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第64話〈ルシウス視点〉
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この学園では、夏期休暇の前に、学園主催で舞踏会が開かれる。
これにもガッツリ携わっているのが、僕達、生徒会だ。生徒会の役割多すぎないか?
役割が多すぎて、アナベルをエスコート出来るか心配で、まだアナベルを誘うことすら出来ていない。
ちゃんとドレスやアクセサリー、靴に至るまで注文済みだが、一緒に踊れなければ、何の意味もない。
生徒会になんて入らなければ良かったと思うのだが、王族がこの学園に通っている時は、生徒会に入るのが習わしだと言われては仕方ない。
「ルシウスぅ。メリッサね、青色のドレスがいいなぁ~」
…だから何なんだ?青色でも、ネズミ色でも、黄色でもなんでも着たら良いじゃないか。
「メリッサにはピンクのドレスの方が似合うように思うけど」
と生徒会長のベルナールがニコニコしながら言う。
だから、好きにしたら良い。というか、どうでも良い。
そんな事より手を動かせ。
舞踏会の当日まで、こいつらは仕事する気なのだろうか?
「舞踏会で踊りたいなら、仕事を済ませなければ、楽しむ事など出来ないぞ?」
と僕が言っても、誰も聞いちゃいない。
メリッサを中心に、あれが似合うだの、これが似合うだの言い合っている。
イライラしてしょうがない。
最近、昼食は何とかアナベルと食べているが、(あぁ、アンダーソンも居るが、あれはオマケだ。)食後にゆっくりと話す時間もない。
それに、アナベルがアンダーソンを名前で呼ぶ度にモヤモヤして仕方ない。
僕は本当にどうしたんだろう。
ある日、手洗い場でアンダーソンと他の男子生徒の会話が聞こえてきた。
お互い姿は見えていないが声は聞こえる。
どうも今度の舞踏会について何か話しているようだ。
僕はつい耳を澄ませた。
男:『あ~あ、いやんなっちゃうよな。婚約者が居ない僕達には、舞踏会なんて縁のないものだし。お前は今年も出席しないんだろ?』
アンダーソン(以下ア):『え?あ、あぁ…いや、今年は出席しようかと思ってる』
男:『え?1人で参加するのって勇気がいるぞ?…まさかぁ、お前に一緒に出席するような相手がいたりするのか?』
ア:『まぁ……な。まだ誘ってないが…な』
男:『えーっ!狡いぞ!いつの間にそんな…』
ア:『狡いっておかしいだろ。ほら、そろそろ教室に戻ろうぜ』
…何だ?今の会話は?
もしかして……アナベルを誘うつもりか?
いや、もしかしなくても、そうだろう。だって、あいつには婚約者は居ない。それにアナベルとは…恋人同士だ。
…どうしよう!!不味い。だが、僕はまだ、アナベルをエスコートする暇があるかわからない。…と、とにかくアナベルにアンダーソンに誘われても、断るように言っておかなければ。
今日からまた、死に物狂いで生徒会の仕事を熟そう。他の奴等の仕事なんて知るものか。
僕はアナベルがまだ教室を出ていない事を祈りつつその場から廊下へと出た。
すると、少し先を歩くアンダーソンがハンカチを落とした。
僕は仕方なくそれを拾う。
声を掛けようかと思った時、ハンカチを落とした事に気づいたのか、アンダーソンが振り返ってこちらに引き返して来た。
僕の手にあるハンカチを見て、
「殿下、拾って下さったんですね。ありがとうございます。折角のベルからの贈り物を失くす所でした」
と言って手を出した。
…アナベルからの贈り物?
ハンカチを持ったまま僕は呆然とした。
薄紫のハンカチは、アナベルの瞳の色だ。
そこに鷲の刺繍が付いている。とても見事な刺繍だ。
ハンカチを握りしめたまま動かない僕に、アンダーソンは続けて、
「これ…見事な鷲でしょう?ベルが刺繍してくれたんです」
と言った。
僕は頭を殴られたようなショックを受けた。
僕が何度頼んでも、アナベルは僕に刺繍したハンカチなんてくれた事がない。
いつもまだまだ自信がないからと。
でも、僕の手から、アンダーソンの手に移ったハンカチの刺繍はとても見事だった。まるで、売り物のように。
その後、アンダーソンが何か言っていたが、僕は、最後まで聞かずに、駆け出した。早くアナベルに舞踏会の事を言わなければ。
そして、もしエスコート出来なかったとしても…せめて僕が用意したドレスは贈っておこうと心に決めた。
これにもガッツリ携わっているのが、僕達、生徒会だ。生徒会の役割多すぎないか?
