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79.知らない人について行って誘拐されるタイプの子供(ルカ視点)
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アベーレの言葉に僕は伯爵家から逃げようとした時だった。
「君を迎えにきた」
いつの間にか、背後に男が立っていた。黒髪に黒い目をしたその男は、どこかギル様に似ていた。
(兄弟かな??)
しかし、確かギル様はひとりっ子だったと記憶していた。実際あの館でもギル様の身内を見た記憶はない。
「あの、どなたですか??」
「僕はギルベルトの叔父でダイヤモンド公爵のベールバルドという。君の危機に早く助けに行きたいが手続きがあるようで、代わりに迎えに来たんだ」
とても小さいが低い声で公爵様は言った。
無表情なその顔は、何を考えているのか読めない。ギル様と国王様は魔王感が半端ないが、彼は背こそ高いがどこか知的な雰囲気で涼やかな美形で、どちらかというと魔王より高潔な騎士のような雰囲気だ。
その言葉に今まで大人しかったカイムが暴れて、公爵様を威嚇している。
「カイムたん、どうしたんでちゅか??普段はいい子なのにおかしいな??」
「……僕は動物に嫌われがちだからかな……。いや、うちの一族がというべきか……」
悲し気にそう答えた、公爵様にモレクが手にぶら下がっていたギル様を思い出して思わず笑っていた。
「確かに、ギル様も動物にあまり好かれてませんでしたね、分かりましたわざわざ来て頂きありがとうございます」
そう答えて僕は公爵様についていくことにした。ギル様の親戚の人なら問題ないだろうと軽く考えて。
その時に何故か小さな頃に誰にでもついて行きがちな子供だった僕に対して、顔を覚えていない使用人の誰かが「しっかりと素性のわからない人にはついていってはだめですよ」と言ったのを思い出したが、今回は信頼できる人の親戚だから問題ないので当てはまらないはずだけど。
そんなことを考えているうちに、黒い色に銀で公爵家と思われる紋章の描かれた馬車が待っていた。
「さぁ、どうぞ」
「ありがとうございます」
自然にエスコートされて乗り込んだ馬車は、とても豪奢で素晴らしいものだった。辺境伯領の馬車もだけどどうして良い馬車はお尻が痛くならないのだろうか。
「その……あまり口数が多くなくて話す内容がなく申し訳ない」
向き合って座っているが終始無言状態だった中で、そう公爵様は口火を切った。
「いいえ。助けて頂いただけでもありがたく。ところでどちらへ向かっているのですか??」
馬車に乗ってから気付いたが、一体どこへ向かっているのか聞いていなかった。お兄様のところへ直接連れて行ってくれるという訳ではないと思うが、近ければとてもありがたいななどと考えていた。
「一旦我が家で保護して折を見てギルベルトに引き渡すつもりだ」
「そうですか。それなら安心ですね」
ニコニコと微笑む僕と、相変わらず不機嫌でさっきから馬車のシーツを噛んでいるカイム。
「カイムたん、メッ。だめだよ、馬車のシーツ絶対高いから!!」
「問題ない。甥の大切なお客様だ。それに動物がすることを人が咎められない、彼らはとても自由だから」
そう言った時の黒い瞳はどこか淋しげで、まるでないものに憧れているようにも見えてなんだか胸が痛くなった。
「公爵様とギルベルト様は仲が良いのですか??」
「いや、ギルベルトはあまり僕が好きじゃないんだ。けれど僕にとってあの子は……」
公爵様が何か言おうとした時、馬車が止まった。
「どうやらついたらしい」
馬車から下りるとそこはありえないほどの大きな豪邸だった。
「あ、ええええ、すげぇ!!」
思わず叫んでいた僕に、公爵様は無表情だけど少し表情が柔らかくなっているように思えた。
「ようこそ、我がダイヤモンド公爵家へ」
「君を迎えにきた」
いつの間にか、背後に男が立っていた。黒髪に黒い目をしたその男は、どこかギル様に似ていた。
(兄弟かな??)
しかし、確かギル様はひとりっ子だったと記憶していた。実際あの館でもギル様の身内を見た記憶はない。
「あの、どなたですか??」
「僕はギルベルトの叔父でダイヤモンド公爵のベールバルドという。君の危機に早く助けに行きたいが手続きがあるようで、代わりに迎えに来たんだ」
とても小さいが低い声で公爵様は言った。
無表情なその顔は、何を考えているのか読めない。ギル様と国王様は魔王感が半端ないが、彼は背こそ高いがどこか知的な雰囲気で涼やかな美形で、どちらかというと魔王より高潔な騎士のような雰囲気だ。
その言葉に今まで大人しかったカイムが暴れて、公爵様を威嚇している。
「カイムたん、どうしたんでちゅか??普段はいい子なのにおかしいな??」
「……僕は動物に嫌われがちだからかな……。いや、うちの一族がというべきか……」
悲し気にそう答えた、公爵様にモレクが手にぶら下がっていたギル様を思い出して思わず笑っていた。
「確かに、ギル様も動物にあまり好かれてませんでしたね、分かりましたわざわざ来て頂きありがとうございます」
そう答えて僕は公爵様についていくことにした。ギル様の親戚の人なら問題ないだろうと軽く考えて。
その時に何故か小さな頃に誰にでもついて行きがちな子供だった僕に対して、顔を覚えていない使用人の誰かが「しっかりと素性のわからない人にはついていってはだめですよ」と言ったのを思い出したが、今回は信頼できる人の親戚だから問題ないので当てはまらないはずだけど。
そんなことを考えているうちに、黒い色に銀で公爵家と思われる紋章の描かれた馬車が待っていた。
「さぁ、どうぞ」
「ありがとうございます」
自然にエスコートされて乗り込んだ馬車は、とても豪奢で素晴らしいものだった。辺境伯領の馬車もだけどどうして良い馬車はお尻が痛くならないのだろうか。
「その……あまり口数が多くなくて話す内容がなく申し訳ない」
向き合って座っているが終始無言状態だった中で、そう公爵様は口火を切った。
「いいえ。助けて頂いただけでもありがたく。ところでどちらへ向かっているのですか??」
馬車に乗ってから気付いたが、一体どこへ向かっているのか聞いていなかった。お兄様のところへ直接連れて行ってくれるという訳ではないと思うが、近ければとてもありがたいななどと考えていた。
「一旦我が家で保護して折を見てギルベルトに引き渡すつもりだ」
「そうですか。それなら安心ですね」
ニコニコと微笑む僕と、相変わらず不機嫌でさっきから馬車のシーツを噛んでいるカイム。
「カイムたん、メッ。だめだよ、馬車のシーツ絶対高いから!!」
「問題ない。甥の大切なお客様だ。それに動物がすることを人が咎められない、彼らはとても自由だから」
そう言った時の黒い瞳はどこか淋しげで、まるでないものに憧れているようにも見えてなんだか胸が痛くなった。
「公爵様とギルベルト様は仲が良いのですか??」
「いや、ギルベルトはあまり僕が好きじゃないんだ。けれど僕にとってあの子は……」
公爵様が何か言おうとした時、馬車が止まった。
「どうやらついたらしい」
馬車から下りるとそこはありえないほどの大きな豪邸だった。
「あ、ええええ、すげぇ!!」
思わず叫んでいた僕に、公爵様は無表情だけど少し表情が柔らかくなっているように思えた。
「ようこそ、我がダイヤモンド公爵家へ」
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