世にも不幸なレミリア令嬢は失踪しました

ひよこ麺

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第二章:海の国と呪われた血筋

21.亡霊王子と不幸令嬢

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「……やはりあの話は本当なのか」

クリストファーは苦々しい表情になる。

「忌々しい亡霊め……何故レミリアを選んだのだ」

アトラス王国ではあることを隠していた。それはレミリアが月の国、ムーンティア王国にという事実だった。

元々それは古の盟約に端を発するものであった。遠い昔、海の国が呪いを受けた原因である事件の際に、月の国は海の国のように太陽の国を呪わない代わりに、月の国から使いを出した時には必ずその「太陽の娘」を嫁がせるという盟約だった。

しかし、それから幾千年の年月あまり「太陽の娘」があまり生まれないのもあるが、使いが来ることはなかった。実際、レミリアの母である、ルイーズが誕生した時も警戒したそうだが、その達しが来ることはなかったためそろそろムーンティア王国自体がおとぎ話であり、実存を疑う声さえではじめていた矢先だった。

それなのに……レミリアには使いが来てしまった。最初は嘘だとおもったが、確かに彼女の元には現れたのだ。

ルーファスとは海の国の王子に花嫁を奪われた月の国の王子で、今も時が止まった月の国で暮らすというおとぎ話の登場人物のような存在だ。そもそも時を止めるなど非現実だとクリストファーは考えていたし、確かに大きな門と壁に覆われたその国がある場所には何人も入り込めなかったが、それは超常現象ではあるが、その存在を裏付けるものではないと考えていた。

そして、そんな亡霊にクリストファーはレミリアを渡すつもりは毛頭なかった。

「ムーンティア王国へ攻撃を行え」

「はっ」

例えその亡霊が実在しても、生きている人間に叶うはずなどはない。そう考えたクリストファーは攻撃の指示をだした。所詮国交もない国だ、レミリアを奪いに来ないように牽制すべきだと考えた。

そして、自身は気になっていたレミリアの様子を見に行くことにした。

レミリアはまるで生気を失ったような青白い顔で自室で空を眺めていた。あまりの様子に声をかけるべきか迷ったが、自身から自由を与えるといった手前しばらく様子を見ていた。

悲し気な横顔の美しさに思わず見惚れてしまう。

(その体を抱きしめて慰めてあげたらどんな顔をするだろう。)

そんなレミリアが、何かを懐にしまうのが見えた。それが何か見落としたのだが、そのままどこかえふらふらと歩いていくレミリアの後をそのまま追いかけた。

レミリアは王子妃候補で公爵の娘なのだから馬車を呼べば、良いのになぜかふらふらと護衛もつけずに街を歩いている。それを止めたり咎めたりする存在もいなかった。

(どうしてだ?レミリアに悪い行動をするものは全て外したはずなのに……)

そして、何よりいつもと違いレミリアのその今にも消え入りそうな様子に違和感を覚えた。

(レミリアは、公爵から愛されているはずだ、それなのに何故連絡をとらずにひとりで歩いているんだ?大体、どうしてレミリアがこんな風に出歩いているのに誰もついてこない……)

そのままフラフラとレミリアは王宮からそこまで離れてはいない公爵家までやってきた。基本的に公爵家は今は無人だと聞いている。わずかなハウスキーパーだけがいるがあの家はが現れたとのことからそれ以降はレミリアを近づけないようにしていると聞いていた、それなのに何故レミリアはここを訪れたのだろうか。

レミリアはそのまま庭へ入っていくと一本の木の前にしゃがみこんだ。それはレミリアが好きだと言っていたキンモクセイの木だった。しかし、その花は雨で散り今はその緑の葉を残すだけの侘しい姿だった。

その木の前で何故かレミリアは吐き出すように叫んだ。

「ルーファス、連れて行って、お願い。私もうここに居たくないの、もうすべてが嫌なの」

いけない、よりにもよって亡霊に接触を図るなど、そう思い走り出した時、その目に信じられない光景が見えた、レミリアが毒を飲んだのだ、つまり自殺を図ろうとしていた。

「レミリア!!!!!」

急いでクリストファーは走り出し、レミリアの体を引き寄せる。

(早く毒を吐かせなければ。)

そう思ったとき、レミリアの体を青い光が包み、そして、確かにその男と目があった。銀色の髪に紫の瞳をしたとても美しい男。その顔は自身も整っていると自覚のあるクリストファーから見ても美しいと表現するようなこの世の者とは思えない色香を孕んでいた。間違いなく彼がルーファスに違いないとクリストファーは直感した。

ルーファスはレミリアをこともあろうか連れ去ろうとした。

「させない!!」

「……またお前が邪魔をするのか」

それは憎しみを通り越した怨念を含むような声だった。しかしここでクリストファーは怯むつもりはない。その結果、起きたのがレミリアの魂をルーファスが、その体をクリストファーがそれぞれ分離させてしまったという事態だった。
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