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56.社畜サラリーマンは全裸結婚式を阻止したい

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「あの……本当にそれを着るのですか??」

今、私は確かに竜帝陛下との結婚式のための衣装合わせに来たはずなのに目の前にあるソレに驚きを隠せずにいた。

私の目の前にあるのは明らかに布が透けすぎて布としての機能を果たすつもりがない物体で、具体的にはほぼすべての布がシースルーで大人のお店にあるシースルーなコスチュームのウェディングドレス版のようなブツだ。

「ああ、これは歴代の竜帝の番が花嫁衣裳として着てきたものだ」

この世界の倫理感についてはもうどうこういうつもりはない。ただ、こんなほぼ全裸で結婚式を国のトップがするというのは私としてはどうかと思う。

そして、いくら前世を、もっと多くの記憶を取り戻しても絶対にほぼ全裸の結婚式は阻止したかった。

「……あの、竜帝陛下、竜帝陛下はご存じないと思いますが三十路男がそういう服を公衆の面前で着た場合、私の元々いた世界では公然わいせつ罪という(今後の人生を歩むにあたり)重い罪を課せられるんです。だから(そんな地獄は味わいたくないので)着たくありません」

真っすぐと竜帝陛下を見つめてそう宣言する。そんな私に、竜帝陛下は曇りなき眼を向けて答えた。

「心配ない。シヅルのドレスもだが、余の聖装も同じ素材で出来ている。つまりシヅルの世界でいうペアルックというものだ」

美しい顔に騙されそうになってはいけない。むしろふたりそろってシースルーエロコスチュームとかどこかのマニアックな企画ものA〇でしかない。

「いや、私は一生一度の結婚式で全裸ウェディングなんてどこかのえっちなビデオみたいな式はあげたくありません」

「……シヅル、しかし……竜帝の結婚式はそのまま全国民の前で番と交わる姿を公開し……」

「ハァ??」

思わずちいさくってかわいい類の生き物の中でも割と煽るタイプのキャラクターのような声が漏れた。シースルーエロコスチュームからの公開性交、間違いなくそういういかがわしいビデオでしかない。

そんな恐ろしい結婚式は阻止しなければいいけない。

「竜帝陛下、いえ、ラム様、私は私の裸は基本的にラム様の前でしか見せたくないし、そういう行為も他人に見せたくありません」

最近気付いたのだが、竜帝陛下はラム様呼びで頬を上気させながら上目遣いで見つめると割と言うことを聞いてくれる。むしろ三十路男がそんなことすると思うと死にたいがそうしないと大半の意見が看過されてしまうので嫌な時はこれをするしかない。

「シヅル……その表情は……ぐっ、かわいい過ぎる。ああ、かわいい余のシヅル。シヅルのためなら竜帝の結婚式の伝統を壊してしまおうか……」

もう一押しと思った時、突然扉が開いて急いだ様子のヘイズが現れた。

「何事だ??」
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