魔法のない異世界に転生した、唯一の魔法使い。

モンド

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貴族との関係

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それから10日ほど経った頃、ヘクトさんから領主であるクルーザン辺境伯領主邸への訪問が決まった。
男はヘクトさんの提案を受けて
 ・ウイスキー(実家から持ち込んだと言うことに)
 ・ガラス食器、大きな姿見
 ・寝具5セット(ベット付き)
 ・剣10振(内3振は、付与魔法付き)
 ・美容関係商品(軟水で作ったシャンプー・リンス、化粧水・乳液)
これらをあの後見せていたが、特別な品物なので外に出さない様にと指示されていた。


約束の日、ヘクトさんが馬車で迎えにきて一緒に辺境伯邸に向かった。
街のほぼ中央にある辺境伯邸は、屋敷というより砦の様な趣があった。

守衛に挨拶をして屋敷内に、如何にもとゆう感じの家宰が出迎えて、辺境伯一家の出迎えを受けた。

「辺境伯様及びご家族の皆様初めまして、私はケージと申します。このたび縁あってこの街に居を構えた者です。これは挨拶がわりの品物です、お使いいただければ幸いです。」
と男は言いながら贈り物を説明しながら家宰の男に渡した。
その説明を聞き入っていた、辺境伯の妻と娘がいち早く反応し。
息子2人も剣に興味を引かれた様だった。

妻や息子達を贈り物と共に部屋の外に追い出した辺境伯は、男に
「ヘクトによるとその方は、腕の良い薬師兼錬金術師と聞いている。我が領の為に力を貸して欲しい。」
と意外に低姿勢で声をかけてきた。
「勿論です、私の力の及ぶ限りのご協力をお約束いたします。」
と答えて最初の話は、終了となった。

その後、夕食に招待され晩餐に参加した。

「ケージ殿、この化粧品はとても良い物です。私と娘用に定期購入出来ますか?」
辺境伯夫人が早速試したのだろう、艶のある髪と瑞々しい肌を辺境伯に見せながら声をかけてきた。
「勿論ですが、それらは私からの贈り物として私がこの街にいる限り、補充致します。」
と答えると「まあ」と喜びの声を上げてもらった。

すると辺境伯が、
「あの剣も其方の手による物なのか?」
と、付与魔法の付いた剣のことを聞いてきた。
「はい、未だ納得できるものができていませんが、これはというものが出来上がりましたら今一度お持ちします。」
「いや、催促したわけではない、良い業物であった。次は正当な値段で買わせてもらう。」
と義理堅く答える辺境伯に男は好感を得ていた。

つつがなく挨拶が済んだ男とヘクトさんらは、馬車で辺境伯邸を出て男の家に立ち寄った。
「本日はお手を煩わせて有り難うございました。」
と言う男にヘクトさんは、
「こちらこそいくつか無理をお願いしました。これからもよろしくお願いします。」
と答えて馬車を走らせた。


   辺境伯邸


三本の剣は、[氷][風][炎]の付与がついていた。
魔力が強く魔力操作のできる者がいれば、剣先からそれぞれの属性の攻撃が飛び出すであろう。
辺境伯は、家宰のカルディアと騎士団エスパーニの団長3人で剣を見ながら
「この剣を作ったまだ若いケージなる男どう思う。」
と問う。
「これほどの魔剣、おいそれとは見かけません。本当にあの者が作ったとすれば、是非に囲い込みたいものです。」
とカルディアが言えば
「私は遠くからしか見ておりませんが、足運びなどからしてかなり出来ると感じました。」
と答えるエスパー二。
「ああその意見には同意する。以前剣聖殿にお会いした時と同じ匂いを感じた。故に年相応とは思えぬ。」
と辺境伯が言えば、家宰のカルディアが
「しかし、ヘクト殿の推薦とあの人当たりを考えますと演技とは思えません。他国の間者の可能性は低いと思いますが。」
と言う。
「うむ、そうであるな。しばらく警戒しながらも人となりを見定めるか。」
と話は終了した。

1人になった辺境伯は、大きく息をつき
「この情勢下にあの男の出現、天の采配やも知れぬな。」
と1人呟いた。


   スローライフではなく意外と忙しい。


 男は、商業ギルド、薬師ギルド、冒険者ギルドに登録した後それぞれに品物の納品や買取を依頼していた。

商業ギルドでは、クールヘクト商会が仲立ちしているので、そこまで話題になっていなかったが。
薬師ギルドや冒険者ギルドでは、それぞれのギルマスの部屋に呼ばれて、あれこれと質問攻めに会っていた。

しかし、いずれも男が調薬し、森で討伐していたことがわかると塩漬けの依頼や大量注文が舞い込み始めた。
どうやらこの世界は、危険が溢れている様だ。


毎日を忙しく働きながら男は、一つの楽しみを見つけていた。
それは図書館通いだ。
この世界では本はとても貴重だ、この世界の常識を知らない男にとって、図書館はとても大切で興味深い場所だった。

ある日、図書館の閉館時間に気づかず本を読んでいて、係員からお叱りを受けながら外に出ると。
既に外は暗くなっていた。

「ゼウスには悪いことをしたな、何か温かいものでも買って帰ろうか。」
と言いながら家路を急いでいると、近くの路地裏から争う声が漏れ聞こえてきた。

「離してください!人を呼びますよ。」
若い女性の声。
「どこに人がいるんだよ。だれもこやしねえよ。さあ、一緒に来な。いい所連れて行ってやるからよ。」
卑下た声が聞こえた他にも何人かいる様だ。
どうするか考えながらも男は、声のする方に足を向けた。

「誰かー!ん!」
「黙れよ!痛い目あいたいのか。」
暴れる女を男が2人がかりで押さえつけて連れ去ろうとしている。

「おい!お前ら、その女性を離して立ち去れよ。そうすればもう少し長生きできるぞ。」
男は、男らのすぐ後ろに姿を現してそう言った。
驚く男ら、しかし少年の年恰好の男1人とわかると
「がきがじゃまだ、殺すぞ!」
と1人がナイフを抜き男に軽く突き出した。

次の瞬間その男は、4・5メートルほど宙を飛び路地に叩きつけられると動かなくなった。
「お前やったな。おい!やれ!」
1人の男がそう言うと女の手を掴み盾にすると、他の仲間に指示した。

それぞれが手に手にナイフや剣を持って襲いかかるが、その動きは緩慢で一瞬の間に3人が倒され、ピクリとも動かない。
それを見た残り1人は、
「動くな!女がどうなってもいいのか?」
と女の首にナイフを突きつけ脅しの言葉を口にしたが、既に相手は目の前にはおらず。
次の瞬間、突然視界が反転し自分の体を見ながら地面に落ちて行った。
最後の映像は、自分の首が切り飛ばされた後の映像だったのだ。


頭から暴漢の血を浴びた女は、あまりの事に気を失った。


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