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第59話

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「ねぇ、アナベル。今度の舞踏会…誰と参加しますの?」

唯一の友人であるローズから訊ねられましたわ。…1番答えたくない質問ですけど。

「えっと………1人?」

「え?!殿下は…もしかして例のあの人と?」

「いえ…それは私にもわからないんですけれど…もしかしたら、そうなのかも?」

「確かに学園主催とはいえ…婚約者の貴女を差し置いて例のあの人をエスコートするのは、流石に不味いのではないかしら?」

「殿下がどうお考えなのかわかりませんけれど…私が誘われていない事は事実ですわ」

「そんな…。ねぇ、女同士で参加しても良いのですわよね?なら、私と…」

「ローズ。婚約者のジェームス様が泣きますわよ?」

「どうせ彼はここの学園生ではないから、無理に参加しなくても大丈夫よ」

「ローズ、ありがとう。でも、私は1人でも平気ですわ。ジェームス様もローズと踊るのを楽しみにしている事でしょうし、私の事は気にしなくて大丈夫よ」

「……殿下も何を考えているのかしら?」

「さぁ…生徒会で忙しくて、余裕がないのかもしれません」


私は友人ローズとの会話を終えて、今日は1人で下校です。
グレイはサボった授業の先生に呼び出されたとか…。自業自得ですわね。

私が馬車回しまで歩いていると、

「ねぇ、あなた…えっと…アナベルさんだっけ?」

と後ろから声を掛けられました。

振り向くと…そこには、満面の笑みのバジル男爵令嬢が立っておりますわ。
…何故貴女から声をかけてくるのかしら?不躾ですわよ?…とは言いません。だって国外追放されたくはないから。

「バジル男爵令嬢…。何かご用かしら?」

「ねぇ…あなたって、ルシウスの婚約者なのよね?」

「そうですけれど…それが何か?」

「それ、私に譲ってくれない?」

「それ?とはどれでしょうか?」

「婚約者よ」

「仰っている意味がわかりませんわ」

「だからぁ。私がルシウスの婚約者になるって言ってんの!」

「はい?やっぱり仰っている意味がわかりませんが…」

「え?あんたって馬鹿なの?」

この人に馬鹿って言われると…とてつもなくムカつくのは何故でしょう?

「バジル男爵令嬢。私と殿下の婚約は王家の決めた事ですので、貴女に譲ってくれと言われて、はい、どうぞとは言えないのです」

「えぇー。それって所謂、政略結婚ってやつよね?ねぇ、そんなの空しくない?ルシウスだって、好きな女と結婚した方が幸せになれるに決まってるじゃない!」

「好きな女…とは、貴女の事ですの?」

「当たり前でしょう?私とルシウスは愛し合ってるの。あんたが邪魔しなければ、私達は2人とも幸せになれるのよ!」

「先ほども申しましたように、私にはどうすることも出来ません。私、この後予定がございますので、失礼させていただきます」

私はこれ以上彼女と話す必要性を感じずに、その場を後にする事に致しました。

背を向けた私に、

「王家が決めたっていうなら、ルシウスがあんたと婚約破棄すれば問題ないって事よね!」
とまだバジル男爵令嬢の声が追っかけてきます。

…婚約破棄…。殿下がもしその気になったなら…私は、婚約破棄されてしまうのでしょうか?………うーん。今考えても仕方ありませんけど。

しかし、私、疑問に思うのですけど…あの方って本当に成績優秀者なのでしょうか?

私はその疑問を胸に、公爵家の馬車に乗り込みました。
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