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第1話 異世界転生は突然に
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世の中はまかり通らないことが多い。
特に、何か特別なスキルのない凡庸な人間に対して世界は甘くないことを理解して僕はくたびれたサラリーマンになってしまった。
「では、こちらの仕事任せたからな」
「……承知いたしました」
それだけ告げると足早に帰宅していく上司の背中をただ見つめていた。
繁忙期だというのに雑務も振られてしまった。ほかにも部下はいるが一番リスクが少ないという理由だけで、自分の利益にもならないそれを片付けるために今日も終電には乗れないことを理解して小さくため息が漏れる。
「では、お先に失礼します」
暗い気持ちの僕を尻目に、同期が能天気に挨拶してそのまま立ち去る。
この同期はあまり仕事ができないと評判だがだからこそ僕が振られているような雑務から逃れることができている。
そして、今の前の部署の上司に可愛がられていた時期があり、僕より給料の額面が上であることをついこの間、彼の口から聞いて以来鬱々としていたこともあり完全にやる気が失われた。
「……一度、コンビニで夕食だけでも買ってくるか」
コンビニでの食事は物価高もあり薄給の僕にはしんどいものではあったが、ほぼ毎日仕事だけして自炊する時間がない以上は背に腹は替えられない状況だった。
11月の夜は冬に近付いているせいか肌寒さを感じるが、何かを羽織るという発想ができるほどの脳の余力がなかったためスマホだけ片手に出てきてしまった。
「早くコンビニに行こう、とにかくはやく……」
目の前の横断歩道の信号が早く青になるように願いながら何気なく顔を上げた時に普段とは違う異変を見つけてしまった。
東京の都心であるから夜であっても多くの車や人が行き交うことに不思議はないのだが、対岸に立っている子がどう見ても幼児で、しかもハーフですごく可愛らしい上に、ハロウィンはもう終わったというのに中世ヨーロッパの王子様か何かのような恰好をしているのだ。
(親はどこにいるんだ??もう22時過ぎているけど……)
「こわいよ、ここどこ??」
その子の叫びに近い声が聞こえた。しかし、なぜか周りにいる誰もそれを気に留めていない。
「ああ、もう、仕方ない信号が変わったら……」
助けようと口にしようとした時だった。何かに驚いてパニックになったその子が赤信号の中車道に歩み出てしまったのだ。さらに運の悪いことに大型のトラックがそれに気づかず直進してきている。
「危ない!!」
僕はこういう時、きっと見殺しにしてしまうタイプだとずっと思っていた。けれど、不思議と体が動いていた。僕は小さな子供を庇うように突き飛ばした。そして代わりに……。
そこからの記憶ははっきりしない。ただ、突き飛ばしてかばった子供が僕を振り返った時、目が合った。何色と言えばいいのか、銀色のような灰色のような不思議なその瞳が僕をとらえた瞬間、
『見つけた』
脳内に声が響いた。それは子供のものではなく、なぜか若い男の声だった。
特に、何か特別なスキルのない凡庸な人間に対して世界は甘くないことを理解して僕はくたびれたサラリーマンになってしまった。
「では、こちらの仕事任せたからな」
「……承知いたしました」
それだけ告げると足早に帰宅していく上司の背中をただ見つめていた。
繁忙期だというのに雑務も振られてしまった。ほかにも部下はいるが一番リスクが少ないという理由だけで、自分の利益にもならないそれを片付けるために今日も終電には乗れないことを理解して小さくため息が漏れる。
「では、お先に失礼します」
暗い気持ちの僕を尻目に、同期が能天気に挨拶してそのまま立ち去る。
この同期はあまり仕事ができないと評判だがだからこそ僕が振られているような雑務から逃れることができている。
そして、今の前の部署の上司に可愛がられていた時期があり、僕より給料の額面が上であることをついこの間、彼の口から聞いて以来鬱々としていたこともあり完全にやる気が失われた。
「……一度、コンビニで夕食だけでも買ってくるか」
コンビニでの食事は物価高もあり薄給の僕にはしんどいものではあったが、ほぼ毎日仕事だけして自炊する時間がない以上は背に腹は替えられない状況だった。
11月の夜は冬に近付いているせいか肌寒さを感じるが、何かを羽織るという発想ができるほどの脳の余力がなかったためスマホだけ片手に出てきてしまった。
「早くコンビニに行こう、とにかくはやく……」
目の前の横断歩道の信号が早く青になるように願いながら何気なく顔を上げた時に普段とは違う異変を見つけてしまった。
東京の都心であるから夜であっても多くの車や人が行き交うことに不思議はないのだが、対岸に立っている子がどう見ても幼児で、しかもハーフですごく可愛らしい上に、ハロウィンはもう終わったというのに中世ヨーロッパの王子様か何かのような恰好をしているのだ。
(親はどこにいるんだ??もう22時過ぎているけど……)
「こわいよ、ここどこ??」
その子の叫びに近い声が聞こえた。しかし、なぜか周りにいる誰もそれを気に留めていない。
「ああ、もう、仕方ない信号が変わったら……」
助けようと口にしようとした時だった。何かに驚いてパニックになったその子が赤信号の中車道に歩み出てしまったのだ。さらに運の悪いことに大型のトラックがそれに気づかず直進してきている。
「危ない!!」
僕はこういう時、きっと見殺しにしてしまうタイプだとずっと思っていた。けれど、不思議と体が動いていた。僕は小さな子供を庇うように突き飛ばした。そして代わりに……。
そこからの記憶ははっきりしない。ただ、突き飛ばしてかばった子供が僕を振り返った時、目が合った。何色と言えばいいのか、銀色のような灰色のような不思議なその瞳が僕をとらえた瞬間、
『見つけた』
脳内に声が響いた。それは子供のものではなく、なぜか若い男の声だった。
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