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終焉からの始まり:1

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 * * * 宇宙空間 * * *

照準を合わせてトリガーを引く。

システムサポートで機体が動き、左手に持つ銃が照準に合わせられた敵の機体に、一条のビームを打ち出して、俺に向かって銃口を向けていた目標を破壊する。

破壊された標的の機体は、爆発のエフェクトを発しながら消滅する。


だが、視界に映る全周囲型のモニターには、これでもかと言わんばかりに敵のマーキングが映し出される。


前方の視認できる敵機だけでも、軽く40機以上の人型と昆虫型の機体が確認できる。

これで、上下左右の敵を入れると、どれだけの数になるのか・・・・。


「レイ、残存エネルギーはどれくらいだ?」


『残り68%です。』

俺の右肩に腰掛ける、体長15センチほどの小さな女性が俺に視線を向けながら答える。

彼女の名前はレイ。


こう見えても彼女は、俺の乗る機体:魔皇帝デビルエンペラーの自己確立進化型のCPUメインコンピューターだ。


*自己確立進化型*
Ai(人工知能)なのに、個と言う自己・人格を持ち。
自己学習・自己進化をしていくAI(人工知能)。
ただし、中央権限メインサーバー管理から単独で切り離されているわけではない。



「ブースト2回分か・・・」

『ブーストを2回使用すると、残エネルギー量が10%を切るのでお勧めはしませんが。』

俺の独り言にも近い呟きに、俺の髪の毛を引っ張りながら言うレイ。

今現在に至るまでに、2つ在った予備のエネルギーパックはすでに使い切っている。

エネルギーが切れたら、魔皇帝デビルエンペラーは動かなくなる。

その間にも、敵機はどんどんコッチに向かって迫ってくる。

「アイテム陽炎かげろうを使用後に、アイテム拡散ミラーを10個使用。

システムサポート全開っ! 後方以外の全方向にフォルテマスビームを発射するっ!」

『了解。』


★アイテム:陽炎かげろう
使用効果:3分間、自分の乗る機体のデコイを10機作り出して被弾率を下げるアイテム。
デコイは被弾すると消滅する。


★アイテム:拡散ミラー★
1個のミラーに付き、ビーム兵器で打ち出すビームを10に拡散できるアイテム。

★ビーム兵器:フォルテマスビーム★
機体に設置する事のできるビーム兵器。
1つの設置兵装で、最大5か所の場所に打ち出すことができる。


レイの返事と共に、魔皇帝デビルエンペラーに取り付けられた、両肩・両肘・両膝・背中部分の合計8か所からビームが発射されミラーによって拡散される。


その数、400条ものビームの軌跡が後方以外の全方向に向かって走り・・・・・・爆音が響き渡る。


視界に映る無数の爆発エフェクト。

レイが居るからこそ出来る荒業だ。

俺も、人間ひととしては、そこそこ反応速度は高い方だと自覚はしているけど。

いくらなんでも、この数の演算処理能力は持ち合わせていない。


『敵機殲滅率27%。エネルギー残量62%。 残りはコッチに向かってきます。』

レイの声が聞こえると同時に機体に振動が走る。

『被弾。 損傷率18%。 デコイ全て消滅。』

レイが機体の損傷具合を知らせる。

「ビームシールド展開!」

俺の声と共に、の周囲にビーム状のドームが出現する。

ドドドドドドッ!

ビームシールドに、敵からの攻撃が当たる音が聞こえて機体が揺れる。

『実弾兵器の着弾。損傷率40%をオーバー。 被弾率、尚も上昇!』

「わかってるよっ!」

ビームシールドではビーム兵器のダメージは軽減できても、実弾兵器のダメージは軽減できない。

俺は必死に操縦桿を動かしながら、少しでも機体への被弾を減らそうと努力するが、とても捌き切れる数ではない。

『機体の損傷50%を超えるっ! 機体制御に影響が出るよっ!』

レイの言葉使いが崩れて、地での言葉使いになっている。

それもそうだろう。

俺の愛機の魔皇帝デビルエンペラーは、攻撃を当てられない事を前提にカスタマイズして組み立ててある。

魔皇帝デビルエンペラーに乗り換えてからの被弾率は最高でも30%。

撃墜されたに関しては僅かに3度だけだ。

本来なら、雑魚や中級のNPCノン・プレイ・キャラクターごときに当てられること事などほとんどない。

「つぉぉおおおお!」

半ばヤケクソにも近い雄叫びを発しながら、姿勢制御ブラスターのペダルを踏みこみながら必死に回避運動を取りながら反撃をする。

『悠夜っ! 右側に2機逃がしたっ!』

レイが声を大にして耳元で叫ぶ。

レイの声に反応して、無意識下で左手のサブウェポンのトリガーを引く俺。

後方に抜けた敵機の撃破に成功する。

正直、俺が照準を合わせた訳ではない。

レイが回避運動のサポートをしながら後方の敵機に照準を合わせてくれたのだ。

戦闘開始から既に10分を過ぎている。

レイが居なかったら、3分と持っていなかったろう。

だが、そろそろ俺の集中力も限界に達しようとしているし。

何より、機体の損傷度も限界域に達してきている。

前方に見える敵機は、いったい何百機いるのかも分からない位の数がモニター越しに蠢いている。
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