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第5話 絶望は後ろから追いついてくる
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叔父上により快適になった生活をかれこれ3年ほど送った僕は気付いたら成人を迎えようとしていた。
元々の自分の年齢を考えれば叔父上を父親とは考えにくいと思っていたが、体に引きずられるように幼くなった精神は初めて優しくしてくれた叔父上に対して父性を感じるようになっていた。
それと同時に叔父上に愛されている従兄弟へわずかに嫉妬心が湧いてもいた。
従兄弟はお世辞にも性格が良くなくて、僕に対して卑しい血を引いていると言ってささやかな嫌がらせをしてきた。
すると、叔父上は従兄弟を注意してくれたが、それが気に入らない従兄弟はわざと僕を無視したりしていた。
従兄弟からすれば父親を卑しい血を引く従兄弟にとられたとでも思っているのだろうが、従兄弟以上に僕が愛されてはいないことは理解していたので複雑だった。
ただ、成人の年に小説の始まりである自分を愛さないと宣言する隣国の国王に嫁ぐことになるのだが、現段階までその話は浮上していなかった。
だから運命を変えられたと油断していた。
皇后に僕への権限がなければ、何とかなるはずだとそう思っていた。
なぜなら、隣国は竜神の血を色濃く引き継いでいるため小説のフェリックスは知らなかったが、番い以外が嫁いでも幸せにならないことは皇族や貴族は皆知っている。
皇帝陛下が、なぜ原作の世界でそれを許したのかは分からないが、基本的には自身の子を嫁がせたい親はいないし、今の僕の立ち位置は虐待を10年以上も受けていた可哀想な皇子であるため皇帝陛下がその縁談を認めないだろうとも思っていた。
だからこそ、あんなことになるとは考えていなかった。
その日、報告会に珍しく遅刻してきた叔父上の顔は蒼白だった。
あまりの様子に僕は心配になり、話かけた。
「叔父上、どうかされましたか?」
「息子が、エリックが、隣国の国王に嫁ぐことになりそうなんだ」
叔父上の言葉に、心臓が冷たくなるような感覚がしたことが分かった。
考えなかったわけではない。隣国との情勢を考えたらひとり年頃の皇族か貴族が犠牲になることを。
そして、それが自分と歳の近い人物になることも……。
「そんな、それは皇帝陛下の御命令ですか? 大公家を継ぐのはエリックだけなのに……」
僕の言葉に叔父上はうつむいたまま答えた。
「ああ、そうだ。しかし、エリックは私が甘やかしたこともあり兄上の覚えがよくない。そして、もしエリックが私の地位を継がなくても新しい大公になれる人物がいる」
その言葉に、先日、皇帝陛下が僕へ告げた言葉を思い出した。
日本人の経験があるためか皇帝陛下から優秀と評価されているらしい事実を……。
(このままだと、エリックが小説の僕と同じ思いをするのか……)
僕が運命を変えたことで誰かが不幸になる。その実感と共に、この世界で唯一大切にしてくれた人を永遠に傷つけることになることを確信した時、自然と言葉が口から漏れた。
「……叔父上、エリックでは隣国で問題を起こすでしょう。だから僕が隣国へ嫁ぐと皇帝陛下に話をしてみます」
僕の言葉に叔父上は一瞬、瞳を見開いたがすぐに耐えるようにそれを閉じた。
そして、しばらくして苦しげな言葉が漏れた。
「ありがとう……そして、すまない」
それが叔父上の答えだった。
直訴した僕に、最初は反対した皇帝陛下も最後には苦しげに了承してくれた。
「彼の国は番い以外は愛されない。苦しくなったら必ず帰ってきなさい」
皇帝陛下の言葉にうなずくが、それが難しいことは一番皇帝陛下が知っている。
それでも、その言葉が出ただけ原作より上出来だとなんとか自分に言い聞かせた。
***
その様子を私は見ていた。フェリックスたんのあまりに尊い魂に泣きそうになりながら、しかし小さく舌打ちをした。
