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88 神の領域
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他者や空気中にある魔力を操作するのは、かなり難しいが、自分の体内に存在する魔力は、慣れれば容易に操作できる…らしい。自分の魂からできた魔力、元自分の一部ならば、操作しやすいのでしょうね。
魂が肉体、魔力は血液、脳からの信号が魔法を発動させるための思考と考えれば、イメージしやすいでしょうか?
魂とは魔力の塊であり、魔力の元が生物の核である魂からの流出物なら、その魂からの信号に反応しても不自然じゃない。
そして、魔力の結晶体である魔物が持つ魔石。先ほどの結果から見ても、魂と同じ役割をしていたとしても、何らおかしくないでしょう。
「―――と、仮定してみたんですが、如何でしょう?」
「「「……」」」
そして魔術とは、式内に魔力が流れることで、生物の放つ思考を疑似的に再現すること。ならば、逆に現象から術式を導き出すことができてもおかしくはないはず!
「ど、どうやって?」
「そこが問題ですよね~」
魔力は思考に反応する。つまり思考で魔力に干渉できる……脳波コントロール的な感じか?
魔力に思考を乗せると魔法が発動する、これは恐らく正しい。なら、思考が視覚化できれば、それが術式になる?
魔法が発動するところに、魔法でなく、魔力に乗せた思考が視覚化できる様にできれば?
視覚化……魔力に反応する、目に見えるモノ……魔石、魔力結晶?
魂なんてエネルギーの塊を利用するのは、ダンジョンでも無ければ難しい。だが、魔石なら目に見えて、触れて、安定している。これを利用しない手はない。
問題は、現象やエネルギーを視覚化する方法……いろいろありますね~。
「……片っ端から、試してみましょうか」
―――
簡単にできる事からやって行きましょう。
用意するのは、魔力結晶の粉末と、魔力をよく通す蜘蛛達の糸でできた布。
ピンと張った布の上に粉末を散布し、そこに魔法を発動する要領で、魔力を流してみる。布の上に砂を置いた上で声を掛けると、音の振動が形になる様に、変化が現れないかな?
「魔石は使わないので?」
「魔石は、スキルとかいろいろ混ざり物がありそうですからね。まずは、品質が均一に近い、魔力結晶でやってみましょう」
蜘蛛が代表し、魔力を流す事になった。てか、他種族に譲ろうとしなかった。このマッドサイエンティスト共め……。
「……行きます」
結果が分かりやすいとの事で、火の魔法を試してみる事になった。結果は……
「……? 反応なーーー」
- ボン! -
「ギャーーーー!!??」
…失敗。反応が見られる前に、発火した。
何度か試したが、結果は同じ。魔法が発動してしまったのか、魔力に使用した素材が耐えられなかったのかは不明だが、これで結果を観測するのは難しいと判断された。
次!
今度は、平らな魔抗石の板と、魔力をよく通す蜘蛛達の糸、そして魔力結晶の粉末を用意します。
魔抗石の板に糸を真円に配置、対角線上にも糸を伸ばして配置する。そして、円の中に魔力結晶の粉末を、均一に散布する。ここに左右の糸から、魔法を発動する要領で魔力を流す。
前回は不安定な布の上(魔力的にも)で行ったのが、失敗の原因かもしれないので、【魔抗石】の板の上で行う。確かに、魔力を良く通すので、周りの魔力に影響されてもおかしくなかったですね。しかしこれで、魔力が送られるのは、糸からのみになる。魔術を執行する時に近い状態のはず!
魔石や魔力が思考に反応するなら、電磁石の磁界の様に反応しないかな?
「ま、また燃えたりしない?」
「魔力結晶の量は、さっきと変わらない」
「燃えても、さっきと同じ規模……今度は離れているから大丈夫」
今回は糸から魔力を流すので、安全の為少し長めに、離れて実行する。結果は……
― …………………ジジ -
「「「おぉ!?」」」
― ボン!! ―
「「「ギャーーーーー!!??」」」
……失敗? けど、発火する前に粉末が動いた姿を、複数の者が観測している。そのせいなのかは分からないが、先ほどより発火の規模が大きくなった。
……前回の発火は、素材が負荷に耐えられなくて起こったもので、今回は、多少なりとも魔法が発動して仕舞ったせいで、規模が大きくなったのかな?
次!
魔力が流れるのに、負荷が掛かるのであれば、その負荷を分散してやればいい!
