乙女ゲーのラスボスに転生して早々、敵が可愛すぎて死にそうです

楢山幕府

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「まず王家の血を継ぐ人たちは、光属性の攻撃を無力化できるのだけれど……ルル、今の君は僕の従兄弟であることを忘れないでください」
「あ……」

 話の内容で、身分が特定できることを察してくれたのか、慌ててアルフレッドが口を噤む。

「もしかして相手の武器に、光属性を付与しても有効なのか?」
「その通り。防げるのは武器を使った攻撃に限られるが、殿下は他にも身を守る魔法を習得されているよ」

 あくまで光属性の付与は、外出を認められる条件の一つでしかない。
 しかしこれが一番の難関でもあるようだった。
 実際、事前に聞いた話で、アルフレッドも攻撃魔法を覚えるほうが簡単だと言っていた。

「ふーん、見かけによらないんだな。俺と同じ年だろ?」
「それにお父様より習得が早いんだぞ!」

 なるほど、自信満々なわけだ。
 つい口を出してしまったアルフレッドの額を、テディが人差し指で小突く。

「凄いんだな、殿下は。なぁ、ルル?」
「う? う、うん、殿下は凄いな!」

 あぁ、和む。
 もし僕の表情筋が仕事をしていたら、満面の笑みになっているに違いない。
 すっかり打ち解けた様子の二人にほのぼのしながらも、「光属性」というキーワードに、足首に携えた短剣が思いだされた。
 登城するときは外しているけど、今日は携帯を許可されている。既に光属性が付与されていて、それでアルフレッドを傷つけることはできないからだ。
 前の遠乗りとは違い、今回はウッドワード家の護衛がついていないのも要因だろう。
 それもあってか、私服組がいるにもかかわらず、武装した警備兵の数は多い。
 テディもそのことに気付いているようで、襲われる心配はないな、と呟いていた。
 父上が言うには、今日は街を走る貴族や商人の馬車も、特別な許可証が必要らしい。本来、貴族家のエンブレムや届け出がある馬車については不問な分、厳重さが窺えた。
 それでも荷下ろしをしている馬車の傍を通り過ぎるときは、エリックが緊張しているのがわかる。

「あれも商人か? 体格がいいんだな」
「荷物の積み降ろしは重労働なんだぜ? 雑貨でも、陶器製でサイズが大きくなると、俺一人で運べなくなるからな」
「テディも運ぶのか?」
「人手がないときはな」

 アルフレッドも、テディが男爵位を授かったばかりなのは知っている。
 けれど荷物といえば、侍女や侍従が運ぶものであるアルフレッドにとって、テディの回答は意外だったらしい。

「貴族になって、商品ブランドには箔が付いたけど、一気に懐が潤うわけじゃない。自分でできることは自分でやるさ。つうか男爵家だったら、そんなこと珍しくないだろ?」
「そうなのか?」

 テディに次いで、今度はアルフレッドが僕を見上げてくる。
 アルフレッドの身分だと、男爵家の実情なんてわからなくて当然だ。しかし残念ながら、僕もよく知らない。

「テディが一番詳しいと思います」
「ルーファスも侯爵家だもんな」

 逆に知ってるほうがおかしいか、とテディは笑った。
 そこからは、お金のない男爵家の生活など、赤裸々な話が語られる。
 思うところがあるのか、話を聞くアルフレッドの表情は真剣だった。
 語り合う二人を見ながら、僕の背中には冷や汗が流れる。

 あれ? これってもしかして、ゲーム主人公がアルフレッドとする会話なんじゃ?
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