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乗り越える壁
僕には修羅場
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「翔ちゃん…。おかえり!相変わらず遅いね、お疲れ様。」
心の準備が無かった僕は一瞬息を呑んだけれど、直ぐにいつもの幼馴染の良き弟分を演じた。翔ちゃんは家の門邸に手を掛けると、僕をじっと見つめて言った。
「ただいま。…こんな時間に何処か行くのか?もう遅いぞ?」
僕はハッとして周囲を見回した。もう直ぐ先輩がここに来るかもしれない。それって不味いのでは?翔ちゃんは僕が先輩とそういう関係だって知らないはずだけど、あの慶太がうっかり口走ったとすれば、勘付かないとも限らない。
翔ちゃんとは交わらない人生だとしても、あまり知られたくはなかった。僕は友達の所にこれから泊まりに行くのだと言うと、翔ちゃんに手を振って駅に向かって歩き始めた。丁度その時、通りの角から先輩が手を振って小走りで近づいて来た。
「長谷部!良かった。ちょっと迷っちゃって。…知り合い?」
先輩の視線に釣られて家の方に振り返ると、まださっきの場所に立ち止まってこちらを見ている翔ちゃんが居た。僕はドキドキしながら、ちょっと翔ちゃんに手を振ると先輩と一緒に歩き始めた。
「…慶太のお兄さん。ご近所だから。」
動揺しないで言えただろうか。僕の返事に、先輩はもう一度翔ちゃんを振り返って言った。
「そうなんだ。一年のあいつとあんまり似てないね。凄い背が高いね、スポーツ選手か何か?‥高校生かな。何かまだ見てるけど。」
僕はもう一度振り返ると手を振った。何だかこの状況は心臓に悪い。何がどうって事はない筈なのに。すると先輩が僕の手を繋いできた。僕がハッとして先輩を見ると、先輩はにっこり笑って言った。
「暗いし、誰もいないから。ダメ?」
確かに住宅地で行き止まりの多いこの辺りは、夜9時を過ぎるとめっきりひと気が無くなる。僕は先輩の手を振り払うことも出来ずに、曖昧に頷くと通りの角を曲がった。目の端に僕たちを見送る翔ちゃんの姿が見えた気がした。
僕は翔ちゃんに見られたかもしれないとドキドキしながら、一方でこれで良かったんだと思った。男と手を繋ぐ僕を見たら、きっと翔ちゃんにも分かっただろう。僕と翔ちゃんの世界は離れてしまったって。
そしてもう翔ちゃんが気にする事は何も無いって。
口数が少なくなった僕の手を不意に放した五十嵐先輩は、優しい笑顔を見せて言った。
「流石に駅近で手を繋ぐのは不味いでしょ?でも俺、長谷部に連絡貰って凄い嬉しくて。最近中々お互いに忙しくて会えなかったろ?部活忙しい?」
僕は去年部長だった先輩に、部活の愚痴を溢れる様に話し出した。さっきの翔ちゃんの事を先輩には訊かれたくなかった。あっという間に先輩のマンションの玄関に辿り着いて、僕は先輩に母さんからの手土産を渡した。
先輩の後をついて部屋に向かうと、先輩はチラッと僕を振り返り見た。
「もう風呂入った?」
僕は首を横に振ると、先輩は緊張した顔で僕に言った。
「…一緒に入る?」
僕は分かりやすく固まっていた。それってどう言う事かな。そんな僕に先輩は笑って言った。
「なんて、冗談。先入っていいよ。俺暑いからシャワーにするけど、長谷部どうする?風呂入れようか。」
最近僕もシャワーが多かったので、先輩に自分もシャワーにすると言って先に入らせて貰った。俺はシャワーを浴びながら、もしかして先輩は今夜後ろの方をどうにかしたいのかなと思った。
最近僕は、通販で買ったジェルを使って自分で少し弄る時がある。でも変な感覚だし、やっぱり怖くて、本当に入り口数センチだ。僕は念のため、ボディソープを泡立てていつもより少し奥まで指を入れて気持ち綺麗にした。…念のためだ。
