。その代わりに横にある崖の木々や葉っぱが揺れている。そして、ぼんやりと見える人影。
「ッ!栄人!栄人!!」
稔が名前を叫ぶも返事はない。
この悪天候の中、さっきまでいた姿が見えなくなった…そして不自然に揺れる木々たち…
「栄人!!くそっ!俺が追いかける!」
「待って会長。それは良い案ではないよ。」
先走る稔を冷静を保とうとする颯が止めに入る。
「だが!」
「分かってるッ!!」
颯の声を荒げる姿に稔も頭が冷える。
「……おそらくここから落ちたので間違いないでしょうね。足を滑らせたとも考えられますが…」
「間違いなく、誰かによって落とされた…特定はできないがあの人影で間違いなさそうだ。」
紡の言葉に尊が被せる様に話す。そう、悪天候で視界も悪い中でもしっかりと見えた影。そう遠くへは行っていないだろう。
「颯。」
「はーい。…言われなくても。」
稔の一言で何をすべきか感じ取った颯は人影を追う。
「会計さんって…」
「皆まで言わずともわかる。俺も滅多に見ないが、普段温厚そうな颯が怒ると一番怖いと思うぞ。」
風委委員でメンバーの一宮が思わず声に出したことを稔が拾う。そう、普段緩くて滅多に怒らない颯だが、先ほどの殺気を纏った声を聞けばほとんどが恐れるだろう。そして恐ろしく運動神経が良い。本気を出すことがないが生徒会の中でもずば抜けており、喧嘩も強いのだ。
「俺たちは教師のいるポイントまで急ごう。ここには印を残しておいて、あとできても分かる様にだけして先を急ごう。」
栄人をすぐにでも探したい己の思いを理性ではねのけ、確実に利益ある行動を選択して実行する。だてに生徒会として学園をまとめているわけではないのだ。
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