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250 アルサーン解放③(獣王)
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城壁を抜かれ、王都への侵入を許した獣人の国アルサーン王国は、もはや滅亡は避けられない状況まで陥っていた。
城下では毒で動けない事を良いことに、瀕死とも遺体とも判断付かない獣人達を踏みにじり、嬲り殺し、最後には乱雑に放り投げ、山積みとなったところで焼き払われ、黒煙を上げる……残虐非道な行いが横行していた。
そして、王都の中心に聳える王城では、最後の足掻きが行われていた。
「正義は我等にありってなぁ!」
「あはは、アルベリオン王国騎士団様の力を、畜生の王に見せてやれ~」
アルベリオン王国を名乗る武装集団が、汚い言葉を口々に放ちながら、城の入口へと詰めかける。
「ここさえ抜ければ、王の首はすぐそこだぞ!」
「他の連中に先を越されるなよ!」
城内へと目を向ければ、下種た笑みを浮かべ毒を撒き散らす姿は、戦士などでは無く、学も意志も決意も無く、与えられた力で粋がるチンピラである。
対する獣人達は、主要な通路と扉で陣取り、散発的に襲撃を仕掛ける……その戦い方は、勝つためのものではく、命を懸けた時間稼ぎだ。
数的有利も、毒による汚染も、城内の狭い通路では本来の力を発揮できず、足止めに成功していた……命を対価として。
「ゴフ」
城内で時間稼ぎを行っていた獣人の口から、血が滴り落ちる。それは、薄いながらも気づかない内に、毒霧が彼らの元まで届いた事を意味していた。
少しでも侵されようものなら、ただの足手まとい。口元の血を拭いながら、周囲の仲間に無言で後ろに下がる様に促す。
そして、毒に侵された者は物陰から通路へと飛び出し、毒霧の中へ突っ込んで行く。
相手が反応する暇すら与えず、投げられる毒瓶を撃ち落とし、一人二人と近くの敵に剣を振るい、続いて投げようとする三人目の首を刎ねる。四人目へと剣を突き立てようとしたところで、手の皮膚が削げ、手から剣が滑り落ち、脚が泥の様に潰れ、文字通り崩れ落ちる様に倒れる。
「くそ! 痛ぇ! 痛ぇよ!?」
「この糞獣人が!? 畜生如きが、足掻いてんじゃねぇよ下等生物が!」
浅く傷を付けられ、大袈裟に喚き散らす人間の横で、他の者たちが、命を懸けて時間を稼いだ獣人の戦士を執拗に踏みにじる。その行為そのものが、獣人達に時間を与えているとも知らず、考えもせず……既に勝利を確信していた彼等は、じわじわと嬲る様に城の攻略が進められていた。
―――
「未だ四階広間連絡通路にて、足止め状態か」
「あいも変わらず、すし詰め状態だ。毒はともかく、相手が馬鹿なのが唯一の救いだ」
所変わって王城の最奥。
城内で最も堅牢且つ気密性の高い広間に、幾種類もの獣人が円状に配置された席を囲んでいた。
彼等の正体は、ここアルサーン王国の中核をなす者達だ。
本来なら、真っ先に避難の対象になってもおかしくない彼等が大勢残っているのには、理由がある。
「アルベリオンの下郎共の目がこちらに向いている内に、少しでも遠くへ逃げられれば良いのだが」
「ワシ等の命で他が助かるなら、儲けもんじゃろ」
国民を逃がす時間を稼ぐための、所謂エサ役である。
毒への対抗策がない現状、彼等の選択肢と言えば、逃げるか足止めが関の山。戦闘能力を持たない者であれば、尚の事だ。
さらに亜人の国とは違い、彼等が死のうともそれ程甚大な被害とは成らない。彼等の代わりを務められる者が、常に各部族に一定数居る為だ。
そもそも獣人と亜人では、その社会体制は全く異なる。
亜人の国の様に各々に役職がある訳ではなく、各部族の代表たちの集まりで構成されている。
獣人と一括りにしても、その種類や生活は千差万別。それ故に、一つの役職に一つの部族が就くのではなく、各々が持ち合わせている常識や習慣のすり合わせを行うのが彼等の役目であり、そのまとめ役が国王となる。
