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中学二年生
慶太side幼馴染の侑
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学校の廊下で前を歩いてくる侑を見かけた時に、胸がザワザワしたのは何でなんだろう。久しぶりに見る侑は相変わらず独特の雰囲気を纏っていた。俺の隣の同級生達が小さな声で長谷部先輩だと噂している。
俺は思わず侑に声を掛けていた。目を丸くしている友達に後から行くからと言うと、侑は男にしては綺麗な顔を微笑みで柔めて俺を見た。確かに侑は綺麗な男だ。何の変哲もない半袖シャツを着ていても、他の子供っぽい中坊とは一線を画している。
久しぶりの部活休みを侑とゲームで遊べるのだと気分が上がった俺は、急いでいた侑と別れて何気なく後ろを振り返った。廊下の角で侑を待っているらしいあの先輩は見覚えがある。小6の時に侑に見せてもらった弓道部の大会の写真で、仲良くしている先輩だと教えてもらった。
三年生のその先輩に睨まれた気がして、俺は思わず急いで歩き去った。何だか気になるあの眼差しは何処かで見た事がある。それが何処だったのか思い出せずに、俺は友達に追いつこうと足を早めた。
結局教室で追いついた俺に、友達が興味深そうに尋ねて来た。
「なぁ、慶太って長谷部先輩と知り合いなの?」
俺は今まで隠して来たのに、うっかり知られてしまった事に顔を顰めて頷いた。
「あー、近所の友達?」
すると顔を見合わせた彼らは、何やらニヤニヤして物言いたげだ。
「マジで。長谷部先輩って下手な女子よりよっぽど綺麗って言うか、芸能人みたいじゃね?声掛けるとか無理だわ。」
「本当それ。弓道部の奴らも、長谷部先輩には中々声掛けられないってボヤいてたし。」
そう言って、好き勝手に騒ぎ出す同級生に俺は肩をすくめて自分の席に戻った。結局侑の見かけに惑わされる奴らに絡まれたくなくて、学校では侑と知り合いだと伏せていた俺の努力もついえてしまった。
女子には話すなと口止めしようと振り返ると、女子も混ざって侑の噂話が盛り上がっているのを見て、俺は遅かったかとため息をついた。侑が見かけで騒がれることに本人より周囲が神経質になったのはいつだっただろうか。確か高学年の頃だったか。
兄貴が酷く苛立って無茶苦茶怒ってたから、何かあったのかもしれない。俺には誰も教えてくれなかったけれど、侑が家に閉じこもった時期があった。なぜか俺たち兄弟だけが侑の家に出入りする事が許されて、俺は今までと変わらない侑とゲームばかりしていた。
心配しているみたいだったけれど、中学の部活で忙しかった兄貴は時々俺に侑の様子を聞くだけで、一緒に遊ぼうとはしなかった。一度兄貴に聞いた事がある。なぜ侑と会わないのかって。
『侑はお前みたいなチビじゃないと怖がるだろ。』
そう訳が分からない事を言って部屋に入ってしまった。今考えると、もしかしたら侑は誰かに嫌な事をされたのかもしれない。嫌な事…。俺は最悪な事を考えた自分に嫌気がさした。もしそうなら、俺の前であんな風には笑ってなかったはずだと思い直して、でも胸のザワザワは収まらなかった。
今自分の部屋に居てキョロキョロ見回している侑は、色白の細い首を伸ばして柔らかそうな黒髪を小さな顔に貼り付けている。おばさん譲りの切れ長の目はぱっちりしているのに一重で、そのせいか印象深い。実際侑は大人しめで目立たないはずなんだけど、纏う空気が独特なせいで密かに注目されている。
侑に彼女が出来たのかと暗に仄めかされて、俺は自分の部屋に女子が居ることに只々居心地の悪さを感じたのを思い出して苦笑した。そして、侑が女子と一緒に居る姿は全然想像できないなとぼんやり思いながら、久しぶりの侑との時間を楽しんだ。
俺は思わず侑に声を掛けていた。目を丸くしている友達に後から行くからと言うと、侑は男にしては綺麗な顔を微笑みで柔めて俺を見た。確かに侑は綺麗な男だ。何の変哲もない半袖シャツを着ていても、他の子供っぽい中坊とは一線を画している。
久しぶりの部活休みを侑とゲームで遊べるのだと気分が上がった俺は、急いでいた侑と別れて何気なく後ろを振り返った。廊下の角で侑を待っているらしいあの先輩は見覚えがある。小6の時に侑に見せてもらった弓道部の大会の写真で、仲良くしている先輩だと教えてもらった。
三年生のその先輩に睨まれた気がして、俺は思わず急いで歩き去った。何だか気になるあの眼差しは何処かで見た事がある。それが何処だったのか思い出せずに、俺は友達に追いつこうと足を早めた。
結局教室で追いついた俺に、友達が興味深そうに尋ねて来た。
「なぁ、慶太って長谷部先輩と知り合いなの?」
俺は今まで隠して来たのに、うっかり知られてしまった事に顔を顰めて頷いた。
「あー、近所の友達?」
すると顔を見合わせた彼らは、何やらニヤニヤして物言いたげだ。
「マジで。長谷部先輩って下手な女子よりよっぽど綺麗って言うか、芸能人みたいじゃね?声掛けるとか無理だわ。」
「本当それ。弓道部の奴らも、長谷部先輩には中々声掛けられないってボヤいてたし。」
そう言って、好き勝手に騒ぎ出す同級生に俺は肩をすくめて自分の席に戻った。結局侑の見かけに惑わされる奴らに絡まれたくなくて、学校では侑と知り合いだと伏せていた俺の努力もついえてしまった。
女子には話すなと口止めしようと振り返ると、女子も混ざって侑の噂話が盛り上がっているのを見て、俺は遅かったかとため息をついた。侑が見かけで騒がれることに本人より周囲が神経質になったのはいつだっただろうか。確か高学年の頃だったか。
兄貴が酷く苛立って無茶苦茶怒ってたから、何かあったのかもしれない。俺には誰も教えてくれなかったけれど、侑が家に閉じこもった時期があった。なぜか俺たち兄弟だけが侑の家に出入りする事が許されて、俺は今までと変わらない侑とゲームばかりしていた。
心配しているみたいだったけれど、中学の部活で忙しかった兄貴は時々俺に侑の様子を聞くだけで、一緒に遊ぼうとはしなかった。一度兄貴に聞いた事がある。なぜ侑と会わないのかって。
『侑はお前みたいなチビじゃないと怖がるだろ。』
そう訳が分からない事を言って部屋に入ってしまった。今考えると、もしかしたら侑は誰かに嫌な事をされたのかもしれない。嫌な事…。俺は最悪な事を考えた自分に嫌気がさした。もしそうなら、俺の前であんな風には笑ってなかったはずだと思い直して、でも胸のザワザワは収まらなかった。
今自分の部屋に居てキョロキョロ見回している侑は、色白の細い首を伸ばして柔らかそうな黒髪を小さな顔に貼り付けている。おばさん譲りの切れ長の目はぱっちりしているのに一重で、そのせいか印象深い。実際侑は大人しめで目立たないはずなんだけど、纏う空気が独特なせいで密かに注目されている。
侑に彼女が出来たのかと暗に仄めかされて、俺は自分の部屋に女子が居ることに只々居心地の悪さを感じたのを思い出して苦笑した。そして、侑が女子と一緒に居る姿は全然想像できないなとぼんやり思いながら、久しぶりの侑との時間を楽しんだ。
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