「くそっ。あの異分子、拙者の世界を無茶苦茶にしやがって!!お灸をそろそろ据えねばなるまい」
そうして、捻じ曲がってしまった世界にある一石を投じた。
元々の自分の年齢を考えれば叔父上を父親とは考えにくいと思っていたが、体に引きずられるように幼くなった精神は初めて優しくしてくれた叔父上に対して父性を感じるようになっていた。
それと同時に叔父上に愛されている従兄弟へわずかに嫉妬心が湧いてもいた。
従兄弟はお世辞にも性格が良くなくて、僕に対して卑しい血を引いていると言ってささやかな嫌がらせをしてきた。
すると、叔父上は従兄弟を注意してくれたが、それが気に入らない従兄弟はわざと僕を無視したりしていた。
従兄弟からすれば父親を卑しい血を引く従兄弟にとられたとでも思っているのだろうが、従兄弟以上に僕が愛されてはいないことは理解していたので複雑だった。
ただ、成人の年に小説の始まりである自分を愛さないと宣言する隣国の国王に嫁ぐことになるのだが、現段階までその話は浮上していなかった。
だから運命を変えられたと油断していた。
皇后に僕への権限がなければ、何とかなるはずだとそう思っていた。
なぜなら、隣国は竜神の血を色濃く引き継いでいるため小説のフェリックスは知らなかったが、番い以外が嫁いでも幸せにならないことは皇族や貴族は皆知っている。
皇帝陛下が、なぜ原作の世界でそれを許したのかは分からないが、基本的には自身の子を嫁がせたい親はいないし、今の僕の立ち位置は虐待を10年以上も受けていた可哀想な皇子であるため皇帝陛下がその縁談を認めないだろうとも思っていた。
だからこそ、あんなことになるとは考えていなかった。
その日、報告会に珍しく遅刻してきた叔父上の顔は蒼白だった。
あまりの様子に僕は心配になり、話かけた。
「叔父上、どうかされましたか?」
「息子が、エリックが、隣国の国王に嫁ぐことになりそうなんだ」
叔父上の言葉に、心臓が冷たくなるような感覚がしたことが分かった。
考えなかったわけではない。隣国との情勢を考えたらひとり年頃の皇族か貴族が犠牲になることを。
そして、それが自分と歳の近い人物になることも……。
「そんな、それは皇帝陛下の御命令ですか? 大公家を継ぐのはエリックだけなのに……」
僕の言葉に叔父上はうつむいたまま答えた。
「ああ、そうだ。しかし、エリックは私が甘やかしたこともあり兄上の覚えがよくない。そして、もしエリックが私の地位を継がなくても新しい大公になれる人物がいる」
その言葉に、先日、皇帝陛下が僕へ告げた言葉を思い出した。
日本人の経験があるためか皇帝陛下から優秀と評価されているらしい事実を……。
(このままだと、エリックが小説の僕と同じ思いをするのか……)
僕が運命を変えたことで誰かが不幸になる。その実感と共に、この世界で唯一大切にしてくれた人を永遠に傷つけることになることを確信した時、自然と言葉が口から漏れた。
「……叔父上、エリックでは隣国で問題を起こすでしょう。だから僕が隣国へ嫁ぐと皇帝陛下に話をしてみます」
僕の言葉に叔父上は一瞬、瞳を見開いたがすぐに耐えるようにそれを閉じた。
そして、しばらくして苦しげな言葉が漏れた。
「ありがとう……そして、すまない」
それが叔父上の答えだった。
直訴した僕に、最初は反対した皇帝陛下も最後には苦しげに了承してくれた。
「彼の国は番い以外は愛されない。苦しくなったら必ず帰ってきなさい」
皇帝陛下の言葉にうなずくが、それが難しいことは一番皇帝陛下が知っている。
それでも、その言葉が出ただけ原作より上出来だとなんとか自分に言い聞かせた。
***
その様子を私は見ていた。フェリックスたんのあまりに尊い魂に泣きそうになりながら、しかし小さく舌打ちをした。
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