つまり、国王を含む現トップを仕留めようとも、アルサーン王国が滅ぶわけではない。例え彼等が死のうとも、生き残った者達の中から後を継ぐ者が現れるだろう。
そんな事を考えもしないアルベリオン側は、彼等の首を取って終わりと、功を焦った者から城へと詰めかけた。
その結果、狭い城内で身動きが取れなくなった者たちが溢れ返り、時間稼ぎを成していた。
「逃げた者達は無事だろうか……それだけが心残りだ」
「北であれば、竜の谷から吹き下ろされる風もある。一か所に大量に撒かれなければ、風上に居る限り大丈夫なはずだが……今の奴らは、何をして来るか分からん」
「……その後の経過は?」
「最後の連絡では、追跡はされていないと報告は受けた。だが、奴らに長距離魔伝が取られてから、時間も経っている。無事を信じる他あるまいよ」
南から攻めて来たアルベリオン王国から、いや、撒き散らされた毒から逃れる為に、アルサーン王国の民は反対の北へと避難していた。
途中までは、魔道具である魔伝を使用し連絡を取り合っていたが、長距離通信が可能な設置型は奪取され、既に外への連絡手段も無い。
彼等にできる事は、無事を祈る事のみだ。
「毒さえなければ、これ程一方的にやられる事など無かったのだが、な」
「「「……」」」
ポツリと漏れた言葉に、悲痛な沈黙が室内に広がる。
河を渡って来たアルベリオンの人間も、異界より召喚されたと思われる者であろうとも、武力による侵略であれば十分に対処は可能だったのだ。
だが、戦力を集め反攻に転じるとなった段階で、異世界人が戦場より引き返し、取って代わって向けられたのは、剣では無く毒。その後に行われたものは、戦争などと呼べない、一方的な虐殺だった。
碌な戦闘にもならず重要な戦力を失ったアルサーン王国は、破滅の道を辿ったのだ。悪態の一つも出ると言うものだ。
「はぁ、その様な事を言っても、今更、ら?」
そんな重苦しい沈黙を破ろうと、一人が口を開いたが、突如、上座に座する獣人が片手を上げ会話を制した。
並みの武具など凌駕するだろう金色の体毛に鋭い爪。
纏っている鎧の端々から覗く強靭な肉体。
獅子の頭と金色の瞳から放たれる眼光は、並みの者では向けられただけで縮み上がる事だろう。
漏れ出す気配と威風堂々とした姿は、周りの非戦闘員とは明らかに別物だ。
「……王?」
猫人の中でも金獅子と呼ばれるこの獣人こそ、アルサーン王国の王。獣王、ガー・レオニダス・アルサーンその人である。
「如何なされました?」
「どうかしたか? レオ坊」
今まで沈黙を保っていた王の行動に、周囲の視線が集まる。王は眉間に皺を寄せ、虚空を凝視していた。
「……そこの者、姿を現せ」
(ホウホウホウ! 吾輩の存在に感付くとは、お見事でございます)
王が口を開けば、それに対し室内に居る全ての者達に届く様に<念話>が飛ぶ。
突然の出来事に驚愕と共に警戒を露わにする獣人達を余所に、目の前の空間が歪み、溶けだす様に一羽の魔物が降り立った。
「突然の訪問、誠に申し訳ございません。状況が状況ですので、無礼を承知でお邪魔させていただきました」
「何者だ!?」
「吾輩の名はホロウ。此度は使者として参りました」
「使者だと?」
真ん丸な球体状の体を引き延ばし、優雅に一礼しつつ名乗りを上げた魔物……ホロウは、周りの獣人達の警戒などどこ吹く風と言わんばかりに、ポフンと脱力する様に元の球体に戻る。
「そうですな……あなた方の国民を保護している者、と言えば、分かりやすいですかな?」
「西へ逃れた民か!?」
毒を撒かれる以前に、国外へと避難した民。その者達より、ある者より保護を受けている旨の報告を受けていた彼等は、すぐにホロウが言わんとすることを理解する。
だが、彼等が受けていた報告は、大雑把な位置と環境の情報のみ。