魔抗石でできた円筒の器を用意し、両側に穴をあけて糸を設置、隙間をなくすため、硬化する糸の元で密封接着する。その中に水を張り、粉末を投入し準備完了。
水の中なら、粉末も移動しやすいでしょうし、余計な魔力は水の方に分散する……はず。
豆電球みたいに、焼き切れたりしないよね?
「だ、大丈夫だよね?今度こそ燃えないよね!?」
「水があるし大丈夫! ……多分(ボソ)」
「今度は、吹っ飛ぶかもね?」
不穏な事を言いながらも、魔力を流す蜘蛛達。結果は……
「……あれ?」
「爆発しないね?」
「分散して、魔量の量が足りない?」
「もっと強く流してみる?」
「それじゃ、分散させた意味なくない?」
うーん、粉末は……底に沈んだままですか。なら、粉末を動かしてみるか? すぐに沈むでしょうけど、その間に反応があるかもしれない。
「……マジで?」
「弾けない?」
「さぁ?」
「……誰が動かすの?」
「「「……」」」
「「「……最初はグー! じゃんけん、ホイ! あいこで、ホイ! あいこ―――」」」
「「「―――ホイ! ホイ! ホイ!」」」
「「よっしゃーーー!!!」」
「うえーーーー!!??」
ようやく決定した模様。あ、あの子最初に焼けた子だ。てか君達、頑丈な子に頼むとかしないのね?
「へー、へー、へーーー(深呼吸)……いきます!!」
「がんばれ~」
覚悟を決めて動かしに行った蜘蛛に対して、周りの子達による、無責任な応援が送られる。結果は……
「……うぉ!!??」
爆発する様子も無く、水中で揺れ動く粉末を眺めていた生贄が、驚愕の声を上げる。それを聞き、周りの子達も集まり、中を覗き込む。
そこには火の術式、十字の形に魔力結晶の粉末が集まっている様子が見て取れた。
「「「き、き、き……キターーーーーーーーーー!!!!」」」
―――
セキュリティーレベル10、禁則事項の発生を確認
発生個所の特定開始……特定完了
【世界樹の迷宮】のコアへ接続開始
世界の記憶観覧履歴を確認
セキュリティー違反……形跡ナシ
情報改竄……形跡ナシ
迷宮記録を確認
セキュリティー違反……形跡ナシ
情報改竄……形跡ナシ
審査完了。不正行為は確認されませんでした。
~称号、<神域ヲ覗ク者>を授与します~
「………やってくれたね」
魂が肉体、魔力は血液、脳からの信号が魔法を発動させるための思考と考えれば、イメージしやすいでしょうか?
魂とは魔力の塊であり、魔力の元が生物の核である魂からの流出物なら、その魂からの信号に反応しても不自然じゃない。
そして、魔力の結晶体である魔物が持つ魔石。先ほどの結果から見ても、魂と同じ役割をしていたとしても、何らおかしくないでしょう。
「―――と、仮定してみたんですが、如何でしょう?」
「「「……」」」
そして魔術とは、式内に魔力が流れることで、生物の放つ思考を疑似的に再現すること。ならば、逆に現象から術式を導き出すことができてもおかしくはないはず!
「ど、どうやって?」
「そこが問題ですよね~」
魔力は思考に反応する。つまり思考で魔力に干渉できる……脳波コントロール的な感じか?
魔力に思考を乗せると魔法が発動する、これは恐らく正しい。なら、思考が視覚化できれば、それが術式になる?
魔法が発動するところに、魔法でなく、魔力に乗せた思考が視覚化できる様にできれば?
視覚化……魔力に反応する、目に見えるモノ……魔石、魔力結晶?
魂なんてエネルギーの塊を利用するのは、ダンジョンでも無ければ難しい。だが、魔石なら目に見えて、触れて、安定している。これを利用しない手はない。
問題は、現象やエネルギーを視覚化する方法……いろいろありますね~。
「……片っ端から、試してみましょうか」
―――
簡単にできる事からやって行きましょう。
用意するのは、魔力結晶の粉末と、魔力をよく通す蜘蛛達の糸でできた布。
ピンと張った布の上に粉末を散布し、そこに魔法を発動する要領で、魔力を流してみる。布の上に砂を置いた上で声を掛けると、音の振動が形になる様に、変化が現れないかな?
