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その100
しおりを挟む私は王太子妃になると言う事を業務だと思う事にした。
今までだって、仕事だと思えば、意外と何でもこなしてきたのだ。
気持ちや感情を考え過ぎて動きが取れなくなっていたが、仕事だと割りきれば、案外上手くいく。
何だ。最初からこうすれば良かった。
結婚だって仕事だと思えば、何とかなるものだ。
間違いなく暗記能力の上がった私を見て、イヴァンカ様は何故か可哀想な子を見る目で、
「…シビル…そういう事じゃないと思うのよ…私の言い方が悪かったのかしら…」
と呟く事が増えた。
今日はいよいよ、アルティアの王太子ライル殿下がこちらに到着すると連絡があった。
ライル殿下はここベルガ王国に2日滞在して、そこからミシェル殿下と共にランバンへと出立する。
私がミシェル殿下に支える時間は、あと2日となってしまったという事だ。
「お兄様!」
ミシェル殿下の部屋へ訪れたライル殿下に、ミシェル殿下は抱きついた。
「ミシェル!すまなかったな…辛い思いをさせた。私も陛下も…申し訳なく思っている」
「いえ…。私が悪かったの。覚悟もなくここに来たから。アーベル殿下に申し訳ない事をしてしまったの」
と涙を流すミシェル殿下を見て、
私は、色々とミシェル殿下も限界だったのだと思い知った。
ライル殿下はミシェル殿下の涙を指で拭いながら、私を見ると、
「シビル。お前とクリスティアーノ殿下については…まぁ、良くわからんがお陰でこっちは賠償金を支払わずに済んだ。
その礼…という訳ではないが…さぁ、こっちへ」
とライル殿下が廊下に声を掛ける。
すると扉に現れたのは…
「お父様?!」
私の父、アウグスト・モンターレだった。
「シビル!元気だったか?」
と父も駆け寄って私を抱き締める。
「ええ。私は元気にしております。家族は?皆元気で?」
と私は父の腕から少し距離を取り顔を見上げた。
「お前のお陰で借金は無くなったし、仕送りのお陰でずいぶんと暮らしは楽になったよ。
皆元気だ。
セシリアも、ローリーもお前に会いたがっていたが、長い道中になるからな。
私だけがお前に会いに来た」
セシリアは母。ローリーは妹だ。
「お兄様は?」
「ヨレックは今、南方の砦に勤務していてな。まだお前の…結婚については話せていないんだよ」
騎士になって実家を支えている兄の顔を思い浮かべ、
「皆…驚いているでしょうね」
「ああ。私にも何が何だかさっぱりだ。
まさかお前がベルガ王国の王太子妃になるなど…陛下の遣いから、婚約証明書にサインを求められた時には、卒倒するかと思ったぞ」
「相談もなく勝手に決めてしまってごめんなさい」
「いいんだ。私達はお前を信じてる。お前の決めた事なら反対などしない」
「お父様…」
私は父の腕の中でつい泣きそうになってしまった。
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