山を越えた先、それも魔物が闊歩する森に、その様な広大な地を所有する者など想像し難く、本当に存在したとしても、真っ当な存在では到底有り得ない。
それ故に、その情報に懐疑的な感情を持つ者も多かったのだが……その予想に間違いはなかった事を確信する。
匂いも気配もない。何処からこの部屋に侵入したかもわからない。その不気味さから、誰も飛び掛かる様な真似はしなかったが、目の前に現れた魔物は魔物であることを除いても、真っ当な存在ではないのは一目瞭然だ。
「時間も限られている事ですし、単刀直入に申しましょう。先ずはご報告から……これより吾輩らは、この地に居る人間を殲滅致します。これは決定事項でございます」
「まて、殲滅だと? お前たちの目的は何だ?」
獣人達の中から一人、牛人がホロウの話を遮る。
時間が無いと最初に言っているのにと、面倒くさそうに視線を向けるホロウだったが、律儀にその問いに答えて見せる。
「なに、単純ですぞ。そちらから流れて来た者と、こちらの身内が懇意にしておりましてな。その者の……延いては吾輩らの同胞の要望で、此度は動いた次第ですぞ。殲滅については、元々その予定だったのを早めた形ですな」
「懇意だと? そんな戯言信用できる訳が無いだろうが! 証明できるならして見せろ、できるもんならな!」
「そうですな……では、これを見て貰いましょう」
食って掛かる牛人の言葉に、多少面倒くさそうにしながら、
空間が歪み、そこから黒い箱状の何かが取り出される。
「え~~~……ここと、ここを押して……、番号は~、確かコレでしたかな?」
ホロウは独り言を呟きながら、嘴を使い箱を操作すると、箱の反対側から光が放たれる。
其処には、茶色い体毛の犬人の顔が……犬人のリリーの姿があった。
(お? おぉ……おお? ねぇ、ミルキー。これ映ってんの?)
(さぁ? 魔道具の類はからっきしなもので)
「リリー!?」
箱から発せられる音を聞き、一人の狸の獣人が席から立ちあがり、身を乗り出した。
リリー 「ねぇ、ダンマス~、この箱、なんて説明すれば良いの?」
ダンマス「うん? そうですね~、魔伝の映像版みたいなものですよ」
城下では毒で動けない事を良いことに、瀕死とも遺体とも判断付かない獣人達を踏みにじり、嬲り殺し、最後には乱雑に放り投げ、山積みとなったところで焼き払われ、黒煙を上げる……残虐非道な行いが横行していた。
そして、王都の中心に聳える王城では、最後の足掻きが行われていた。
「正義は我等にありってなぁ!」
「あはは、アルベリオン王国騎士団様の力を、畜生の王に見せてやれ~」
アルベリオン王国を名乗る武装集団が、汚い言葉を口々に放ちながら、城の入口へと詰めかける。
「ここさえ抜ければ、王の首はすぐそこだぞ!」
「他の連中に先を越されるなよ!」
城内へと目を向ければ、下種た笑みを浮かべ毒を撒き散らす姿は、戦士などでは無く、学も意志も決意も無く、与えられた力で粋がるチンピラである。
対する獣人達は、主要な通路と扉で陣取り、散発的に襲撃を仕掛ける……その戦い方は、勝つためのものではく、命を懸けた時間稼ぎだ。
数的有利も、毒による汚染も、城内の狭い通路では本来の力を発揮できず、足止めに成功していた……命を対価として。
「ゴフ」
城内で時間稼ぎを行っていた獣人の口から、血が滴り落ちる。それは、薄いながらも気づかない内に、毒霧が彼らの元まで届いた事を意味していた。
少しでも侵されようものなら、ただの足手まとい。口元の血を拭いながら、周囲の仲間に無言で後ろに下がる様に促す。
そして、毒に侵された者は物陰から通路へと飛び出し、毒霧の中へ突っ込んで行く。
相手が反応する暇すら与えず、投げられる毒瓶を撃ち落とし、一人二人と近くの敵に剣を振るい、続いて投げようとする三人目の首を刎ねる。四人目へと剣を突き立てようとしたところで、手の皮膚が削げ、手から剣が滑り落ち、脚が泥の様に潰れ、文字通り崩れ落ちる様に倒れる。
「くそ! 痛ぇ! 痛ぇよ!?」
