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その108
しおりを挟むキャンベル医師は、周りにゾロゾロと控える護衛を無視し、私に近づいて来た。
護衛も、流石に宮廷医師であるキャンベル様が私を害する事はないと分かっている為、近づいて来る彼には警戒を解いていた。
近付いて来たキャンベル医師に私は、
「キャンベル医師。どうされました?」
と訊ねる。
「どうしたも、こうしたもないよ!どうしてシビルちゃんが、クリスティアーノの婚約者なのさ?!」
「どうして…と言われましても、私には分かりかねます。理由は王太子殿下にしかわからないかと…」
「断れば良かったじゃん!嫌なら嫌って!」
…私、断ったんですよ。でも、受け付けて貰えなかったんです…なんて、このたくさんの護衛の前で言うのは憚られる。
「キャンベル医師…そう言えば久しぶりですね」
「あ!今、話しを逸らしたよね?」
…バレてる。
「いえ。最近お見かけしていなかったな…と思いまして」
「ずっと、実家の領地に戻ってたんだよ。父の具合が良くないからって。
でも、シビルちゃんをクリスティアーノに盗られるぐらいなら、行かなきゃ良かった!」
…お父様の具合が悪かったのなら、行って正解です。
これまでの会話を聞いていた護衛達が、若干ざわついている。
これって不味いんじゃない?
私とキャンベル医師との仲が疑われたりしないよね?
「それで…お父様は?」
「状態は落ち着いたよ。まだ後10年は大丈夫さ。そんなことより!僕が先にシビルちゃんに目を付けたのに…クリスティアーノの奴!」
目を付けたって言われても…私、それ、断りましたよね?それに、お父様の事を『そんなこと』なんて言っちゃダメですよ。
「お父様が大事なくて、何よりです。
実は、私これからダンスのレッスンに行かなければならないので、この辺で失礼させていただきますね」
と私が話を切り上げようとすると、
また別の方向から、今度は女性の声で、
「ちょっと貴女!それは私のドレスよ!?なんで貴女が着ているの?何処の誰かは知らないけど、すぐに脱ぎなさい!」
と聞こえると、ツカツカと近寄って来る女性の姿が見えた。
……確か、あの方はエクルース公爵令嬢のローザリンデ様だったかしら?と最近勉強したこの国の貴族の絵姿を思い浮かべていると、突然、私の頬に痛みが走った。
えっと…私、今、叩かれました?
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