東京は、君の温度を知らない

nishi

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第二章:氷壁に触れる体温、芽生える「毒」

結城の心の揺れと小春への「特別な視線」

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プロジェクトは、大きな危機を乗り越えたことで生まれた一種の団結力(あるいは、ただの気の緩みか)と、依然として残る厳しい納期との間で、奇妙な緊張感をはらみながら進行していた。定例ミーティングは週に二度に増え、それ以外にも、結城と小春を含むコアメンバー間での、より流動的で、時には深夜に及ぶ小規模な打ち合わせや、チャットツールでの短い確認作業が、日常茶飯事となっていた。必然的に、結城が佐伯小春という存在を、物理的にも、そして彼の思考領域においても、認識せざるを得ない時間は、指数関数的に増大していた。そして、彼は、自分の中に生じている、さらに不可解で、非合理的で、そして何よりも厄介な変化に、もう気づかないふりをし続けることが、ほとんど不可能になってきているのを、苦々しく感じていた。原因は、特定できている。他の誰でもない、佐伯小春。あの、東京という名の巨大な濾過装置を、なぜかすり抜けてきたかのような、彼の理解を超えた、異物のような存在。
(結城 視点) 会議中、部下である有能な役員や、百戦錬磨のプロジェクトマネージャーからの、理路整然とした報告を聞いているはずなのに、結城の視線は、いつの間にか、テーブルの向かい側、あるいはモニターの片隅に映る小春の姿を、無意識のうちに捉えていることが、驚くほど増えた。それは、以前のような、彼女の欠点や非効率さ、あるいは場違いさを探すための、冷徹で分析的な、まるで監視カメラのような視線とは、明らかにその性質を変えつつあった。彼女が、真剣な表情でモニターに映る専門用語だらけの資料を見つめ、理解しようと小さな口をきゅっと結んでいる様子。誰かの説明を聞きながら、一生懸命に、こくこくと小さく頷く、ひたむきな仕草。時折、長いまつ毛が伏せられ、何かを懸命に自分の中で反芻し、消化しようと考え込んでいる横顔。あるいは、難しい議論が一段落した瞬間に見せる、緊張がふっと解けたような、ほんのわずかに気の抜けた、無防備な表情。さらには、陽光が差し込む窓際で、彼女の(彼から見れば何の変哲もない)髪が、ふわりと明るい茶色に透ける瞬間。 その一つ一つが、まるで彼の脳内で勝手にズームアップされ、スローモーションで再生されるかのように、彼の意識のスクリーンに、鮮明にインプットされてくるのだ。他の、どんなに美しく、有能で、洗練された女性社員や、あるいは魅力的な女性クライアントに対してさえも、彼が向けるのは常に、ビジネス上の関係性を前提とした、感情を排したプロフェッショナルな視線、あるいは、必要に応じて相手を魅了し、コントロールするための、計算され尽くした視線だけだった。それ以外の個人的な興味など、彼にとっては時間の無駄でしかなかった。だが、佐伯小春に対してだけは、違う。そこには、分析や評価、コントロールといった意図とは全く別の、もっと個人的で、衝動的で、彼自身にも理由が説明できず、そしてコントロールが効かない種類の「何か」——それは好奇心か、苛立ちか、あるいは、もっと別の、彼が名前を知らない感情か——が含まれているような気がした。まるで、最新鋭の画像認識AIが、学習データにない、特定のノイズパターンだけを、他の何よりも高い解像度で、異常なまでに執拗にトラッキングし続けてしまうような、不可解なバグ。彼は、その逸脱した視線に、彼女が(あるいは他の誰かが)気づかれるたびに(あるいは、気づかれるより早く、彼自身の理性が危険信号を発して)、まるで火傷をしたかのように慌てて視線を外し、内心で自分自身を激しく罵倒した。 「(何を、見ているんだ、俺は……! 時間とリソースの無駄だ。集中しろ、結城創!)」 だが、彼の強固な意思とは裏腹に、その「特別な視線」は、彼が最も警戒し、排除すべき感情の兆候であるにも関わらず、まるで彼の制御を離れた自動プログラムのように、繰り返され、そして、おそらくは、その強度と頻度を増していった。
さらに、彼を深く苛立たせ、そして混乱させる、新たな種類の感情が、彼の心の奥底から、まるで地下水脈のように、じわりと湧き出し始めていた。それは、彼が最も軽蔑し、非合理的で、生産性の欠片もないと断じてきた感情——おそらくは、一般的に「嫉妬」や「独占欲」と呼ばれる、醜悪で、粘着質な何か——に酷似していた。