「この糞獣人が!? 畜生如きが、足掻いてんじゃねぇよ下等生物が!」
浅く傷を付けられ、大袈裟に喚き散らす人間の横で、他の者たちが、命を懸けて時間を稼いだ獣人の戦士を執拗に踏みにじる。その行為そのものが、獣人達に時間を与えているとも知らず、考えもせず……既に勝利を確信していた彼等は、じわじわと嬲る様に城の攻略が進められていた。
―――
「未だ四階広間連絡通路にて、足止め状態か」
「あいも変わらず、すし詰め状態だ。毒はともかく、相手が馬鹿なのが唯一の救いだ」
所変わって王城の最奥。
城内で最も堅牢且つ気密性の高い広間に、幾種類もの獣人が円状に配置された席を囲んでいた。
彼等の正体は、ここアルサーン王国の中核をなす者達だ。
本来なら、真っ先に避難の対象になってもおかしくない彼等が大勢残っているのには、理由がある。
「アルベリオンの下郎共の目がこちらに向いている内に、少しでも遠くへ逃げられれば良いのだが」
「ワシ等の命で他が助かるなら、儲けもんじゃろ」
国民を逃がす時間を稼ぐための、所謂エサ役である。
毒への対抗策がない現状、彼等の選択肢と言えば、逃げるか足止めが関の山。戦闘能力を持たない者であれば、尚の事だ。
さらに亜人の国とは違い、彼等が死のうともそれ程甚大な被害とは成らない。彼等の代わりを務められる者が、常に各部族に一定数居る為だ。
そもそも獣人と亜人では、その社会体制は全く異なる。
亜人の国の様に各々に役職がある訳ではなく、各部族の代表たちの集まりで構成されている。
獣人と一括りにしても、その種類や生活は千差万別。それ故に、一つの役職に一つの部族が就くのではなく、各々が持ち合わせている常識や習慣のすり合わせを行うのが彼等の役目であり、そのまとめ役が国王となる。
つまり、国王を含む現トップを仕留めようとも、アルサーン王国が滅ぶわけではない。例え彼等が死のうとも、生き残った者達の中から後を継ぐ者が現れるだろう。
そんな事を考えもしないアルベリオン側は、彼等の首を取って終わりと、功を焦った者から城へと詰めかけた。
その結果、狭い城内で身動きが取れなくなった者たちが溢れ返り、時間稼ぎを成していた。
「逃げた者達は無事だろうか……それだけが心残りだ」
「北であれば、竜の谷から吹き下ろされる風もある。一か所に大量に撒かれなければ、風上に居る限り大丈夫なはずだが……今の奴らは、何をして来るか分からん」
「……その後の経過は?」
「最後の連絡では、追跡はされていないと報告は受けた。だが、奴らに長距離魔伝が取られてから、時間も経っている。無事を信じる他あるまいよ」
南から攻めて来たアルベリオン王国から、いや、撒き散らされた毒から逃れる為に、アルサーン王国の民は反対の北へと避難していた。
途中までは、魔道具である魔伝を使用し連絡を取り合っていたが、長距離通信が可能な設置型は奪取され、既に外への連絡手段も無い。
彼等にできる事は、無事を祈る事のみだ。
「毒さえなければ、これ程一方的にやられる事など無かったのだが、な」
「「「……」」」
ポツリと漏れた言葉に、悲痛な沈黙が室内に広がる。
河を渡って来たアルベリオンの人間も、異界より召喚されたと思われる者であろうとも、武力による侵略であれば十分に対処は可能だったのだ。
だが、戦力を集め反攻に転じるとなった段階で、異世界人が戦場より引き返し、取って代わって向けられたのは、剣では無く毒。その後に行われたものは、戦争などと呼べない、一方的な虐殺だった。
碌な戦闘にもならず重要な戦力を失ったアルサーン王国は、破滅の道を辿ったのだ。悪態の一つも出ると言うものだ。
「はぁ、その様な事を言っても、今更、ら?」
そんな重苦しい沈黙を破ろうと、一人が口を開いたが、突如、上座に座する獣人が片手を上げ会話を制した。
並みの武具など凌駕するだろう金色の体毛に鋭い爪。
纏っている鎧の端々から覗く強靭な肉体。
