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187 拠点ゲット

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国とは、大量の人が住む領域・・だ。それを切り崩すのに、どれだけDPが掛かる事になるか分かったもんじゃないですからね。なので、土地の所有権を、ゴトーさんに金で買ってもらった。

手続きには、【契約書】を使用する為、所有権を変更した土地なら、抵抗なく領域に加えられると睨んでいましたが、問題ありませんでしたね。お陰で、DPを掛けずに敵国内に拠点を築くことができました。

因みに税金等は、都市などへの通行税や、商売の権利などで賄っているらしく、所有権の更新等を申請する必要がないとか。
それだけ? とおもうかも知れませんが、簡略化しまくったことで、人件費を大幅に削減。公共事業も、交通の要と言う事で、頻繁に利用する商人サイドで勝手に道を作ったりしているらしい。

ぶっちゃけ、もう王国では無いでしょう。王の地位は形骸化して仕舞っていて、権力らしい権力が残っていないっぽいし。

当時の国は、戦争による疲弊に、滅茶苦茶になった土地の整備に、魔物に対する防衛力の捻出……相当苦労したでしょうしね。
土地国土の整備を民間に委託してはどうかとか、傭兵ギルドを創設し戦力を民間から募ろうとか、一時的な処置だとか……多分ですが、人間ケルドが何かしら吹き込んだか、暗躍したんじゃなかろうか。

でなければ、国民にとは言え、国土を売り払うなんて対処を、当時の王族がするとは思えないのですが……真面に反論した相手は、暗殺でもされましたかね? 人間ケルドの生態を考えるに、躊躇しなさそうですし。

武力で無理やり侵略するのを避け、内側から浸食する方向にシフトしたのでしょう。でなければ、散々領地侵略を繰り返してきたイラ王国の国教であるイラ教が、カッターナ王国内に浸透なんてしないでしょう。

それに、労働力そして、奴隷を使い捨ての様に扱っているらしく、年中奴隷は一定以上の需要があり、商売として成り立っているらしいですが……人間の奴隷が極端に少ないらしい。それだけ見ても、可能性は高そうです。

(マイロード。領域化は成功しましたかな?)

おっと、ゴトーさんを放置したままでした。成功したことを伝え、俺も人形へ意識を移す。
……この人形、日を追うごとに動きがスムーズになっていきますね。俺が慣れて来たのか、職人オタク共の技術が向上しているのか……多分、後者の方が比重が大きいでしょうか。最近の職人オタク共の俺を見る目が、完全に観察なんですもん。むず痒いったらありません。

……その内、研究者マッド共と結託して、変な仕掛けを組み込まれたりしないでしょうね? その時が来たら、一言声を掛けて貰いたいところである。

「それでは行ってきますね」
「なの、行ってらっしゃいなの!」

皆さんに見送られつつ、コアさんにお願いして<神出鬼没>で現地へ移動する。領域内であれば、コアさんの情報処理が受けられますからね。移動も楽々です。

「よっと……何この部屋」
「メルルルル、マイロードをお迎えするには、少々貧相な部屋かも知れませんが、お許しください」

 おう、愉悦の気持ちが漏れてんぞゴトーさんや、絶対分かっていて言っているでしょう。
 移動した先で視界に入ったのは、真っ赤な絨毯に数々の調度品。少々埃が目立ちますが、そこは掃除すればいいだけですし、そこは問題ない。

 問題なのは、どうやってこんな立派な部屋がある建物、いや屋敷を手に入れたのかと言う事です。何をやったんですか、この悪魔は。この短期間でどんだけ稼いだんですか。

「メルルルル、伝手を頼りましたら、使っていない土地と屋敷があるとの事でして、快く譲って頂きました」
 
 おうおう、御令嬢とか言っていた人の事ですね、想像していたよりも、力のあるお方だった模様。

「安全なんでしょうね?」
「相手は人間では無いので、ご安心ください。街自体の治安ですと、何処も同じようなものですしな」

人間以外がこの国で力を付けるとか、相当な修羅場を潜って居そうですね、一度顔合わせしたほうがいいでしょうかね? ゴトーさんがお世話になっている様ですし、菓子折でも持って挨拶にも……領域外には出られないんでした。俺から出向くのは無理ですね~。

 まぁ、土地については、金でどうとでもなる事は確定しましたからね。ここがだめなら、他を買えばいいだけの事です、金はいくらでも用意できますしね。

~ 報告、<幹部>ゴトーの支配領域との統合が、終了致しました。 ~
~ 続けて、建造物を迷宮化致しますか? ~

「それは無しで。町中に迷宮なんてできたら、気が付く相手が出るかも知れませんからね」

~ 了解 ~

さてと、先ずはここがカッターナで活動する拠点になる訳ですが、想定よりも立派な屋敷が手に入って仕舞いましたね。物資の運び込みや保管が楽になったので、ちょっと計画を前倒ししましょうか。

……その前に、やっておきたいことが有りました。

「どちらに?」
「ちょっと、外に」

 ゴトーさんの問いに答えながら、部屋から出て行く。屋敷の構造はマップで分かっているので、案内は不要です。

廊下を歩き階段を降り、迷うことなく玄関辿り着く。そして、両開きの木でできた扉に手を掛ける。
 ギギギと小さく軋む音と共に、外の冷たい空気が屋敷内へと流れ込んでくるのを感じながら、外へと足を進める。
早朝の時間帯、薄く霧がかかった庭。登り始めた太陽に合わせて、街が動き出す音がここまで届いてくる。

「……す~~~……は~~~……」

 胸いっぱいに空気を吸い込む……うん迷宮の空気の方が美味いかな?

「マイロード、如何致しましたか?」
「う~ん、迷宮以外の外に初めて出ましたが……あまり変わりませんねぇ。むしろちょっと空気がマズイ気もしますし……ここもすでに、迷宮の一部になって仕舞っているせいでしょうか?」
「私め個人の感想を申しますと、普段と変化が有る様には感じませんが」
「では、こんなもんなんですかね? ちょっと期待していましたが、残念」

 ダンジョンの端、外からの視線を遮る石壁と鉄格子状の門の前まで足を運び、外の様子を眺め、片手を出してみるも、変わった感覚はしない。このまま外に出られて仕舞いそうだが、出られないんですよね~。外に出ると、ダンジョンの領域内に急激に引き寄せられるのだ。
現在は人形ですから、コアさんのサポートが無くなって動けなくなりますし、ファンタジーな街を見て回るのは、今はできそうもありませんね。

「そうガッカリしないで下さいませ。ロードでしたらすぐにでも、この街を支配できる事でしょう」
「何物騒な事言っているんですか、そんな心算ある訳ないじゃないですか」

全く、失礼しちゃいますね。俺は魔王か何かですか。
 確認したいことも確認しましたし、屋敷に向けて踵を返す。物資を【倉庫】から取り出さないといけませんし、他の方を迎え入れる準備も必要ですからね~っと、そうだ。

「ゴトーさんや」

 後ろから黙って付いて来るゴトーさんに向け、振り向きながら肩越しに声を掛ける。

「あそこでこちらを観察している人は、お知り合いで?」

向かいの建物の屋根で、<隠密>を発動しながらこちらの様子を伺って居る二人組について、試しにこの国の言葉で尋ねてみた。
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