【本編完結】魔王と周りに恐れられる辺境伯ですが他人の婚約者に手を出したと噂の伯爵令息にずっと片思いしています

ひよこ麺

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57.分かっていたけど童貞とか悪口言われるのはきつい(ルカ視点)

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レイレイが録音機器のボタンを押すと、それは流れ出した。

『ミリア、順調だな』

明らかにルビー侯爵令息の声だった。

『ええ。馬鹿な連中ばっかりで本当にいつもあっさり引っかかるわ』

そして、それに答えるミリアの声に僕は少なからずショックを受けた。一時は好意があった女性に僕はバカ扱いされていたのだから……。

『ああ。そう言えば、アクアマリン伯爵家の令息の件は……』

『ルカね。彼は本当にバカな男よ。ちょっと肉体関係になっても良いよって誘いをかけたらあっさりのってくるんですもの。本当に童貞はちょろいわ。すぐにはめられそうよ』

(分かってはいたけど、こんな風に思われていたなんて、流石に泣きたいかも。てか童貞ってバレてたの??ミリアの前ではもっとこう紳士っぽくしていたつもりだったんだけど)

色々ショックで僕は顔色が悪くなる。

『ははは。あいつ、女に全くモテないからな。まぁ。あいつをはめればターコイズ辺境伯が絶対に買うだろう。女には全くモテない癖にアクアマリン伯爵令息は男にはモテるからな。特に辺境伯は、金持ちなのに女に全く興味がないのにアクアマリン伯爵令息には熱を上げているのは社交界では有名な話だからな』

『勿体ないわ。あんなにいい男なのに男色家で、ルカみたいなちゃらいモテない男が好きなんて。女好きなら私、相手してあげても良いのに』

(ふざけるな!!僕の侮辱はかまわないけれど大魔王様へんきょうはくさまを、僕の愛する人を馬鹿にするなんて許せない!!……って、えっ??この感情なに??えっ??)

僕の中の相対する感情の暴走にちょっと怯える。

『はん。アクアマリン伯爵令息みたいな女みたいな顔した男にしかモテないお……』

そこで機器の音声が止まる、いや正確にはそこで物理的に止められた。録音機器を大魔王様へんきょうはくさまが握りつぶしたのだ。

「辺境伯様、気持ちは分かるっすがキレるのはやめてほしいっすよ。後、機器を壊すのはやめてほしいっス。これ一応コピーしたデータだから問題ないっすけど原本だとシャレにならないっすからね??」

「うるさい。ルカの悪口は不要だろう。可哀そうにあんなに顔色を悪くして」

そう言って怒っている大魔王様へんきょうはくさまになんだかときめいている自分がいて戸惑う。そして、大魔王様へんきょうはくさまはルビー侯爵令息を睨みつける。

「美人局も問題だが、ルビー侯爵令息は俺にルカを売りつけただろう??そんなことをしておいて今更何故ここにやってきたんだ??」

「それは……」

言葉に詰まるルビー侯爵令息。僕にはまだよくわかっていないがどうやら何か言えない事情があるようだ。しかし、ルビー侯爵令息をあざ笑いながらレイレイが続けた。

「そりぁ、ルビー侯爵宛てに美人局に関する苦情とそれについての沙汰があるから王都へ来いって王家から送られればいくら頭の悪いあんたでも焦るっすよね。このままでは爵位を継がせてもらえなくなりそうっすもんね。だからあんたは証拠の隠滅にきたとかっすかね??この事情を知っている辺境伯様ごと消そうなんて馬鹿なことを考えている」

「……」

「けれど、それにしては相手が悪いっすよ。なんせ辺境伯様はこの国で一番強い騎士団を従えてるっすからね、俺も含めて」

ニヤリと笑うその姿には先ほど、装備的に不利だと言っていた姿はない。それがハッタリであろうがしばらくレイレイは時間稼ぎをしたいらしい。

(頭良いな。流石レイレイ。しかし、僕よりレイレイが年下だったのは地味にショックだった。僕より賢いのにな……)

この間、あだ名で呼び合うほど仲良くなった際に、レイレイが2つ年下という衝撃の事実を聞いていた。僕が童顔だからかレイレイもびっくりしていたけれど。ちなみにレイレイ曰く僕はレイレイのお兄さんと同じ年らしいが、お兄さんはもっとしっかりした感じらしい。

僕もしっかりしたところを見せないとと思ったので、少し絞り出してみた。

「……ルビー侯爵令息。人を陥れるのは悪いことです。僕はあの時あなたに悪いことをしたと思いましたが、それがそもそも違うなら、貴方には僕への謝罪と支払ったお金の返金を要求し、先ほどの録音データの会話を加味して名誉棄損でも訴えさせて頂きます」

「バヴゥウウウウウウウウウ」

僕の後ろで、モレクも加勢する。偉いよモレク。賢いよモレク。お金が帰ってきたら、モレクの大好きな肉を沢山上げないいけないなとこっそり思った。

「……くそっ、アクアマリン家の子息風情が!!」

そう言った、ルビー侯爵令息は控えていた騎士を我々に差し向けようとしていた。
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