獅子の頭と金色の瞳から放たれる眼光は、並みの者では向けられただけで縮み上がる事だろう。
漏れ出す気配と威風堂々とした姿は、周りの非戦闘員とは明らかに別物だ。
「……王?」
猫人の中でも金獅子と呼ばれるこの獣人こそ、アルサーン王国の王。獣王、ガー・レオニダス・アルサーンその人である。
「如何なされました?」
「どうかしたか? レオ坊」
今まで沈黙を保っていた王の行動に、周囲の視線が集まる。王は眉間に皺を寄せ、虚空を凝視していた。
「……そこの者、姿を現せ」
(ホウホウホウ! 吾輩の存在に感付くとは、お見事でございます)
王が口を開けば、それに対し室内に居る全ての者達に届く様に<念話>が飛ぶ。
突然の出来事に驚愕と共に警戒を露わにする獣人達を余所に、目の前の空間が歪み、溶けだす様に一羽の魔物が降り立った。
「突然の訪問、誠に申し訳ございません。状況が状況ですので、無礼を承知でお邪魔させていただきました」
「何者だ!?」
「吾輩の名はホロウ。此度は使者として参りました」
「使者だと?」
真ん丸な球体状の体を引き延ばし、優雅に一礼しつつ名乗りを上げた魔物……ホロウは、周りの獣人達の警戒などどこ吹く風と言わんばかりに、ポフンと脱力する様に元の球体に戻る。
「そうですな……あなた方の国民を保護している者、と言えば、分かりやすいですかな?」
「西へ逃れた民か!?」
毒を撒かれる以前に、国外へと避難した民。その者達より、ある者より保護を受けている旨の報告を受けていた彼等は、すぐにホロウが言わんとすることを理解する。
だが、彼等が受けていた報告は、大雑把な位置と環境の情報のみ。
山を越えた先、それも魔物が闊歩する森に、その様な広大な地を所有する者など想像し難く、本当に存在したとしても、真っ当な存在では到底有り得ない。
それ故に、その情報に懐疑的な感情を持つ者も多かったのだが……その予想に間違いはなかった事を確信する。
匂いも気配もない。何処からこの部屋に侵入したかもわからない。その不気味さから、誰も飛び掛かる様な真似はしなかったが、目の前に現れた魔物は魔物であることを除いても、真っ当な存在ではないのは一目瞭然だ。
「時間も限られている事ですし、単刀直入に申しましょう。先ずはご報告から……これより吾輩らは、この地に居る人間を殲滅致します。これは決定事項でございます」
「まて、殲滅だと? お前たちの目的は何だ?」
獣人達の中から一人、牛人がホロウの話を遮る。
時間が無いと最初に言っているのにと、面倒くさそうに視線を向けるホロウだったが、律儀にその問いに答えて見せる。
「なに、単純ですぞ。そちらから流れて来た者と、こちらの身内が懇意にしておりましてな。その者の……延いては吾輩らの同胞の要望で、此度は動いた次第ですぞ。殲滅については、元々その予定だったのを早めた形ですな」
「懇意だと? そんな戯言信用できる訳が無いだろうが! 証明できるならして見せろ、できるもんならな!」
「そうですな……では、これを見て貰いましょう」
食って掛かる牛人の言葉に、多少面倒くさそうにしながら、
空間が歪み、そこから黒い箱状の何かが取り出される。
「え~~~……ここと、ここを押して……、番号は~、確かコレでしたかな?」
ホロウは独り言を呟きながら、嘴を使い箱を操作すると、箱の反対側から光が放たれる。
其処には、茶色い体毛の犬人の顔が……犬人のリリーの姿があった。
(お? おぉ……おお? ねぇ、ミルキー。これ映ってんの?)
(さぁ? 魔道具の類はからっきしなもので)
「リリー!?」
箱から発せられる音を聞き、一人の狸の獣人が席から立ちあがり、身を乗り出した。
リリー 「ねぇ、ダンマス~、この箱、なんて説明すれば良いの?」
ダンマス「うん? そうですね~、魔伝の映像版みたいなものですよ」
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