5 / 9
第5話 勇気
しおりを挟む
その後、ラインで計画を立て、3日後にある文化祭の話し合いで良也と南月がクラスの実行委員になり、心結を強制的に良也と同じシフトに入れることを決めた。
これは、クラスの出し物が喫茶店やお化け屋敷など絶対にシフトを組まないといけない出し物になると2人が考えたからである。
そんなこんなでラインをしていると時間はあっという間に過ぎるもので、もう12時に差し掛かっていた。
『お、そろそろいい時間だね~そろそろ寝に入ろうかな…』
『そうだな…俺も結構眠くなってきた』
『じゃあ今日はここらへんで。また明日ね、仲上くん!』
『うん、おやすみ』
おやすみーとイルカが枕を抱いているスタンプが送られて来たのを確認して良也はスマホの電源を落とす。
「……俺ってそんなに話しかけづらいのかな」
部屋にある姿鏡を向かいに、前髪をちょいちょいといじってみる。少しはねさせてみたり、分けてみたり。
「……やっぱ似合わねー」
結局気に入るものはなく、すぐそばに置いてあったくしを通す。やっぱり俺はくしを通しただけの髪が1番似合ってると思いながらぼすっとベッドに飛び込む。
良也自身、別に話しかけにくいような話し方や態度、表情をしているつもりはなく、なぜ辻原が話しかけに来ないのか、必死に考えていた。さっきの髪の件もその一環だ。
そろそろ寝るかと部屋の電気を消しにベッドから立ち上がり、電気を消す。そのまま良也は寝に入ったのだが、スマホの電源を切っていた良也は知るすべもなかった。
心結に良也のラインアカウントが伝わり、友だち追加されていることに。
3日後の放課後。予定通り教室内では文化祭の話し合いで騒がしくなっていた。
「じゃあまず実行委員決めるか。男女1人ずつで、やりたいやついるかー?」
3日目に決めた通り、良也はゆっくりと手を挙げる。それとほぼ同時に斜め前に座っている南月も手を挙げる。
「……ん、この2人だけでいいか? じゃあこの2人でけ——」
「せ、先生、私も……」
先生が「決定」と言いかけた時、良也の横の席に座っている心結がちょこっと手を挙げ、力のない声を発した。
これには良也も南月も想定外で、目を見開いて心結の方を見ている。
「お、辻原もか。じゃあ女子は中原と辻原で話し合ってどっちがやるか決めてくれー」
「先生、やっぱり私いいです」
「え、ほんとにいいか?」
「はい。全然大丈夫ですよ」
そう言って手を下ろしたのは心結。ではなく、南月だった。
突然のことで混乱している良也は先生の言葉を聞き流して遠くを見つめている。その横では心結と南月がヒソヒソと話している。
「ほんとに良かったの?」
「良いって。てか心結、よく手上げたねーお姉ちゃん感心したよー」
「……だって、南月と良也くんが一緒にやるの考えたらなんか嫌になったんだもん」
「それを私に言っちゃうから心結はいつまで経っても仲上くんと仲良くなれないんだよなー」
「……本人に言えるわけないじゃん。ばか」
「それを本人に言えたら絶対に仲良くなれる、というか付き合うとこまで行けるのにな……」と頭を抱えながら良也の席に近寄る。
「おーい仲上くーん。……ちょっといつまで虚空見てるの」
「うお!」
「やっと帰ってきた……」
「あー中原か。どうした?」
「ちょっと謝っておいた方がいいかなって。前決めたようになってないし。仲上くん、無理してないかなって」
「その件は……まだうまく飲み込めないけど、大丈夫。嫌ってわけじゃないし」
背中の視線が徐々に強まってきたことを感じた南月は良也の答えを聞いた後すぐさま席に戻った。
「なつ……」
心結が何かを言いかけたがその言葉は担任の声によってかき消された。
「よし、仲上も元通りになったところで、委員の2人。前に出て出し物決めてくれ。お前ら2年目だから学祭で出せないものくらいわかるよな?」
良也たちの学校の文化祭は大体のことはできるが、やはり衛生的に生ものの提供はできない。それ以外は学校側が危険と判断したものだが、以前、教室でジェットコースターを作った時も許可が出たらしいのでそのルールはあってないようなものだ。
「じゃあ、やりたいものある人意見出してくださーい」
良也のその声を皮切りに次々と意見が出される。書記は心結に任せていた良也も流石に書記に回った。
「……はい、では出たものの中で多数決をとって最終的に残ったのは、『屋台』『縁日』『メイド喫茶』の3つ。この中から決めていきたいところなんですが、そろそろ時間なので一旦今日はここで終わります。最終決定は明日ということで」
ちょうど喋り終えたところでチャイムが鳴り始める。それを横耳で聞きながら教卓の上を片付けているとちょいちょいと肩を叩かれた。
振り向くとそこには下に俯いた心結の姿が。スカートを握り、何かを言いたそうにしていた心結はやがて顔をあげ、良也から少し目線を外しながら