ある日の昼休み。結城が自社の、限られた役員だけが使用できるエグゼクティブエリアにある静かなカフェスペースで、一人でエスプレッソを飲んでいると、ガラス壁の向こうの一般エリアのソファ席で、小春が誰かと携帯電話で話しているのが見えた。ガラス越しなので声は聞こえない。しかし、その表情だけで、相手が誰なのか、そしてどんな会話をしているのか、おおよその想像はついた。普段、会社で見せる、どこか強張り、緊張した表情とは全く違う、まるで春の日差しのように明るく、柔らかく、弾けるような笑顔。全身で喜びを表現するように、楽しそうに相槌を打ち、時には口元に手を当てて、屈託なく笑っている。電話の相手は、おそらく、気心の知れた家族か、あるいは、彼女が「故郷」と呼ぶ、結城にとっては存在すら意識したことのない場所の、古い友人なのだろう。もしかしたら、男友達、あるいは…。その、自分には決して、おそらく今後も永遠に見せることはないであろう、完璧に無防備で、一点の曇りもなく、心からの喜びと親愛に満ちた笑顔。それを見た瞬間、結城の胸の奥深く、硬く閉ざされていたはずの領域に、まるで氷の杭を打ち込まれたかのような、鋭い、そして不快極まりない痛みが走った。 「(……誰と話している? なぜ、あんな……あんな顔で、笑うんだ? 俺の前では、あんな風に笑ったことなど、一度もないくせに……)」 なぜ、そんなことがこれほどまでに気になるのか、自分でも全く理解できない。論理的に考えれば、彼女が誰と、どんな風に話そうが、どんな表情をしようが、自分には微塵も関係のないことのはずだ。彼女はあくまで取引先の社員であり、仕事上のパートナーに過ぎない。それ以上でも、それ以下でもない。そう、彼の明晰な頭脳は結論付けているのに、胃の腑からせり上がってくるような、黒く、重く、どろりとした、醜い感情の塊を、どうしても抑えることができない。まるで、自分が丹精込めて育てた(そんなはずは、絶対にないのだが)花を、見知らぬ誰かに、いとも簡単に摘み取られてしまったかのような、理不尽で、暴力的なまでの喪失感と、焦燥感。彼は、持っていたデミタスカップをソーサーに叩きつけるように置き、その硬質な音に、近くにいた他の役員が一瞬いぶかしげな視線を向けたことに気づき、さらに自己嫌悪に陥りながら、足早にその場を立ち去った。あの笑顔が、脳裏に焼き付いて離れなかった。
また別の日には、さらに明確な形で、彼の内に潜む「毒」が顔を覗かせた。鳩屋フーズ側から、小春と同年代と思われる、人の良さそうな、しかし結城の目にはどこか軽薄で、調子が良いだけに見える若い男性社員が、資料届けと称して、打ち合わせのためにネクストリーム社を訪れた。ミーティングが始まる前のわずかな時間、彼は、やけに馴れ馴れしい態度で小春に話しかけ、二人は、何か共通の社内のゴシップなのか、あるいは学生時代のサークルのノリのような、結城には到底理解できない種類の話題で、声を立てて笑い合っていた。小春も、結城の前では決して見せないような、リラックスした、親密な雰囲気を醸し出していた。その、二人だけの閉じられた空間のような光景を目にした瞬間、結城は、自分でも信じられないほどの、激しい、そして明確な敵意と、衝動的なまでの怒りを感じた。今すぐ、あの、チャラチャラした男の胸ぐらを掴んで、この神聖な(と彼は思っている)ビジネスの場から、叩き出してやりたい、と本気で思ったのだ。 「(……なんだ、あの態度は。公私混同も甚だしい。仕事中に、馴れ合い、無駄話。プロ意識というものが、決定的に欠けているのではないか? 佐伯、君もだぞ)」 彼は、沸騰しそうな自分の感情を、ビジネス倫理やプロフェッショナリズムといった、もっともらしい、正当な理由のオブラートに、必死で包み込もうとした。だが、本当は、心の奥底では分かっていた。自分の感じているこの、黒いマグマのような苛立ちは、そんな高尚な理由から来るものではないことを。あの、ヘラヘラした男に向けられている、小春の、警戒心のかけらもない、親しみに満ちた、柔らかな笑顔。それが、ただひたすらに、許せないのだ。気に食わないのだ。まるで、自分が、彼女に対して、何か特別な所有権でも持っているかのような、全く馬鹿げた、そして危険な錯覚。彼は、その後のミーティングで、普段よりもことさらに冷たく、威圧的な口調で議論を支配し、特に、その若い男性社員に対しては、まるで尋問するかのように、必要以上に厳しく、意地の悪い質問を浴びせかけ、完膚なきまでに論破してしまった。後になって、会議室を出ていく彼の、怯えと当惑に満ちた顔と、そんな結城を、非難するでもなく、ただ困惑したような、悲しそうな目で見つめていた小春の顔を思い出し、激しい自己嫌悪と、得体の知れない感情の嵐に襲われることになるのだが。
なぜだ? なぜ、佐伯小春という、ただの、どこにでもいるような、平凡で、未熟な、取引先の新人OLが、これほどまでに自分の心をかき乱し、平穏を奪うのか? 結城には、どれだけ思考を巡らせても、その答えが見つからなかった。彼女は、決して絶世の美女というわけではない。彼の周りに常に侍っている、有名ファッション誌の表紙を飾るような、洗練されたモデルのような美女たちに比べれば、むしろ、驚くほど地味で、垢抜けず、都会的な洗練さとは無縁だ。そして、決して頭脳明晰というわけでもない。むしろ、時折見せる、世間知らずで、空気を読まない言動や、ビジネスの常識から逸脱した甘い考え方には、今でも苛立ちを覚えることの方が多い。だというのに、なぜ、彼女のことが、こんなにも、四六時中、気になってしまうのか? なぜ、彼女の些細な言動一つ一つに、自分の心が、まるで荒波にもまれる小舟のように、大きく揺さぶられてしまうのだろうか? それは、彼が最も嫌悪し、排除しようとしてきた、非合理性の極みではなかったか?
