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月夜桜

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第一章 忍び寄る影

3話 初めてのLHR3

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 新入生研修会の説明が終わり、次は委員会の選抜に入っていた。
 この学校の委員会は、生徒会傘下の自治組織と風紀委員会に分類される。
 生徒会傘下の委員会には、学級代表、代議委員、保健委員、体育委員、図書委員、選挙管理委員、文化委員などがある。
 学級代表は、言うなれば、クラスの意見を纏め、クラス全体としての意思を決定するための組織だ。また、代議員は、月に一度行われる生徒会会議にて、学級代表の代わりに出席し、クラスの意思を示すために存在する。
 保健委員、体育委員、図書委員は読んで字の如くだ。選挙管理委員は、主に生徒会選挙を監督する委員会で、選挙の公示、実施、開票までの全てをこの委員会が行う。文化委員は、年一で行われる文化祭を主導し、運営に携わることが求められる。
 また、風紀委員だが、これは校内で唯一、予算面以外で生徒会から完全に独立した組織である。
 その業務内容は、校内の清掃や校則違反を是正させる風紀部、風紀委員や教員による校則違反の是正指導があったにも関わらず、是正しない者や騒乱行為を起こした者を、武力を以て制圧、逮捕する権限を持ち合わせている罰則強制執行部、前者二つの部門を情報面から補佐をする情報部に分かれている。
 これらの委員会は、風紀委員を除き、全学年各クラスから二名ずつ選出しなければならない。
 また、風紀委員は、全学年全クラスから一名ずつ選出することになっている。

 今現在、忠長のクラスでは、その風紀委員だけが余っていた。

「誰か、風紀委員をやりたい人はいませんか~?」

 望奈美の問いに誰も反応しない。

「うーん、仕方ないですね。では、既に委員会が決まっている人たちを除いて、じゃんけんで決めてしまいましょう! はいっ! 決まっていない人たちで四名と三名のグループを作ってください!」

 望奈美の号令に渋々といった様子で近場の生徒とグループを作り始める。
 そこには、当然のように忠長もいた。

「忠長、勝っても負けても恨みっこなしやで」
「ええ、勝っても負けても、恨みっこなしよ」

 それぞれ、光輝と最後席の和田美咲が言う。
 双方ともに、風紀委員になりたくはないようだ。

「分かってるさ。それじゃやるぞ。最初は──」

 彼はこの時、こう思った。思ってしまった。『所詮学生の遊び。手を抜いてもいいだろう』と。

「「「グー!」」」
「じゃんけん」
「「「ほいっ!」」」

 忠長から席順にパー、チョキ、チョキ。
 彼の完封負けであった。

「ふっ、勝ったな」
「ごめんなさいね」
「くそっ、だが、まだ一試合残ってる。そこで勝ちさえすれば──」

 この後、ただのじゃんけんとは思えない程の白熱したバトルが繰り広げられた末、忠長が負けたことを此処に記しておく。

 ☆★☆★☆

 ロングホームルームが終了し、放課後。
 忠長は、中央棟二階、風紀委員会室に足を運んでいた。全クラスから必ずの選出を決められているため、他の委員会室はかなり広い。それは、風紀委員会でも同じであった。

「一年三組、吉村忠長です。風紀委員会室はこちらでよろしかったでしょうか?」

 ノックをしてから扉に向かって話しかけると中から女性の声が聞こえてくる。

「うん? 新入生だね。どうぞ、入っていいよ」

 委員会室に入ると、そこには栗色のツーサイドアップを揺らしている少女が立っていた。

「ようこそ、風紀委員へ。ここがお探しの風紀委員会室だよ。私の名前は──」

 そして、振り返ると、彼女は言葉を詰まらせる。それは、忠長も同じだった。

「うそっ!?」
「なっ!?」

 互いに目を見開き、声を揃えて驚きの声を上げる。

「忠長君!?」
「姉弟子!?」
「ど、どうして忠長君がここに?」
「いや、それはこちらのセリフなんですが」

 二人は徐々に落ち着きを取り戻したところで声をかける人物がいた。

「あの、委員長。お知合いですか?」

 後ろに振り向くと、そこには小柄の黒髪ツインテの少女が無表情で小首を傾げながら立っていた。
 四角く、黒い縁の眼鏡を掛けており、その身体の小ささに似つかわない豊満な胸の左胸には、風紀委員会情報部であること示す緑色の丸いバッジが着けられおり、彼女の腕の中には、私物だと思われる薄型のノートパソコンが抱えられていた。

「あ、梓紗ちゃん。うん、そうなの。子供の頃、お父さんがやってた道場の門下生でさ。まぁ、所謂、幼馴染ってやつ?」
「いや、そこで話を振らないでくださいよ。えっと、初めまして。一年三組の吉村忠長です。これから宜しくお願いします」

 背筋を伸ばし、とても綺麗な最敬礼をする忠長に「梓紗ちゃん」と呼ばれた少女は目を丸くし、硬直。しかし、直ぐにこちらも整った最敬礼で答礼した。

皇梓紗すめらぎあずさです。こちらこそ宜しくお願いします、吉村君」

 自己紹介を終えた二人を後目に、虹海が掌と拳をぽんと叩いて、満面の笑みでこう告げた。

「──決めた! 忠長君、【罰員】になってよ!」
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