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上級生の生活
思ってたのと違う
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僕たちは犬の檻の前で微動だにしなかった。いや、正確に言えば檻の前には立っていない。
先程僕たちが戦闘犬部隊の敷地に足を踏み入れた瞬間、大きく一度確かに犬の様な声に吠えられた。凄まじい迫力の声。目の前の敷地には大きな運動場のようなものがあり、そこには障害物やら、何か訓練に必要なものが設置されていた。
目を移すと遠目に太い鉄の柵が等間隔に設置されている建物が見えた。遠目でも太い鉄柵に僕たちはピンと来ないといけなかったのかも知れなかった。
ローリーのお兄様騎士の案内されるままに僕たちが足を進めると、鉄柵の中に居た茶色と黒の塊が身動きするのが分かった。もしかしてあれが?
そしてもう5歩ほど近づいた時、その塊が立ち上がって、それが思いの外大きい事が分かった。ん?皆思わず顔を見合わせた。そう、その大きな塊の放つ凄まじい殺気を感じたせいかもしれない。
それでも案内騎士が近づいていくので、僕たちは嫌とも言えずに歩みを止めなかった。だいぶ近づいたのだろう、もふもふの毛など生えていない短毛の茶色と黒の筋模様の筋肉隆々の獣が、大きな口から涎をダラダラ垂らしながら低い音を喉から出し始めていた。
僕たちはそこで立ち止まるべきだった。でも案内人は立ち止まる気配なく進む。僕たちは顔を強張らせながら嫌々足を踏み出した。途端に獣は僕たちの方を向いて、今や低い恐ろし気な唸り声で僕たちを脅し始めていた。
僕はじんわりと握った手のひらに爪を食い込ませていた。何だろう、この殺気は。彼らは僕らなど歯牙にも掛けないと言った風で、でも自分達のテリトリーに入ってくるのを嫌がっている。
僕たちは声を出すのも憚られて、もう諦め気分でローリーのくそお兄様騎士の後をついていくしか無かった。途端に恐ろしい勢いで僕たちは彼らに吠え掛かられていた。どう見ても怒っている。気がつけば先導していたくそお兄様が足を停めていた。
別の建物から慌てた様に騎士が走り出てきて大きく手を振った。
「そんなに近づいちゃダメだ!侵入者に怒ってるんだ。下がって!でも背中を見せずに、後退りでね!」
僕たちは喜んでドタドタと後ずさった。それと共に凄い勢いで吠えかかってきていた獣が、さっきよりはマシに思える低い唸り声に変えて、しゃがみ込むモノまで現れた。僕らは彼らのテリトリーに明らかに承諾なく侵入してしまったんだ。
注意してくれた騎士と案内人のお兄様騎士が話している後ろ姿を眺めながら、ローリーはため息をつきながらボソリといった。
「ちょっと抜けてる所があるんだ、あの人。」
僕は少し震える足を感じながら、敷地を囲む鉄の柵の向こうに見え隠れする茶色い物体を眺めながら、頷くしか無かった。今、声を出したら、絶対に震えていたに違いない。
先程僕たちが戦闘犬部隊の敷地に足を踏み入れた瞬間、大きく一度確かに犬の様な声に吠えられた。凄まじい迫力の声。目の前の敷地には大きな運動場のようなものがあり、そこには障害物やら、何か訓練に必要なものが設置されていた。
目を移すと遠目に太い鉄の柵が等間隔に設置されている建物が見えた。遠目でも太い鉄柵に僕たちはピンと来ないといけなかったのかも知れなかった。
ローリーのお兄様騎士の案内されるままに僕たちが足を進めると、鉄柵の中に居た茶色と黒の塊が身動きするのが分かった。もしかしてあれが?
そしてもう5歩ほど近づいた時、その塊が立ち上がって、それが思いの外大きい事が分かった。ん?皆思わず顔を見合わせた。そう、その大きな塊の放つ凄まじい殺気を感じたせいかもしれない。
それでも案内騎士が近づいていくので、僕たちは嫌とも言えずに歩みを止めなかった。だいぶ近づいたのだろう、もふもふの毛など生えていない短毛の茶色と黒の筋模様の筋肉隆々の獣が、大きな口から涎をダラダラ垂らしながら低い音を喉から出し始めていた。
僕たちはそこで立ち止まるべきだった。でも案内人は立ち止まる気配なく進む。僕たちは顔を強張らせながら嫌々足を踏み出した。途端に獣は僕たちの方を向いて、今や低い恐ろし気な唸り声で僕たちを脅し始めていた。
僕はじんわりと握った手のひらに爪を食い込ませていた。何だろう、この殺気は。彼らは僕らなど歯牙にも掛けないと言った風で、でも自分達のテリトリーに入ってくるのを嫌がっている。
僕たちは声を出すのも憚られて、もう諦め気分でローリーのくそお兄様騎士の後をついていくしか無かった。途端に恐ろしい勢いで僕たちは彼らに吠え掛かられていた。どう見ても怒っている。気がつけば先導していたくそお兄様が足を停めていた。
別の建物から慌てた様に騎士が走り出てきて大きく手を振った。
「そんなに近づいちゃダメだ!侵入者に怒ってるんだ。下がって!でも背中を見せずに、後退りでね!」
僕たちは喜んでドタドタと後ずさった。それと共に凄い勢いで吠えかかってきていた獣が、さっきよりはマシに思える低い唸り声に変えて、しゃがみ込むモノまで現れた。僕らは彼らのテリトリーに明らかに承諾なく侵入してしまったんだ。
注意してくれた騎士と案内人のお兄様騎士が話している後ろ姿を眺めながら、ローリーはため息をつきながらボソリといった。
「ちょっと抜けてる所があるんだ、あの人。」
僕は少し震える足を感じながら、敷地を囲む鉄の柵の向こうに見え隠れする茶色い物体を眺めながら、頷くしか無かった。今、声を出したら、絶対に震えていたに違いない。
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