2 / 9
第2話 神様は微笑まない
しおりを挟む
次の日になったとしてもやはり心結の無視は続く。
「辻原さん、プリント出してほしいんだけど……」
「…………」
「辻原さん、ハンカチ落としたよ」
「…………」
どれだけ話しかけても、心結が良也に対して口を開くことはない。昨日の南月の言葉に少し期待を持ちながらも良也の頭の中は、嫌われているのかいないのか。この二択に悩まされていた。
もし嫌われているのなら、なんで嫌われているのか知りたい。もちろん、人に何か嫌われるようなことをしたのなら誠心誠意謝らないといけないし嫌われているのは正直気持ちが良くない。
嫌われていないにしても、どうしてここまで無視をされるのか単純に気になるし、もしほかの要因があるならば改善しないといけない。
と、ここまで思考を張り巡らせたところで周りが騒がしくなり、良也は考えるのを一旦やめた。みんなが向いている方向を見るとちょうど担任が白い箱を上下に振っているところだった。
その後ろにある黒板には30個の四角形の中に順に割り振られた数字が書かれている。
「それじゃあ席替えのくじ出席番号順に引いてけーまだ移動すんなよー」
良也のクラスでは3ヶ月に1回、担任の提案で席替えをすることになっていた。席替えはくじ制で右の廊下側の席から順に1~30の番号が振られ、くじで引いた席が新しい席になる。
「じゃあ次、仲上」
「あ、はい」
担任の前に行き、箱の中から1枚の紙を掴み出す。そのまま自分の席に戻り引いた紙を見てみるとそこには『30』と書かれていた。30は窓側のそれも一番後ろの席。
先生の目に付きにくいこの席はいわば天国。30人全員が引き終わったのを確認して席を移動する。
「お、良也めっちゃいい席引いてんじゃん。どうだ、俺のこの席と交換……」
「しねえよ?」
良也の前、『29』番の席は誠司だった。
「お、仲上くんいるじゃん! これからよろしくねー!」
「ん、中原か。よろしくな」
昨日放課後に教室で良也と一緒に掃除をした南月は右斜め前の席、『24』の席。
良也のクラスは6人班が3つ、4人班が3つの合計6つ班がある。良也たち後ろの列は例年通りならば4人班になるはずだ。
今決定しているのは良也、誠司、南月の3人。あと1人、良也の席の隣に来た人に班員になるのだが、まだこない。
「……はぁ、まだためらってるのかー」
南月はそうつぶやくと同時に席を立ち、ある人の元へ向かう。
「ほら『心結』、あんたの席『25』でしょ? 仲上くんの隣でしょー?」
「ちょ、ちょっと南月そんなに引っ張んないでよ……」
良也の隣りにある空白の席。そこに座るのは良也を無視している、辻原心結だった。
「……誠司、ここと席変わりたいって言ってたよな?」
「ん? いや別にここでも良いかなって思ってきたわ」
「……今変わる気は?」
「ない」
「即答かよ……」
良也の逃げ先は完全に塞がれた。
「辻原さん、プリント出してほしいんだけど……」
「…………」
「辻原さん、ハンカチ落としたよ」
「…………」
どれだけ話しかけても、心結が良也に対して口を開くことはない。昨日の南月の言葉に少し期待を持ちながらも良也の頭の中は、嫌われているのかいないのか。この二択に悩まされていた。
もし嫌われているのなら、なんで嫌われているのか知りたい。もちろん、人に何か嫌われるようなことをしたのなら誠心誠意謝らないといけないし嫌われているのは正直気持ちが良くない。
嫌われていないにしても、どうしてここまで無視をされるのか単純に気になるし、もしほかの要因があるならば改善しないといけない。
と、ここまで思考を張り巡らせたところで周りが騒がしくなり、良也は考えるのを一旦やめた。みんなが向いている方向を見るとちょうど担任が白い箱を上下に振っているところだった。
その後ろにある黒板には30個の四角形の中に順に割り振られた数字が書かれている。
「それじゃあ席替えのくじ出席番号順に引いてけーまだ移動すんなよー」
良也のクラスでは3ヶ月に1回、担任の提案で席替えをすることになっていた。席替えはくじ制で右の廊下側の席から順に1~30の番号が振られ、くじで引いた席が新しい席になる。
「じゃあ次、仲上」
「あ、はい」
担任の前に行き、箱の中から1枚の紙を掴み出す。そのまま自分の席に戻り引いた紙を見てみるとそこには『30』と書かれていた。30は窓側のそれも一番後ろの席。
先生の目に付きにくいこの席はいわば天国。30人全員が引き終わったのを確認して席を移動する。
「お、良也めっちゃいい席引いてんじゃん。どうだ、俺のこの席と交換……」
「しねえよ?」
良也の前、『29』番の席は誠司だった。
「お、仲上くんいるじゃん! これからよろしくねー!」
「ん、中原か。よろしくな」
昨日放課後に教室で良也と一緒に掃除をした南月は右斜め前の席、『24』の席。
良也のクラスは6人班が3つ、4人班が3つの合計6つ班がある。良也たち後ろの列は例年通りならば4人班になるはずだ。
今決定しているのは良也、誠司、南月の3人。あと1人、良也の席の隣に来た人に班員になるのだが、まだこない。
「……はぁ、まだためらってるのかー」
南月はそうつぶやくと同時に席を立ち、ある人の元へ向かう。
「ほら『心結』、あんたの席『25』でしょ? 仲上くんの隣でしょー?」
「ちょ、ちょっと南月そんなに引っ張んないでよ……」
良也の隣りにある空白の席。そこに座るのは良也を無視している、辻原心結だった。
「……誠司、ここと席変わりたいって言ってたよな?」
「ん? いや別にここでも良いかなって思ってきたわ」
「……今変わる気は?」
「ない」
「即答かよ……」
良也の逃げ先は完全に塞がれた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん
菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる