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腹癒せにドラゴン退治に行ってきます!
まさか、こんなところで 4
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私は両目を閉じて涙を流しきると、しっかりと開いてアーデルベルトを見つめた。
「もう終わったことです、アーデルベルトさま。私はよりを戻す気などございません。あなた様のご迷惑にならぬように出て行きます。放っておいてください」
謝罪の言葉も聞けたことだし、これでこの話は穏便に終わるだろうと考えていた。封魔錠は付けっ放しにされるかもしれないが、彼はきっとこの部屋を出て行くと確信していた。
だって私は用済みだもの。支配欲の強いアーデルベルトさまは処女の私に興味があっただけみたいだし――正確には、私はまだ貫通されていないから処女なのだけど――、ここでは会わなかったことにして去ってくれるわよね。
早くマッチョさんを探さなければと急く気持ちは出来るだけ面に出さないように意識して、アーデルベルトの様子を窺う。
「――相手は誰なんだ?」
凄みがある声。
私は背筋を震わせた。とてもまずい展開が待ち受けている気配がする。逃げ出したいのに身体が動かなかった。
「あ、相手、とは……」
「お前を抱いた相手だ。名前を教えろ」
アーデルベルトの金色の瞳が再びギラギラとしている。
これはアレだ。私への八つ当たりを諦めることにはしたが、相手の男をどうにかして捕まえていたぶってやろうという――そういうやつだ、間違いない!
私は震えながら首を横に振った。マッチョドラゴンの迫力の次くらいには、生理的に怖いと感じている。肝が冷える感じ。そう物怖じしない性格の私だが、それでも本能的に怯えてしまう相手が目の前にいる。私の武器である魔法が封じられているからというだけでは、きっと、ない。
「お、教えられません!」
なんとか声を出せた。
だが、私の返事に不満があったのだろう。イラついた視線を向けられた。
そ、そんな顔されましてもっ! だって、私、マッチョさんの本名を聞いていないしっ! 答えようがないから!
嘘はついてはいないけれど、だからといって正直にも言えなかった。私が名前も知らない男に抱かれたなんて説明したところで、この目の前の人物が納得してくれるわけがない。アーデルベルトは嫉妬深く粘着質な人でもあるのだ。
プルプルと震えながら、ベッドから移動することもできなかった私の隣にアーデルベルトはやってくる。そして私の顔を覗き込んだ。不機嫌さがまったく隠されていない笑顔が至近にある。
「どうしてだ? 礼の一つでも言ってやろうと思っているだけなんだが」
いやいや、それってケンカ売りに行く気満々ですよね? あ、いかん、冷や汗が止まらないぞ。悪寒もするし、病気になりそうなんだけど。
「もう終わったことです、アーデルベルトさま。私はよりを戻す気などございません。あなた様のご迷惑にならぬように出て行きます。放っておいてください」
謝罪の言葉も聞けたことだし、これでこの話は穏便に終わるだろうと考えていた。封魔錠は付けっ放しにされるかもしれないが、彼はきっとこの部屋を出て行くと確信していた。
だって私は用済みだもの。支配欲の強いアーデルベルトさまは処女の私に興味があっただけみたいだし――正確には、私はまだ貫通されていないから処女なのだけど――、ここでは会わなかったことにして去ってくれるわよね。
早くマッチョさんを探さなければと急く気持ちは出来るだけ面に出さないように意識して、アーデルベルトの様子を窺う。
「――相手は誰なんだ?」
凄みがある声。
私は背筋を震わせた。とてもまずい展開が待ち受けている気配がする。逃げ出したいのに身体が動かなかった。
「あ、相手、とは……」
「お前を抱いた相手だ。名前を教えろ」
アーデルベルトの金色の瞳が再びギラギラとしている。
これはアレだ。私への八つ当たりを諦めることにはしたが、相手の男をどうにかして捕まえていたぶってやろうという――そういうやつだ、間違いない!
私は震えながら首を横に振った。マッチョドラゴンの迫力の次くらいには、生理的に怖いと感じている。肝が冷える感じ。そう物怖じしない性格の私だが、それでも本能的に怯えてしまう相手が目の前にいる。私の武器である魔法が封じられているからというだけでは、きっと、ない。
「お、教えられません!」
なんとか声を出せた。
だが、私の返事に不満があったのだろう。イラついた視線を向けられた。
そ、そんな顔されましてもっ! だって、私、マッチョさんの本名を聞いていないしっ! 答えようがないから!
嘘はついてはいないけれど、だからといって正直にも言えなかった。私が名前も知らない男に抱かれたなんて説明したところで、この目の前の人物が納得してくれるわけがない。アーデルベルトは嫉妬深く粘着質な人でもあるのだ。
プルプルと震えながら、ベッドから移動することもできなかった私の隣にアーデルベルトはやってくる。そして私の顔を覗き込んだ。不機嫌さがまったく隠されていない笑顔が至近にある。
「どうしてだ? 礼の一つでも言ってやろうと思っているだけなんだが」
いやいや、それってケンカ売りに行く気満々ですよね? あ、いかん、冷や汗が止まらないぞ。悪寒もするし、病気になりそうなんだけど。
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