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第三章:恋獄の国と悲しいおとぎ話
49.前世の物語と不幸令嬢(ヨミ視点(ルーファスの護衛))05
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私は、大切な殿下をいや、ルーファスと既に冷たくなり始めているレミーナ姫を抱き上げて、そのまま浮遊の魔法を使った。
その時の私の心の中は驚くほどの無だった。
私を青い月が照らした。ブルームーンだ。本来であればもっとも魔力が強くなるというのにほとんど底をついているため、僅かしかその恩恵を今は受けられそうにない。
「何があっても、君をルーファスを殺される訳にはいかない。もう二度と私は私の息子を失う気はない」
私、ヨミの本当の名前はツクヨミという。月の国では、私は国を創造した神として崇められている。実際私は人間ではない。そうでなければもう何百年と生きている訳がない。
他の神々、姉上と弟が既に神の国へ戻ったのに私だけはある目的のために月の国に残り続けた。ただし正体知れることを恐れて、記憶の操作を行いさも近衛であるようなふりを続けた。
月の国の王族はみんなが、私の血を引く愛おしい子供たちだった。そして私がこの国に残る理由はただひとつ。最愛の妻が殺された時に、その腹に宿っていた私の可愛い子供の生まれ変わりに出会うためだった。
弟に惨たらしく殺された妻。その妻に宿っていた可愛い子。ふたりの死を到底受け入れることができなかった私は、それでも弟を罰することができなかった。行き場のない悲しみが私自身に無意識に呪いをかけてしまい結果、私は回復魔法が使えなくなった。
きっとふたりを救うことができなかった無力さから無意識に封印したのだろう。
そして、その時の甘さが、今ルーファス、私の最愛の子の生まれ変わりを殺そうとしている。
(海の国など作らせず、あの時に弟を殺していればこんな悲劇はなかった)
またしても、弟の血筋のものが私の最愛の子を奪おうとしたという事実にこの後、月の国に戻ってすることは決まっていた。
「呪いをかけてやろう」
もう二度と、月の国の者に対して歪んだ感情を抱かないように。決して近づかないように。
それから、なんとかふたりを月の国へ連れ帰った。国に帰れば魔法の回復薬もある。それを飲んで、まだ青い月が出ていることを確認する。
「さぁ、呪ってやろう。海の国は二度と我々月の国の者に対して歪んだ感情を抱かないように。その感情を抱きかねないものの感情にはふたをしてしまおう」
ただ、静かに呪い続けた。しかし、呪いは思いを剥き出しでぶつけるため魔法と違い制御が難しい。
それがまさか『月の国の者に異常な感情を持つ海の国の者がその感情を失う呪い』のはずが、『月の国の者に異常な感情を持つ海の国の者が代わりに太陽の王族の娘にその異常な感情を向ける呪い』などになるなんて想像もしていなかった。
その時の私の心の中は驚くほどの無だった。
私を青い月が照らした。ブルームーンだ。本来であればもっとも魔力が強くなるというのにほとんど底をついているため、僅かしかその恩恵を今は受けられそうにない。
「何があっても、君をルーファスを殺される訳にはいかない。もう二度と私は私の息子を失う気はない」
私、ヨミの本当の名前はツクヨミという。月の国では、私は国を創造した神として崇められている。実際私は人間ではない。そうでなければもう何百年と生きている訳がない。
他の神々、姉上と弟が既に神の国へ戻ったのに私だけはある目的のために月の国に残り続けた。ただし正体知れることを恐れて、記憶の操作を行いさも近衛であるようなふりを続けた。
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きっとふたりを救うことができなかった無力さから無意識に封印したのだろう。
そして、その時の甘さが、今ルーファス、私の最愛の子の生まれ変わりを殺そうとしている。
(海の国など作らせず、あの時に弟を殺していればこんな悲劇はなかった)
またしても、弟の血筋のものが私の最愛の子を奪おうとしたという事実にこの後、月の国に戻ってすることは決まっていた。
「呪いをかけてやろう」
もう二度と、月の国の者に対して歪んだ感情を抱かないように。決して近づかないように。
それから、なんとかふたりを月の国へ連れ帰った。国に帰れば魔法の回復薬もある。それを飲んで、まだ青い月が出ていることを確認する。
「さぁ、呪ってやろう。海の国は二度と我々月の国の者に対して歪んだ感情を抱かないように。その感情を抱きかねないものの感情にはふたをしてしまおう」
ただ、静かに呪い続けた。しかし、呪いは思いを剥き出しでぶつけるため魔法と違い制御が難しい。
それがまさか『月の国の者に異常な感情を持つ海の国の者がその感情を失う呪い』のはずが、『月の国の者に異常な感情を持つ海の国の者が代わりに太陽の王族の娘にその異常な感情を向ける呪い』などになるなんて想像もしていなかった。
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