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第45話

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「殿下!紅茶が…。お体にかかっておりませんか?火傷など…」

「え?あ、あぁ!紅茶が…す、すまない少し手元が…。
だ、大丈夫だ。僕にはかかっていないよ。しかし…テーブルの上が…大変だな」

紅茶の染みが真っ白なテーブルクロスを汚しています。
近くのメイド達も慌てておりますわ。

直ぐ様、王宮の優秀なメイド達の手で、何事も無かったかのように、真っ白なテーブルクロスが掛けられ、改めてお茶の準備が整いました。
まるで、魔法のようでしたわ。

「殿下、大丈夫でしたか?」

「あぁ、ちょっとびっくりしちゃってね。…そうか…アナベルはアンダーソン伯爵令息殿とお付き合いを…」

「はい。これで、殿下も心置きなくバジル男爵令嬢とのお付き合いに踏み切れるのではないですか?」

「バジル男爵…あ、あぁ。メリッサの事かい?どうしてメリッサ?」

…え?どうして?それを私に訊くのでしょうか?

「殿下は最近、よく一緒にバジル男爵令嬢といらっしゃいますし、ほら…この小説をご覧くださいませ」

私は少し前に買った恋愛小説を殿下に見せましたの。
『悪役令嬢には負けません!平民から男爵令嬢になりましたけど、王太子様から溺愛されています』
というタイトルの小説です。
思わず、悪役令嬢の文字につられて買ってしまった物ですが、なんだか私とバジル男爵令嬢にピッタリと当てはまるんですの。
…私とて絶対に負けませんけどね。

「ヒロインは平民から男爵令嬢になって、学園で王太子殿下と恋に落ちるんですの。
まるで、殿下とバジル男爵令嬢のようではありません事?」

「これ……。しかし、設定は合っているかもしれないが…」

「前に殿下も仰っていたではありませんか、『下位貴族のご令嬢の方が良いと思うんだ』と。
小説でも、上位貴族の男性が恋をするのは、下位貴族のご令嬢っていうのがテッパンなんですよね?
確か…身分の壁が余計に恋を燃え上がらせるのではありませんでしたか?」

「確かに僕がそう言ったが…。しかし、もし僕がこの小説の通り、メリッサと付き合い始めたとしたら、この『悪役令嬢』とやらは…」

「不本意ながら、私…という事になるのですが、そこは安心してくださいませ!
この『悪役令嬢』と言うのはですね?嫉妬に駈られてヒロインを虐めてしまう訳なのです。
しかし、私には恋人がおります。ヒロイン…いえ、バジル男爵令嬢に嫉妬する事などないと、保証いたしますわ!」

…殿下!また、紅茶が!カップから零れておりますー!
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