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第8話 これからの計画と小さな違和感
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複雑な感情を抱えながら、僕は小説の冒頭同様に隣国の国王であるエリアスに嫁ぐ日を迎えていた。
いつもよりずっと乗り心地の良い大型の立派で煌びやかな馬車の中で着物の柄を思わせるような絢爛豪華な白い龍の刺繍がされた純白のドレスをまとわされ、見たことのないような繊細な装飾具も贈られていた。そうでありながら、なぜか顔が隠れる大きな白い帽子、まるで角隠しのようなものを被らされているのだが、すべてはエリアスからの贈り物らしい。
(原作でもこんな風にフェリックスにエリアスは贈り物をしていたかな……。いや、皇后の妨害でこれらを纏えなかったのかもな……)
何か違和感を感じる部分もあるが、一旦冷静に思考を整理する。
原作小説のフェリックスは嫁いだ後、冷遇に耐えながらじわじわと心を蝕んでいき、その中で、エリアスや祖国への復讐を誓うのだが、僕はわざわざ自分が幸せにならないルートを進むつもりはなかった。
たしかにエリアスからは愛されないかもしれないが、彼に執着する必要もないし、この広い世界にはフェリックスが幸せになれる可能性が無限に残っていると、現代日本人の経験がある僕は考えたからだ。
そして、なにより原作小説で読んでいた箇所までには、エリアス以外の明確なヒーローは存在しなかった。むしろBL小説には珍しく復讐やフェリックスの生々しい精神的な苦痛が丁寧に描かれていた。
その部分が社畜ライフで心が荒み、幸福な話よりもドアマット系や後悔をして懺悔する系のヒーローが出てくる小説を養分としてすすって生きていた僕にはたまらなく好きな作品だったのだが、絶対に自分が転生したくない作品ナンバーワンとも思っていた。
(……その世界に転生するとか運が悪い)
内心で自身の不運を呪ったが、こうなってしまった以上は、なんとかエリアスからも帝国からも逃げ出して未開の地とされている開拓地バージンランドまで逃げたいと思っている。
バージンランドは物語後半のある登場人物の出身地として描かれているのだが、アメリカの西部開拓時代のような場所らしい。
転生前は農業系の大学出身だった僕はいつか大きな農地を耕してスローライフを送りたいという夢があった。その夢を叶えるには、この世界の中ではその場所がベストだと目星をつけている。
エリアスから逃げるタイミングは、初夜の断りが行われた後すぐが望ましいと思われる。小説の描写から初夜のタイミングだけは警備が手薄であることが窺えるのだ。逆にそれ以降は冷遇されているとはいえ、逃げないように監視の目がきつくなることが繰り返し描かれていた。
(愛しはしないけど、逃げられても帝国との関係があるから困るんだろう。まあ、そんな事情は知ったこっちゃないので、絶対に逃げ切ってドアマット系主人公から異世界スローライフ系主人公に僕はジョブチェンジしてみせる!!)
心の中で強く誓った時、馬車が動きを止めた。
ーそして、
「我が国へようこそ、フェリックス皇子」
馬車の前にひとりの男が立っており、エスコートするために恭しく手を差し出していた。
白銀の絹糸のような長い髪、澄んだ黄金の瞳、そして人が持ちえない角が頭に生えた長身の美しい男、僕がこれから結婚し冷遇されることになる竜神の子孫であるエリアス国王その人であった。
いつもよりずっと乗り心地の良い大型の立派で煌びやかな馬車の中で着物の柄を思わせるような絢爛豪華な白い龍の刺繍がされた純白のドレスをまとわされ、見たことのないような繊細な装飾具も贈られていた。そうでありながら、なぜか顔が隠れる大きな白い帽子、まるで角隠しのようなものを被らされているのだが、すべてはエリアスからの贈り物らしい。
(原作でもこんな風にフェリックスにエリアスは贈り物をしていたかな……。いや、皇后の妨害でこれらを纏えなかったのかもな……)
何か違和感を感じる部分もあるが、一旦冷静に思考を整理する。
原作小説のフェリックスは嫁いだ後、冷遇に耐えながらじわじわと心を蝕んでいき、その中で、エリアスや祖国への復讐を誓うのだが、僕はわざわざ自分が幸せにならないルートを進むつもりはなかった。
たしかにエリアスからは愛されないかもしれないが、彼に執着する必要もないし、この広い世界にはフェリックスが幸せになれる可能性が無限に残っていると、現代日本人の経験がある僕は考えたからだ。
そして、なにより原作小説で読んでいた箇所までには、エリアス以外の明確なヒーローは存在しなかった。むしろBL小説には珍しく復讐やフェリックスの生々しい精神的な苦痛が丁寧に描かれていた。
その部分が社畜ライフで心が荒み、幸福な話よりもドアマット系や後悔をして懺悔する系のヒーローが出てくる小説を養分としてすすって生きていた僕にはたまらなく好きな作品だったのだが、絶対に自分が転生したくない作品ナンバーワンとも思っていた。
(……その世界に転生するとか運が悪い)
内心で自身の不運を呪ったが、こうなってしまった以上は、なんとかエリアスからも帝国からも逃げ出して未開の地とされている開拓地バージンランドまで逃げたいと思っている。
バージンランドは物語後半のある登場人物の出身地として描かれているのだが、アメリカの西部開拓時代のような場所らしい。
転生前は農業系の大学出身だった僕はいつか大きな農地を耕してスローライフを送りたいという夢があった。その夢を叶えるには、この世界の中ではその場所がベストだと目星をつけている。
エリアスから逃げるタイミングは、初夜の断りが行われた後すぐが望ましいと思われる。小説の描写から初夜のタイミングだけは警備が手薄であることが窺えるのだ。逆にそれ以降は冷遇されているとはいえ、逃げないように監視の目がきつくなることが繰り返し描かれていた。
(愛しはしないけど、逃げられても帝国との関係があるから困るんだろう。まあ、そんな事情は知ったこっちゃないので、絶対に逃げ切ってドアマット系主人公から異世界スローライフ系主人公に僕はジョブチェンジしてみせる!!)
心の中で強く誓った時、馬車が動きを止めた。
ーそして、
「我が国へようこそ、フェリックス皇子」
馬車の前にひとりの男が立っており、エスコートするために恭しく手を差し出していた。
白銀の絹糸のような長い髪、澄んだ黄金の瞳、そして人が持ちえない角が頭に生えた長身の美しい男、僕がこれから結婚し冷遇されることになる竜神の子孫であるエリアス国王その人であった。
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