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プロローグ
02.王宮公認公爵家の捨て子の不幸令嬢
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その後、勝手に荷物やらをまとめられてレミリアは追い出され、無理やり王宮に上がらされたのだ。
あまりに忙しい日々でルーファスとの独り言遊びもできなくなり次第に彼のことは忘れていった。
結局レミリアは王宮へ王子妃教育を受けるという建前で居を移すことになった。
王宮での生活はとても順風満帆ではなかったがレミリアにとっては独り言を言い続ける生活よりは、人間味のあるだけマシなものだった。ただ人間味とは彼女が望む友人が出来たわけではなく、彼女への嫌がらせをするものを指したものだったが。
「あら、ごめんなさい気づかなくて」
わざと顔を洗う水に冷たい水出した侍女。この場合叱るかなにも言えないかだがレミリアは違った。レミリアはいつもの笑顔を浮かべる。
「あら、人には確かに間違いはあるわね。でもこれ本当に間違いなのかしら?」
「どういうことですか?」
キッと睨んだその女は確か子爵家の次女で働きに王宮へきていると聞いていた。だからわざとらしく付け加える。
「だって子爵家で大切に育てられたお嬢様が、何が悲しくって王宮の居候で公爵家の公認捨て子なんかの面倒みないといけないのって思うわよね?つまり嫌がらせしたくなるわよねってこと」
その言葉を終始まるで天気の話でもするようにレミリアは笑顔で言った。しかし先ほどまでレミリアを睨んでいたその目が恐怖に歪んでいくのがわかる。
「そういう意味では高貴なお嬢様には私みたいな捨て子のお世話は無理よね。仕方ないわ相性ってどうしてもあるものだから。王妃様に相談してあなたにも私にも相応しい方に担当を替えて頂きましょう」
「そ、そんな、そんなこと……」
レミリアは知っている。今この王宮で一番高貴な女性は王妃殿下だが、次に高貴なのは王女様のいないこの国では公女であり王子妃候補のレミリアであることを。
そのレミリアに無礼を働いたことがわかれば最悪この国のどこでも侍女として勤めることが難しくなるだろう。それは侍女としての終わりを意味している。
「あら、じゃあ本当に間違えただけですの?」
そうわざとらしく鷹揚にレミリアに問われ、必死に侍女は頷いた。レミリアはそれが一時的な意味のないことだというのはすぐにわかった。けれどこれ以上ことを荒立てる気は今はない。
「なら貴方はおっちょこちょいさんね。分かったわ。今回は信じてあげましょう」
「ありがとうございます」
「でもね、もし次もおっちょこちょいなことしたら、流石に私も不利益が多いので王妃様にお話しさせてもらいますんのでくれぐれも気を付けてくださいね」
安堵したような侍女を見つめながらレミリアは内心で大きな舌打ちをしていた。彼女のように貴族の家から働きにきている侍女にはふたつのタイプがいる。家が困窮してしかたないタイプと良い結婚相手がいないか探しに働きに来たタイプ。
先ほどの侍女は後者で完全にやる気がない。やる気がないだけならいいのだが嫌がらせやマウント取りなどをしてくる場合がある。それを払いのけてそこそこの待遇で王宮で暮らすのは割と骨が折れた。そうして骨を折る割にはいいことも起きないので本当に損しかない。
けれど、それでも人と話して、人とぶつかっているとい感覚はレミリアを生きていると思わせてくれた。それに彼女たちにわざと「公爵家の捨て子」だの「王宮の居候」だのと自分の理にならない言葉を吹聴した。
それはレミリアが出来るとてもひねくれてはいたが憤りの現れだった。だからといって叫び声をあげてもレミリアを幸せにしてくれる存在などこの世にはいないこともしっかり理解していた。
だからせめて家に帰れないレミリアはここじゃないどこかへ行けることを考える。全ては夢物語。レミリアはここから飛び立てるわけがない。けれど想像は自由なはずだ。出来れば本で読んだ綺麗な山が見える街がいいななどと空想の翼だけ広げる。それくらいしか不幸なレミリアに選べることはなかったから。
