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ヴィレスクの地へ
招かれざる客
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部屋には護衛騎士たちの緊張感が伝わってきて、僕とエドワードは顔を強ばらせた。どうもトラブル発生みたいだ。運悪くここには大人の権力者がいない。侯爵令息エドワードが頼みの綱の様だ。
執事が僕たちのテーブルに戻ってきて、困った様に言った。
「どうもエドワード様のご学友の様です。丁度お見かけしたのでご挨拶をしたいとの事です。マルガリート子爵家の御令息らしいのですが…。」
エドワードの眉間に皺が寄った。僕をチラッと見て小声で僕に言った。
「確かに知り合いだが友人ではないな。それに、サミュエル ケルビーノの取り巻きだったのではないかな。…ここから顔を出すなよ?面倒な事になるから。」
そう言うと、僕は執事と二人で部屋に取り残されて、部屋の外の様子を窺いながら食後のお茶とお菓子を頂いていた。確かにエドワードの御学友や、偽のサミュエルの友人と顔を繋ぐのは良くないな。何たって僕は友達S君だからね。
しばらくするとエドワードが渋い顔をして戻って来た。
「あいつ、しつこいったら。どうも俺に挨拶するってのは口実だったみたいだ。一緒にいた綺麗どころはどなたですかって、随分しつこく食い下がられた。最終的には俺の侯爵家の力技で押し返したけどね。」
僕は美味しいバターケーキを口に頬張りながら尋ねた。
「ふーぅん。綺麗どころ?変な事言うね。僕たちしか居ないのにね。」
僕がそう言うと、エドワードは呆れた様に僕を指差して言った。
「ほら、ここに居るだろ?あんまり自覚ないと、俺や護衛たちが困るからな?自分でも気をつけてくれよ?」
僕はエドワードの小言をぼんやりと聞きながら、ハッとして尋ねた。
「…でも、綺麗どころって言うくらいだから…、もしかして僕、女の子と間違われたのかな。…何かショック。」
僕の呟きにエドワードと護衛、執事までが何やら固まって小声でヒソヒソと話し合い始めた。それからエドワードが咳払いすると、僕にひどく真面目な顔をして言った。
「ここで講釈を垂れるつもりはなかったけどね、あんまりにもサミュエルが世間知らずで怖いから、ひと言教えておくよ。神の名のもとに、私たちの国は愛に性差によるこだわりはないんだ。
だからね、サミュエルは沢山の令息からも、令嬢からも狙われると言うことだけは知っていて欲しい。サミュエルの美しく、一見儚げな外見は、多くの目を引き寄せるに違いないだろうからね?」
執事が僕たちのテーブルに戻ってきて、困った様に言った。
「どうもエドワード様のご学友の様です。丁度お見かけしたのでご挨拶をしたいとの事です。マルガリート子爵家の御令息らしいのですが…。」
エドワードの眉間に皺が寄った。僕をチラッと見て小声で僕に言った。
「確かに知り合いだが友人ではないな。それに、サミュエル ケルビーノの取り巻きだったのではないかな。…ここから顔を出すなよ?面倒な事になるから。」
そう言うと、僕は執事と二人で部屋に取り残されて、部屋の外の様子を窺いながら食後のお茶とお菓子を頂いていた。確かにエドワードの御学友や、偽のサミュエルの友人と顔を繋ぐのは良くないな。何たって僕は友達S君だからね。
しばらくするとエドワードが渋い顔をして戻って来た。
「あいつ、しつこいったら。どうも俺に挨拶するってのは口実だったみたいだ。一緒にいた綺麗どころはどなたですかって、随分しつこく食い下がられた。最終的には俺の侯爵家の力技で押し返したけどね。」
僕は美味しいバターケーキを口に頬張りながら尋ねた。
「ふーぅん。綺麗どころ?変な事言うね。僕たちしか居ないのにね。」
僕がそう言うと、エドワードは呆れた様に僕を指差して言った。
「ほら、ここに居るだろ?あんまり自覚ないと、俺や護衛たちが困るからな?自分でも気をつけてくれよ?」
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「…でも、綺麗どころって言うくらいだから…、もしかして僕、女の子と間違われたのかな。…何かショック。」
僕の呟きにエドワードと護衛、執事までが何やら固まって小声でヒソヒソと話し合い始めた。それからエドワードが咳払いすると、僕にひどく真面目な顔をして言った。
「ここで講釈を垂れるつもりはなかったけどね、あんまりにもサミュエルが世間知らずで怖いから、ひと言教えておくよ。神の名のもとに、私たちの国は愛に性差によるこだわりはないんだ。
だからね、サミュエルは沢山の令息からも、令嬢からも狙われると言うことだけは知っていて欲しい。サミュエルの美しく、一見儚げな外見は、多くの目を引き寄せるに違いないだろうからね?」
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