「魔石は使わないので?」
「魔石は、スキルとかいろいろ混ざり物がありそうですからね。まずは、品質が均一に近い、魔力結晶でやってみましょう」
蜘蛛が代表し、魔力を流す事になった。てか、他種族に譲ろうとしなかった。このマッドサイエンティスト共め……。
「……行きます」
結果が分かりやすいとの事で、火の魔法を試してみる事になった。結果は……
「……? 反応なーーー」
- ボン! -
「ギャーーーー!!??」
…失敗。反応が見られる前に、発火した。
何度か試したが、結果は同じ。魔法が発動してしまったのか、魔力に使用した素材が耐えられなかったのかは不明だが、これで結果を観測するのは難しいと判断された。
次!
今度は、平らな魔抗石の板と、魔力をよく通す蜘蛛達の糸、そして魔力結晶の粉末を用意します。
魔抗石の板に糸を真円に配置、対角線上にも糸を伸ばして配置する。そして、円の中に魔力結晶の粉末を、均一に散布する。ここに左右の糸から、魔法を発動する要領で魔力を流す。
前回は不安定な布の上(魔力的にも)で行ったのが、失敗の原因かもしれないので、【魔抗石】の板の上で行う。確かに、魔力を良く通すので、周りの魔力に影響されてもおかしくなかったですね。しかしこれで、魔力が送られるのは、糸からのみになる。魔術を執行する時に近い状態のはず!
魔石や魔力が思考に反応するなら、電磁石の磁界の様に反応しないかな?
「ま、また燃えたりしない?」
「魔力結晶の量は、さっきと変わらない」
「燃えても、さっきと同じ規模……今度は離れているから大丈夫」
今回は糸から魔力を流すので、安全の為少し長めに、離れて実行する。結果は……
― …………………ジジ -
「「「おぉ!?」」」
― ボン!! ―
「「「ギャーーーーー!!??」」」
……失敗? けど、発火する前に粉末が動いた姿を、複数の者が観測している。そのせいなのかは分からないが、先ほどより発火の規模が大きくなった。
……前回の発火は、素材が負荷に耐えられなくて起こったもので、今回は、多少なりとも魔法が発動して仕舞ったせいで、規模が大きくなったのかな?
次!
魔力が流れるのに、負荷が掛かるのであれば、その負荷を分散してやればいい!
魔抗石でできた円筒の器を用意し、両側に穴をあけて糸を設置、隙間をなくすため、硬化する糸の元で密封接着する。その中に水を張り、粉末を投入し準備完了。
水の中なら、粉末も移動しやすいでしょうし、余計な魔力は水の方に分散する……はず。
豆電球みたいに、焼き切れたりしないよね?
「だ、大丈夫だよね?今度こそ燃えないよね!?」
「水があるし大丈夫! ……多分(ボソ)」
「今度は、吹っ飛ぶかもね?」
不穏な事を言いながらも、魔力を流す蜘蛛達。結果は……
「……あれ?」
「爆発しないね?」
「分散して、魔量の量が足りない?」
「もっと強く流してみる?」
「それじゃ、分散させた意味なくない?」
うーん、粉末は……底に沈んだままですか。なら、粉末を動かしてみるか? すぐに沈むでしょうけど、その間に反応があるかもしれない。
「……マジで?」
「弾けない?」
「さぁ?」
「……誰が動かすの?」
「「「……」」」
「「「……最初はグー! じゃんけん、ホイ! あいこで、ホイ! あいこ―――」」」
「「「―――ホイ! ホイ! ホイ!」」」
「「よっしゃーーー!!!」」
「うえーーーー!!??」
ようやく決定した模様。あ、あの子最初に焼けた子だ。てか君達、頑丈な子に頼むとかしないのね?
「へー、へー、へーーー(深呼吸)……いきます!!」
「がんばれ~」
覚悟を決めて動かしに行った蜘蛛に対して、周りの子達による、無責任な応援が送られる。結果は……
「……うぉ!!??」
爆発する様子も無く、水中で揺れ動く粉末を眺めていた生贄が、驚愕の声を上げる。それを聞き、周りの子達も集まり、中を覗き込む。
そこには火の術式、十字の形に魔力結晶の粉末が集まっている様子が見て取れた。
「「「き、き、き……キターーーーーーーーーー!!!!」」」
―――
セキュリティーレベル10、禁則事項の発生を確認
発生個所の特定開始……特定完了
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セキュリティー違反……形跡ナシ
情報改竄……形跡ナシ
迷宮記録を確認
セキュリティー違反……形跡ナシ
情報改竄……形跡ナシ
審査完了。不正行為は確認されませんでした。
~称号、<神域ヲ覗ク者>を授与します~
「………やってくれたね」
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