その、彼岸のように遠い答えの、ほんの小さな断片が、まるで濃い霧の中に一瞬だけ差し込む月光のように、予期せぬ瞬間に、彼の心の奥底に、微かな光を投げかけてきたことがあった。 それは、またしても、重要なプレゼン資料の最終チェックのため、二人だけで深夜までオフィスに残っていた夜のことだった。他のメンバーはすでに帰宅し、静まり返った、だだっ広いオフィスには、結城と小春、そして彼らの打つキーボードの音だけが、規則的に響いていた。結城は、モニターに映し出された複雑なグラフや数値を睨みつけながら、ここ数日間の過度の集中と睡眠不足で、思考が明晰さを失い、うまくまとまらないのを感じていた。おそらく、その時の彼の顔には、彼自身が気づかないうちに、普段は完璧なポーカーフェイスの下に隠している、深い疲労と、焦燥と、そして、もしかしたら、誰にも頼れないという、長年にわたる孤独がもたらす、わずかな弱さのようなものが、影のように滲み出ていたのかもしれない。 ふと、隣のデスクで、同じように資料と格闘していた小春が、全ての作業を止めて、じっとこちらの顔を見ている気配がした。そして、おずおずと、しかし、以前のような怯えとは違う、どこか芯の通った、静かな声で、彼に話しかけてきた。 「あの……結城社長。…少しだけ、休憩されてはいかがですか? さっきから、ずっと眉間に皺が寄っていらっしゃいますし……顔色が、あまり良くないように見えます。あの、差し出がましいとは思うのですが……あまり、ご無理を、なさらないでください」 その声には、彼の社会的地位や、卓越した能力に対する、畏敬や遠慮よりも、ただひたすらに、目の前で無理をしているように見える一人の人間に対する、素朴で、飾り気のない、真っ直ぐな、人間的な共感と気遣いが、深くこもっているように感じられた。それは、彼がこれまでの人生で、ほとんど受け取ったことのない種類の、純粋で、温かい何かだった。 結城は、文字通り、意表を突かれて顔を上げた。いつもなら、「余計な世話だ」「自分の体調管理は自分でしている」と、氷のように冷たい声で、即座に、そして容赦なく突き放していただろう。あるいは、完全な無視を決め込んだかもしれない。それが、彼が他者との間に築いてきた、安全な距離の保ち方だったからだ。だが、その時の彼は、なぜか、何も言い返すことができなかった。彼女の、その、何の計算も、下心も、同情さえも感じられない、ただただ純粋で、静かで、そして、まるで澄んだ水のように、彼の心の奥底までをも見通しているかのような、共感の眼差し。それが、まるで鋭利な、しかし温められたナイフのように、彼が長年かけて、血と汗と涙で築き上げてきた、分厚い、冷たい氷の鎧を、いとも簡単に貫通し、その奥にある、彼自身も長い間存在を忘れ、あるいは必死で見ないようにしてきた、柔らかく、傷つきやすく、そして孤独な、生身の心に、直接、じわりと触れてきたような、衝撃的な感覚があった。 それは、彼が心の最も深い場所に、誰にも知られずに抱え続けてきた、決して満たされることのない承認欲求や、どれだけ成功しても消えることのない虚無感や、あるいは、遠い過去に負った、いまだに疼く、古い傷。そういった、彼の最も脆弱で、無防備な部分に、彼女の、その、意図しない、しかし致命的なまでの純粋さが、そっと、しかし確実に、触れた瞬間だったのかもしれない。 彼は、生まれて初めて感じるような、激しい動揺と混乱を悟られまいと、反射的に視線をモニターに戻し、「……放っておいてくれ。自分の仕事に集中しろ」と、低い、掠れたような、自分でも驚くほど弱々しい声で言うのが、精一杯だった。しかし、彼の心臓は、暴走した機械のように、経験したことのないような激しいリズムで高鳴り、顔が、首筋までが、カッと熱を持っているのを感じていた。それは、単純な怒りでもなく、羞恥でもなく、もっと別の、もっと根源的で、名前のつけようのない感情の奔流だった。