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「僕よりイアン様のほうがお似合いになりますよ。ヴィーもそう思わないか?」
「えぇ、イアンも似合うと思うわ! そうね、青い髪だから……このカタバミのコサージュなんてどうかしら」
ヴィヴィアンが選んだのは、クローバーのような三枚の葉に、黄色い小さな花が付いたコサージュだった。
丸い五弁の花びらもさることながら、葉の形がハート型で、全体的に可愛らしい印象を受ける。
ヴィヴィアンが掲げて軽くイアンと合わせるだけでも、青い髪に花の黄色が目立ち過ぎることもなく、よく似合っていた。
ふむ、ヴィヴィアンにはコーディネートの才能があるらしい。
「わぁ、とても可愛いです!」
「でしょう? ぜひお付けになって!」
僕とは違い、イアンは抵抗することなく侍女の手を受け入れた。コサージュを髪飾りとして使っても、気にならないらしい。
完成したのを手鏡で見せられると、角度を変えては仕上がりを喜んでいる。
イアンの様子に、ヴィヴィアンも満足げだ。
「気に入っていただけたなら、お近づきの印に、そちらをお贈りしますわ」
「本当!? あ……でも、ダメです」
「あら、どうしてですの?」
表情を曇らせたイアンに、ヴィヴィアンが首を傾げる。
「こういうの、お父様は喜ばないんです。男らしくないって……」
「そうなの? お兄様はどう思われます?」
ヴィヴィアンが僕を見上げたのに合わせて、イアンも僕を見た。
イアンの嗜好は尊重してあげたいけど、貴族社会では受け入れられないことを考えると答えるのが難しい。
「僕はよく似合ってると思うし、そこに男らしさは関係ないと思う。でもこれは僕個人の意見だから……」
「ダメですの?」
「コサージュを贈るのはいいと思うよ。確か母上は、男性が付けてもいいというお考えだろう?」
女性だけじゃなく、男性もコサージュを付けるのが流行になれば、贈り物としておかしくはなくなる。
「一度母上に相談してみようか。少なくとも我が家から贈られたもので、イアン様がお父上から非難されることはないだろう」
けれど悪い印象を与えない確証はない。
厳しい人なら、コサージュを贈られたのは軟弱に見られたからだって、イアンの落ち度として考えるかもしれなかった。
「何だか難しいのですわね……」
「そうだ、次の夜会で、父上に付けてもらおうか?」
強面の父上がアクセサリーとして用いれば、コサージュが男らしくないとは言われないんじゃないか。
咄嗟の思いつきだったけど、ヴィヴィアンは手を叩いて喜んだ。
「とても素晴らしい考えですわ! それなら誰も文句は言えませんわね!」
「あの、そんな、ボクのことで……」
「心配なさらないで、イアン。お父様に任せれば大丈夫よ!」
父上がコサージュについてどう反応されるかはわからないけど、ヴィヴィアンが頼めば付けてくれる気がした。宝石をあしらったコサージュを贈るぐらいだし。
イアンには、その後でコサージュを贈ればいいと話が決まったところで――出かけていた母上が帰ってきた。
「これはどういうことなの?」
応接間に顔を出した母上は、ヴィヴィアンとイアンが一緒にいるのを見て、目尻を釣り上げる。
その顔は怒ったヴィヴィアンにそっくりだった。
「えぇ、イアンも似合うと思うわ! そうね、青い髪だから……このカタバミのコサージュなんてどうかしら」
ヴィヴィアンが選んだのは、クローバーのような三枚の葉に、黄色い小さな花が付いたコサージュだった。
丸い五弁の花びらもさることながら、葉の形がハート型で、全体的に可愛らしい印象を受ける。
ヴィヴィアンが掲げて軽くイアンと合わせるだけでも、青い髪に花の黄色が目立ち過ぎることもなく、よく似合っていた。
ふむ、ヴィヴィアンにはコーディネートの才能があるらしい。
「わぁ、とても可愛いです!」
「でしょう? ぜひお付けになって!」
僕とは違い、イアンは抵抗することなく侍女の手を受け入れた。コサージュを髪飾りとして使っても、気にならないらしい。
完成したのを手鏡で見せられると、角度を変えては仕上がりを喜んでいる。
イアンの様子に、ヴィヴィアンも満足げだ。
「気に入っていただけたなら、お近づきの印に、そちらをお贈りしますわ」
「本当!? あ……でも、ダメです」
「あら、どうしてですの?」
表情を曇らせたイアンに、ヴィヴィアンが首を傾げる。
「こういうの、お父様は喜ばないんです。男らしくないって……」
「そうなの? お兄様はどう思われます?」
ヴィヴィアンが僕を見上げたのに合わせて、イアンも僕を見た。
イアンの嗜好は尊重してあげたいけど、貴族社会では受け入れられないことを考えると答えるのが難しい。
「僕はよく似合ってると思うし、そこに男らしさは関係ないと思う。でもこれは僕個人の意見だから……」
「ダメですの?」
「コサージュを贈るのはいいと思うよ。確か母上は、男性が付けてもいいというお考えだろう?」
女性だけじゃなく、男性もコサージュを付けるのが流行になれば、贈り物としておかしくはなくなる。
「一度母上に相談してみようか。少なくとも我が家から贈られたもので、イアン様がお父上から非難されることはないだろう」
けれど悪い印象を与えない確証はない。
厳しい人なら、コサージュを贈られたのは軟弱に見られたからだって、イアンの落ち度として考えるかもしれなかった。
「何だか難しいのですわね……」
「そうだ、次の夜会で、父上に付けてもらおうか?」
強面の父上がアクセサリーとして用いれば、コサージュが男らしくないとは言われないんじゃないか。
咄嗟の思いつきだったけど、ヴィヴィアンは手を叩いて喜んだ。
「とても素晴らしい考えですわ! それなら誰も文句は言えませんわね!」
「あの、そんな、ボクのことで……」
「心配なさらないで、イアン。お父様に任せれば大丈夫よ!」
父上がコサージュについてどう反応されるかはわからないけど、ヴィヴィアンが頼めば付けてくれる気がした。宝石をあしらったコサージュを贈るぐらいだし。
イアンには、その後でコサージュを贈ればいいと話が決まったところで――出かけていた母上が帰ってきた。
「これはどういうことなの?」
応接間に顔を出した母上は、ヴィヴィアンとイアンが一緒にいるのを見て、目尻を釣り上げる。
その顔は怒ったヴィヴィアンにそっくりだった。
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