あまりに忙しい日々でルーファスとの独り言遊びもできなくなり次第に彼のことは忘れていった。
結局レミリアは王宮へ王子妃教育を受けるという建前で居を移すことになった。
王宮での生活はとても順風満帆ではなかったがレミリアにとっては独り言を言い続ける生活よりは、人間味のあるだけマシなものだった。ただ人間味とは彼女が望む友人が出来たわけではなく、彼女への嫌がらせをするものを指したものだったが。
「あら、ごめんなさい気づかなくて」
わざと顔を洗う水に冷たい水出した侍女。この場合叱るかなにも言えないかだがレミリアは違った。レミリアはいつもの笑顔を浮かべる。
「あら、人には確かに間違いはあるわね。でもこれ本当に間違いなのかしら?」
「どういうことですか?」
キッと睨んだその女は確か子爵家の次女で働きに王宮へきていると聞いていた。だからわざとらしく付け加える。
「だって子爵家で大切に育てられたお嬢様が、何が悲しくって王宮の居候で公爵家の公認捨て子なんかの面倒みないといけないのって思うわよね?つまり嫌がらせしたくなるわよねってこと」
その言葉を終始まるで天気の話でもするようにレミリアは笑顔で言った。しかし先ほどまでレミリアを睨んでいたその目が恐怖に歪んでいくのがわかる。
「そういう意味では高貴なお嬢様には私みたいな捨て子のお世話は無理よね。仕方ないわ相性ってどうしてもあるものだから。王妃様に相談してあなたにも私にも相応しい方に担当を替えて頂きましょう」
「そ、そんな、そんなこと……」
レミリアは知っている。今この王宮で一番高貴な女性は王妃殿下だが、次に高貴なのは王女様のいないこの国では公女であり王子妃候補のレミリアであることを。
そのレミリアに無礼を働いたことがわかれば最悪この国のどこでも侍女として勤めることが難しくなるだろう。それは侍女としての終わりを意味している。
「あら、じゃあ本当に間違えただけですの?」
そうわざとらしく鷹揚にレミリアに問われ、必死に侍女は頷いた。レミリアはそれが一時的な意味のないことだというのはすぐにわかった。けれどこれ以上ことを荒立てる気は今はない。
「なら貴方はおっちょこちょいさんね。分かったわ。今回は信じてあげましょう」
「ありがとうございます」
「でもね、もし次もおっちょこちょいなことしたら、流石に私も不利益が多いので王妃様にお話しさせてもらいますんのでくれぐれも気を付けてくださいね」
安堵したような侍女を見つめながらレミリアは内心で大きな舌打ちをしていた。彼女のように貴族の家から働きにきている侍女にはふたつのタイプがいる。家が困窮してしかたないタイプと良い結婚相手がいないか探しに働きに来たタイプ。
先ほどの侍女は後者で完全にやる気がない。やる気がないだけならいいのだが嫌がらせやマウント取りなどをしてくる場合がある。それを払いのけてそこそこの待遇で王宮で暮らすのは割と骨が折れた。そうして骨を折る割にはいいことも起きないので本当に損しかない。
けれど、それでも人と話して、人とぶつかっているとい感覚はレミリアを生きていると思わせてくれた。それに彼女たちにわざと「公爵家の捨て子」だの「王宮の居候」だのと自分の理にならない言葉を吹聴した。
それはレミリアが出来るとてもひねくれてはいたが憤りの現れだった。だからといって叫び声をあげてもレミリアを幸せにしてくれる存在などこの世にはいないこともしっかり理解していた。
だからせめて家に帰れないレミリアはここじゃないどこかへ行けることを考える。全ては夢物語。レミリアはここから飛び立てるわけがない。けれど想像は自由なはずだ。出来れば本で読んだ綺麗な山が見える街がいいななどと空想の翼だけ広げる。それくらいしか不幸なレミリアに選べることはなかったから。
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