役割が多すぎて、アナベルをエスコート出来るか心配で、まだアナベルを誘うことすら出来ていない。
ちゃんとドレスやアクセサリー、靴に至るまで注文済みだが、一緒に踊れなければ、何の意味もない。
生徒会になんて入らなければ良かったと思うのだが、王族がこの学園に通っている時は、生徒会に入るのが習わしだと言われては仕方ない。
「ルシウスぅ。メリッサね、青色のドレスがいいなぁ~」
…だから何なんだ?青色でも、ネズミ色でも、黄色でもなんでも着たら良いじゃないか。
「メリッサにはピンクのドレスの方が似合うように思うけど」
と生徒会長のベルナールがニコニコしながら言う。
だから、好きにしたら良い。というか、どうでも良い。
そんな事より手を動かせ。
舞踏会の当日まで、こいつらは仕事する気なのだろうか?
「舞踏会で踊りたいなら、仕事を済ませなければ、楽しむ事など出来ないぞ?」
と僕が言っても、誰も聞いちゃいない。
メリッサを中心に、あれが似合うだの、これが似合うだの言い合っている。
イライラしてしょうがない。
最近、昼食は何とかアナベルと食べているが、(あぁ、アンダーソンも居るが、あれはオマケだ。)食後にゆっくりと話す時間もない。
それに、アナベルがアンダーソンを名前で呼ぶ度にモヤモヤして仕方ない。
僕は本当にどうしたんだろう。
ある日、手洗い場でアンダーソンと他の男子生徒の会話が聞こえてきた。
お互い姿は見えていないが声は聞こえる。
どうも今度の舞踏会について何か話しているようだ。
僕はつい耳を澄ませた。
男:『あ~あ、いやんなっちゃうよな。婚約者が居ない僕達には、舞踏会なんて縁のないものだし。お前は今年も出席しないんだろ?』
アンダーソン(以下ア):『え?あ、あぁ…いや、今年は出席しようかと思ってる』
男:『え?1人で参加するのって勇気がいるぞ?…まさかぁ、お前に一緒に出席するような相手がいたりするのか?』
ア:『まぁ……な。まだ誘ってないが…な』
男:『えーっ!狡いぞ!いつの間にそんな…』
ア:『狡いっておかしいだろ。ほら、そろそろ教室に戻ろうぜ』
…何だ?今の会話は?
もしかして……アナベルを誘うつもりか?
いや、もしかしなくても、そうだろう。だって、あいつには婚約者は居ない。それにアナベルとは…恋人同士だ。
…どうしよう!!不味い。だが、僕はまだ、アナベルをエスコートする暇があるかわからない。…と、とにかくアナベルにアンダーソンに誘われても、断るように言っておかなければ。
今日からまた、死に物狂いで生徒会の仕事を熟そう。他の奴等の仕事なんて知るものか。
僕はアナベルがまだ教室を出ていない事を祈りつつその場から廊下へと出た。
すると、少し先を歩くアンダーソンがハンカチを落とした。
僕は仕方なくそれを拾う。
声を掛けようかと思った時、ハンカチを落とした事に気づいたのか、アンダーソンが振り返ってこちらに引き返して来た。
僕の手にあるハンカチを見て、
「殿下、拾って下さったんですね。ありがとうございます。折角のベルからの贈り物を失くす所でした」
と言って手を出した。
…アナベルからの贈り物?
ハンカチを持ったまま僕は呆然とした。
薄紫のハンカチは、アナベルの瞳の色だ。
そこに鷲の刺繍が付いている。とても見事な刺繍だ。
ハンカチを握りしめたまま動かない僕に、アンダーソンは続けて、
「これ…見事な鷲でしょう?ベルが刺繍してくれたんです」
と言った。
僕は頭を殴られたようなショックを受けた。
僕が何度頼んでも、アナベルは僕に刺繍したハンカチなんてくれた事がない。
いつもまだまだ自信がないからと。
でも、僕の手から、アンダーソンの手に移ったハンカチの刺繍はとても見事だった。まるで、売り物のように。
その後、アンダーソンが何か言っていたが、僕は、最後まで聞かずに、駆け出した。早くアナベルに舞踏会の事を言わなければ。
そして、もしエスコート出来なかったとしても…せめて僕が用意したドレスは贈っておこうと心に決めた。
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