シャワーを出る頃には、何だか身体が熱くなってしまった。期待してるのかな、僕。
心の準備が無かった僕は一瞬息を呑んだけれど、直ぐにいつもの幼馴染の良き弟分を演じた。翔ちゃんは家の門邸に手を掛けると、僕をじっと見つめて言った。
「ただいま。…こんな時間に何処か行くのか?もう遅いぞ?」
僕はハッとして周囲を見回した。もう直ぐ先輩がここに来るかもしれない。それって不味いのでは?翔ちゃんは僕が先輩とそういう関係だって知らないはずだけど、あの慶太がうっかり口走ったとすれば、勘付かないとも限らない。
翔ちゃんとは交わらない人生だとしても、あまり知られたくはなかった。僕は友達の所にこれから泊まりに行くのだと言うと、翔ちゃんに手を振って駅に向かって歩き始めた。丁度その時、通りの角から先輩が手を振って小走りで近づいて来た。
「長谷部!良かった。ちょっと迷っちゃって。…知り合い?」
先輩の視線に釣られて家の方に振り返ると、まださっきの場所に立ち止まってこちらを見ている翔ちゃんが居た。僕はドキドキしながら、ちょっと翔ちゃんに手を振ると先輩と一緒に歩き始めた。
「…慶太のお兄さん。ご近所だから。」
動揺しないで言えただろうか。僕の返事に、先輩はもう一度翔ちゃんを振り返って言った。
「そうなんだ。一年のあいつとあんまり似てないね。凄い背が高いね、スポーツ選手か何か?‥高校生かな。何かまだ見てるけど。」
僕はもう一度振り返ると手を振った。何だかこの状況は心臓に悪い。何がどうって事はない筈なのに。すると先輩が僕の手を繋いできた。僕がハッとして先輩を見ると、先輩はにっこり笑って言った。
「暗いし、誰もいないから。ダメ?」
確かに住宅地で行き止まりの多いこの辺りは、夜9時を過ぎるとめっきりひと気が無くなる。僕は先輩の手を振り払うことも出来ずに、曖昧に頷くと通りの角を曲がった。目の端に僕たちを見送る翔ちゃんの姿が見えた気がした。
僕は翔ちゃんに見られたかもしれないとドキドキしながら、一方でこれで良かったんだと思った。男と手を繋ぐ僕を見たら、きっと翔ちゃんにも分かっただろう。僕と翔ちゃんの世界は離れてしまったって。
そしてもう翔ちゃんが気にする事は何も無いって。
口数が少なくなった僕の手を不意に放した五十嵐先輩は、優しい笑顔を見せて言った。
「流石に駅近で手を繋ぐのは不味いでしょ?でも俺、長谷部に連絡貰って凄い嬉しくて。最近中々お互いに忙しくて会えなかったろ?部活忙しい?」
僕は去年部長だった先輩に、部活の愚痴を溢れる様に話し出した。さっきの翔ちゃんの事を先輩には訊かれたくなかった。あっという間に先輩のマンションの玄関に辿り着いて、僕は先輩に母さんからの手土産を渡した。
先輩の後をついて部屋に向かうと、先輩はチラッと僕を振り返り見た。
「もう風呂入った?」
僕は首を横に振ると、先輩は緊張した顔で僕に言った。
「…一緒に入る?」
僕は分かりやすく固まっていた。それってどう言う事かな。そんな僕に先輩は笑って言った。
「なんて、冗談。先入っていいよ。俺暑いからシャワーにするけど、長谷部どうする?風呂入れようか。」
最近僕もシャワーが多かったので、先輩に自分もシャワーにすると言って先に入らせて貰った。俺はシャワーを浴びながら、もしかして先輩は今夜後ろの方をどうにかしたいのかなと思った。
最近僕は、通販で買ったジェルを使って自分で少し弄る時がある。でも変な感覚だし、やっぱり怖くて、本当に入り口数センチだ。僕は念のため、ボディソープを泡立てていつもより少し奥まで指を入れて気持ち綺麗にした。…念のためだ。
シャワーを出る頃には、何だか身体が熱くなってしまった。期待してるのかな、僕。
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