お家乗っ取りご自由に。僕は楽しく生きていきますからね?

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

文字の大きさ
138 / 160
痛み

鈍い感覚

しおりを挟む
僕は意識が気持ちが悪いくらい天井に向かって押し上げられる気がして、その感覚に呻いた。僕の名前を呼びかける声がする。ハッと目を開けると、心配そうに覗き込むアルバートとエドワードの顔が見えた。

途端にアルバートが僕に顔を寄せて、僕に優しく呼びかけた。

「サミュエル、気づいたのかい?…良かった。ずっと意識が無かったんだ。ああ、…本当に良かった!」


エドワードも泣きそうな顔をくしゃりと歪めて呟いた。

「まったく。本当に心配ばかりかけて…。執事に言ってくる。」

そう言うと、部屋から出ていく気配がした。アルバートは僕の頬を大きな手で撫でながら、涙を浮かべて言った。

「お前を失うかと思った…。もう、心配掛けないでくれ。もう…、本当に。」

僕はぼんやりと、やつれたアルバートの顔を見つめながら、ああ、そう言えば僕は風邪気味だったかもしれないと思い出した。それも、ここは寮室じゃなくて、侯爵家の自分の部屋の様だ。病気をして連れ戻されたのだろう。


僕は心配するアルバートの手を握ろうとしたけれど、指先がピクリと動いただけだった。気づけば身体は鉛の様に重くて、呼吸は嫌な音を立てた。ああ、随分拗らせてしまったのかもしれない。

僕はクッションに埋もれながら、アルバートから差し出されるスプーンの上の甘い水をゆっくりと口に含んだ。こうして甘やかされるのは、少し嬉しい。アルバートの優しい眼差しの中に、少しだけ不安が見え隠れしているのは、まだ僕が寝込んでしまうと思っているからだろうか。


「…ご、…ん。」

声が出なかった。僕はどれくらい寝込んでいたんだろう。その時部屋の扉がバタンと開いて、エドワードと侯爵夫人が姿を現した。

「サミュエルが目を覚ましたんですって!?」

二人の後ろから、侯爵家の主治医が姿を見せた。ああ、本当に伏せっていたんだなと、僕は申し訳なく思った。それは僕の胸を揺さぶって、知らずに涙を流していたみたいだ。

「母上が大袈裟に騒ぐから、サミュエルが不安になったのではないですか?」


そうアルバートが言うのを聴きながら、僕は何だか小さな男の子に戻った気分になって、少し笑ってしまった。それに気づいた皆が、ホッとしたように僕を見つめて来た。医師が僕を触診して、胸の音を聞くと頷いて言った。

「まだ油断できませんが峠は越したようです。若いので回復し始めたら早いでしょう。でも無理は禁物ですからね。」

僕は医師の言葉にホッとして、ゆっくりと瞼を閉じた。もう、すっかり疲れてしまって、泥の様に眠気が襲って来た。さっきアルバートに飲ませてもらった薬のせいかもしれない。あの甘い薬の…。


『エイデンにもこの事を知らせましょう。』

そうアルバートが話した声は僕にはもう聞こえなかった。


  
しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の兄、閨の講義をする。

猫宮乾
BL
 ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕はただの平民なのに、やたら敵視されています

カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。 平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。 真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...