「……文化祭、一緒に頑張ろうね。仲上くん」
これは、クラスの出し物が喫茶店やお化け屋敷など絶対にシフトを組まないといけない出し物になると2人が考えたからである。
そんなこんなでラインをしていると時間はあっという間に過ぎるもので、もう12時に差し掛かっていた。
『お、そろそろいい時間だね~そろそろ寝に入ろうかな…』
『そうだな…俺も結構眠くなってきた』
『じゃあ今日はここらへんで。また明日ね、仲上くん!』
『うん、おやすみ』
おやすみーとイルカが枕を抱いているスタンプが送られて来たのを確認して良也はスマホの電源を落とす。
「……俺ってそんなに話しかけづらいのかな」
部屋にある姿鏡を向かいに、前髪をちょいちょいといじってみる。少しはねさせてみたり、分けてみたり。
「……やっぱ似合わねー」
結局気に入るものはなく、すぐそばに置いてあったくしを通す。やっぱり俺はくしを通しただけの髪が1番似合ってると思いながらぼすっとベッドに飛び込む。
良也自身、別に話しかけにくいような話し方や態度、表情をしているつもりはなく、なぜ辻原が話しかけに来ないのか、必死に考えていた。さっきの髪の件もその一環だ。
そろそろ寝るかと部屋の電気を消しにベッドから立ち上がり、電気を消す。そのまま良也は寝に入ったのだが、スマホの電源を切っていた良也は知るすべもなかった。
心結に良也のラインアカウントが伝わり、友だち追加されていることに。
3日後の放課後。予定通り教室内では文化祭の話し合いで騒がしくなっていた。
「じゃあまず実行委員決めるか。男女1人ずつで、やりたいやついるかー?」
3日目に決めた通り、良也はゆっくりと手を挙げる。それとほぼ同時に斜め前に座っている南月も手を挙げる。
「……ん、この2人だけでいいか? じゃあこの2人でけ——」
「せ、先生、私も……」
先生が「決定」と言いかけた時、良也の横の席に座っている心結がちょこっと手を挙げ、力のない声を発した。
これには良也も南月も想定外で、目を見開いて心結の方を見ている。
「お、辻原もか。じゃあ女子は中原と辻原で話し合ってどっちがやるか決めてくれー」
「先生、やっぱり私いいです」
「え、ほんとにいいか?」
「はい。全然大丈夫ですよ」
そう言って手を下ろしたのは心結。ではなく、南月だった。
突然のことで混乱している良也は先生の言葉を聞き流して遠くを見つめている。その横では心結と南月がヒソヒソと話している。
「ほんとに良かったの?」
「良いって。てか心結、よく手上げたねーお姉ちゃん感心したよー」
「……だって、南月と良也くんが一緒にやるの考えたらなんか嫌になったんだもん」
「それを私に言っちゃうから心結はいつまで経っても仲上くんと仲良くなれないんだよなー」
「……本人に言えるわけないじゃん。ばか」
「それを本人に言えたら絶対に仲良くなれる、というか付き合うとこまで行けるのにな……」と頭を抱えながら良也の席に近寄る。
「おーい仲上くーん。……ちょっといつまで虚空見てるの」
「うお!」
「やっと帰ってきた……」
「あー中原か。どうした?」
「ちょっと謝っておいた方がいいかなって。前決めたようになってないし。仲上くん、無理してないかなって」
「その件は……まだうまく飲み込めないけど、大丈夫。嫌ってわけじゃないし」
背中の視線が徐々に強まってきたことを感じた南月は良也の答えを聞いた後すぐさま席に戻った。
「なつ……」
心結が何かを言いかけたがその言葉は担任の声によってかき消された。
「よし、仲上も元通りになったところで、委員の2人。前に出て出し物決めてくれ。お前ら2年目だから学祭で出せないものくらいわかるよな?」
良也たちの学校の文化祭は大体のことはできるが、やはり衛生的に生ものの提供はできない。それ以外は学校側が危険と判断したものだが、以前、教室でジェットコースターを作った時も許可が出たらしいのでそのルールはあってないようなものだ。
「じゃあ、やりたいものある人意見出してくださーい」
良也のその声を皮切りに次々と意見が出される。書記は心結に任せていた良也も流石に書記に回った。
「……はい、では出たものの中で多数決をとって最終的に残ったのは、『屋台』『縁日』『メイド喫茶』の3つ。この中から決めていきたいところなんですが、そろそろ時間なので一旦今日はここで終わります。最終決定は明日ということで」
ちょうど喋り終えたところでチャイムが鳴り始める。それを横耳で聞きながら教卓の上を片付けているとちょいちょいと肩を叩かれた。
振り向くとそこには下に俯いた心結の姿が。スカートを握り、何かを言いたそうにしていた心結はやがて顔をあげ、良也から少し目線を外しながら
「……文化祭、一緒に頑張ろうね。仲上くん」
0
あなたにおすすめの小説
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる