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63.本当の気持ちと新たな波乱(ルカ視点)

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「ギル様……僕は……」

あの後、僕は色々考えていた。僕の中に目覚めた何かと、まだ答えていないギル様の言葉への答えを……。

『ルカ、好きだ、ずっとお前だけが好きなんだ、

そう言われた時は焦るだけだった。けれど今はそう言った時のギル様の言葉が熱を持った眼差しが蘇ってきて胸が熱くなる。

「……ギル様、お願いです、どうか目を覚ましてください」

とても冷たい手をあたためるように握りながらその青ざめた顔を見つめる。今まで怖いと思ってしっかり見なかったその顔は鼻筋が通ったとても男らしい顔立ちで、けれど鋭い瞳が閉ざされているせいかいつもより幼くも見えた。

僕はこの人に好かれるようなことをした記憶はない。けれど、ギル様は僕を愛して、守ろうとしてくれた。ルビー侯爵令息にはめられた時も、方法はともかく、救い出してくれたのはギル様だった。

「バブゥ、クーン」

いつの間にか、僕の側に来ていたモレクが僕の体に鼻先をスリスリとしている。慰めてくれているらしい。

その犬らしい、少し硬めの毛並みをモフりながら、考えていた。

(僕はギル様のこと……)

あの日は混乱したけれど、最近は本当の僕とルカとしてふるまっていた僕がやっとひとつになっているような感じがしていた。

その結果の僕は、ギル様をきっと……。

深い眠りについているギル様の、胸が呼吸するために上下したのを見ながら、ギル様とモレクにしか聞こえないように囁く。

「そう言えば、昔話で、眠っているお姫様にキスをすると目を覚ますお話しがありますね。ギル様はどちらかというと、マ〇フィセント様寄りな気はするけど……どうか目をさまして」

僕はおとぎ話を信じていたわけではない。けれど、その唇に口づけをした。

冷たい口づけだった。

奇跡は起きなかったが、僕は名残惜しい気持ちで唇を離した。もっとずっとしていたいような気持ちを胸に抱きながら、その場を後にした。

ギル様の部屋を出ると、とても複雑な顔をしているレイレイとベルっちと目が合った。

「ギル様、今日も目覚めなくて……」

「そうっすか……」

「仕方ない。その、ルカっち。これ」

ベルっちが僕にそれを差し出した。それは『アクアマリン伯爵家』からの手紙だった。結局ルビー侯爵令息の美人局の件が露見したため、僕の辺境伯領への兵役自体が無効となった。

だからといって今更、僕の家でない実家へ帰るのは気が引けたし何より全てを知った今、彼等と今までのように家族として接するのは難しいと感じる。

ただ、とりあえず、手紙を開いた僕はその内容に思わず目を見開いた。

「嘘だ、こんなの……」

そこには、僕と、を婚約させた、すぐに家に戻れという内容が書かれていたのだから。

(何故??ミリアも美人局の実行犯として捕まったんじゃ……)
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