まるで、永遠に凍てついた極北の大地に、ほんの一瞬だけ、真夏の太陽が顔を出し、その強烈な光と熱で、分厚い氷が、音を立てて溶け始めたかのような、抗いがたい、そして恐ろしいほどの、戸惑いと、温かさと、そして、それを全力で拒絶したいという、強い抵抗感が入り混じった、複雑な感覚。 彼女の存在は、単なる「予測不能な変数」や「興味深いバグ」などではない。もしかしたら、彼の、完璧にコントロールされ、秩序だてられ、しかし凍てついて生気を失っていた世界そのものを、根底から溶かし、破壊し、そして全く別の何かに変えてしまう可能性を秘めた、極めて危険な「熱源」なのかもしれない。そして、その熱に、彼は抗うことができるのだろうか? あるいは、抗うべきなのだろうか?
その夜を境に、結城の、小春に対する態度は、彼自身も意識しないレベルで、しかし周囲から見れば僅かに感じ取れるかもしれないほど、さらに微妙な、そして矛盾した変化を見せ始めた。もちろん、依然として、仕事においては厳しく、要求水準は高く、冷徹な判断を下す側面が消えたわけではない。彼の本質は、そう簡単には変わらない。だが、時折、ほんの些細な、取るに足らないような瞬間に、その分厚い氷の壁に、小さな、しかし確実な亀裂が、いくつも見えるようになったのだ。 例えば、彼女が何か、またしても初歩的な質問をしてきても、以前のように、即座に「自分で考えろ」「前に説明したはずだ」と切り捨てるのではなく、一瞬だけ、ほんの一瞬だけ考え、まるで根負けしたかのように、「……それは、つまりこういうことだ」と、以前よりも少しだけ、丁寧に、噛み砕いて説明を加えてやることがあった。あるいは、彼女が作成した資料に、以前なら絶対に許さなかったであろう小さな表現の揺れや、体裁のずれを見つけても、「まあ、本質的な問題ではないか」と、敢えて指摘せずに、自分でこっそりと修正してしまうこともあった。それは、効率性を神と崇める彼にとっては、ありえないほどの「無駄」であり、「甘さ」であるはずの行動だったが、なぜか、そうしてしまうのだ。彼女の、ミスを指摘された時の、あの、子犬のようにしょげる、傷ついたような、そして心底申し訳なさそうな顔を、もう、あまり見たくないのかもしれない、と彼は、心のどこかで、無意識のうちに感じていたのかもしれない。 さらに、他のメンバーが、彼女の少し的外れな意見や提案を、軽くあしらったり、失笑したりした時に、結城が、それまで黙っていたのに、ふと「……いや、待て。その視点は、あるいは一考の価値があるかもしれん」と、まるで彼女を擁護するかのような、意外な発言をして、その場の空気を変えてしまうことさえあった。もちろん、その後に、彼一流のロジックで、その意見をビジネス的に成立させるための厳しい条件を付け加えるのではあるが。 それは、彼が長年かけて自分自身に厳しく課してきた、鉄のような自己規律と、他者への無関心からの、ほんのわずかな、しかし繰り返される逸脱だった。そして、その逸脱が、他の誰に対してでもなく、佐伯小春という、特定の、そして彼にとっては最も理解不能な個人に対してのみ、選択的に起こっているという事実に、結城は、言いようのない混乱と、そして、これまで感じたことのない種類の、微かな、しかし確かな「温かさ」や「甘さ」のようなものを、戸惑いながらも感じ始めていた。それは、彼の持つ冷徹さや合理性、そして成功の裏にある「毒」とは対極にある、極めて危険で、そして抗いがたい魅力を持つ感情の萌芽だったのかもしれない。彼の内側で、何かが確実に変わり始めていた。氷が、少しずつ、しかし確実に、溶け始めていた。そして、その変化の先に何が待ち受けているのか、その雪解け水が、彼をどこへ押し流していくのか、彼自身にも、まだ全く、全く予測がつかなかった。ただ、その流れに、抗うことが、日に日に難しくなっているような気がしていた。
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