初夜に「お前を愛するつもりはない」と言われて冷遇されるはずが、狂愛されています。タスケテ

ひよこ麺

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第9話 「優しい結婚相手」「永遠に……(エリアス視点)」

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「……あ、ありがとうございます。エリアス国王陛下」

想定と違うエリアスの行動に一瞬焦ったが、すぐに笑顔でその手に触れた。

竜神だからか一回りは大きいその手は冷たく体温が低いようだった。

「……可愛らしい手ですね、それにあたたかい」

エリアスの声は想像より艶があり、胸がドキドキしてしまったが、忘れてはいけない。

今はパフォーマンスをしているだけで、初夜に正体を表すのだから。

「エリアス国王陛下……その」

なんというか迷っていた矢先、何故か手の甲に唇が触れた。つまりキスされたのだ。

驚いた僕の手をエリアスは優しく撫でた。白く長いまつ毛からのぞく黄金の瞳が怪しく光り輝いたように見えた。

「あまりに可愛らしくてつい、気分を害してしまったでしょうか?」

「い、いえ、ただ、はじめてのことで驚いてしまって……」

なぜかエリアスは『はじめて』を反芻して蕩けるような笑みを浮かべた。

艶絶としか言いようがない微笑は人外のソレで小説の文脈から想像していた以上だった。

「では、行きましょう。ダ、もといフェリックス皇子のために部屋を準備しています。結婚式は明日なのであまり時間がなく申し訳ないですが、今日は旅の疲れをゆっくり癒やして下さい」

エリアス自ら僕を案内してくれた部屋は、小説に出てきたような微妙なものではなく絢爛豪華を文字通りに具現化したような空間で、驚いてしまった。

(なんで、こんなに良い部屋に……ああ、そうか明日は帝国からも来賓が来る。それが帰るまでは手厚くもてなしているのか……)

番い以外に冷たいことは他国にも知れているのに不思議だなと思いつつも短期間でも尊重されるのは悪くないなと思った。

「ありがとうございます、とても素敵なお部屋でびっくりしてしまいました」

「よかった。ダ、フェリックス皇子の好みを伺い好きなものをなるべく集めたのですよ。私が作ったす……もとい、部屋を気に入ってもらえて本当によかった」

まるで、愛おしい恋人にするようなもてなしに小説を知らなかったら腰砕けだっただろうが、僕は全てを知っているので愛想笑いで受け流した。

そんな僕の左手を再びとり今度は、薬指にチュッと音を立てながらキスをした。

仕草がセクシュアルで、変な気持ちになる。

「名残惜しいですが、明日は最高の1日にするとお約束をして今日はこれで失礼いたします」

本当に名残惜しそうに手を離したエリアスはゆっくりとした足取りで部屋を去っていった。

すると、それと入れ替えに使用人がやってきた。

王国は竜神の血を尊ぶため人間などゴミクズと思っている。小説ではそれもあり、より苛烈にフェリックスはひどい目に遭わされた。

特にその筆頭であるのが今やってきた僕の専属の使用人になるマルクスだった。

赤い髪に翡翠のような瞳をした精悍な顔立ちの男は、本来はエリアスに仕える近衛騎士のひとりだが、僕なんかの使用人にされて不機嫌なはずだ。

顔に出やすい単純なタイプなので嫌な顔をしているはずだと思ったのだが、なぜか彼の表情は満面の笑顔だった。

「たくさん汗をかかれたでしょう、湯浴みをいたしますか?それとも何かお飲みになりますか?」

「では湯浴みをお願いいたします」

暑い中をとんでもない豪華な衣装で来たのですぐにでも着替えたかったので、僕は湯浴みがしたいと答えた。

「わかりました!!お手伝いいたします」

それから湯浴みはもちろん、帝国ではありえない至れり尽くせりを満喫しているうちに気づいたら眠ってしまうという失態を犯したことは言うまでもない。


***

「ダーリンが居る。ああ、写真より何億、いや何那由他も愛らしい」

私は、愛おしいダーリンが寝たとの報告を受けてこっそり寝室に侵入した。

ピンク色の薔薇のような唇から寝息が漏れる度に、無理矢理に奪いたくなる衝動を必死に抑えていた。

閉ざされた瞼を覆う黄金の茂みのようなまつ毛が震える度に下半身が重くなる。

「明日までの辛抱だ、はぁ、今日は本当に危なかった……」

エスコートする際にあまりに小さな可愛い手で正直食べてしまいたくなっていた。

可愛らしいその指を口に含み私の長い舌を絡めて舐めたらどんな反応をしてくれただろうか。

右大臣からは、

「初夜までは猫をかぶって下さい。そうしないとあまりの重さにフェリックス皇子に逃げられますよ」

と軽蔑したような目で言われたが意味がわからない。

好き好き大好きな人の全てを知りたい、味わいたいと思うのは普通のはずだ。

番いが嫁入りすると知った日から、私は人間が好む紳士的な仕草を真剣に学び、番いの好みを徹底的に調べて理想の巣も作り上げた。

なにしろ、番いが孕れば巣から出れなくなるので間違えても居心地が悪くないように細心の注意を払った。

おかげで緊張していたようだったダーリンはぐっすり眠っている。

その愛らしい頬にそっと触れる。

「ダーリンが明日以降、私だけのものになるのが楽しみだ。そうなったら絶対に離さない。永遠に……」

甘い愛の言葉を耳元に囁いて、私は部屋を後にした。
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