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第2章

食事①

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 その機会は、意外と早くやって来た。


「オリビア様、ご夕食の時間でございます」


 私が自室で本を読んでいると、ハンナが入ってきてそう言った。


「わかりました」

「本日は、旦那様もご一緒されるようです」

「そうなのですか。それは良かったです」


 レイモンドは何かと忙しいようで、私がここに来て以来、彼と同じタイミングで食事を取ったことはなかった。


 彼はいつも、自室か執務室で簡易的な食事を取っているらしい。


「せっかくですから、一張羅に着替えようかしら」


 私は独り言を呟いた。


 初めて共に過ごす食事である。

 ちゃんとした恰好をするのは、至極当然のことであるように思えた。


 私はハンナに手伝ってもらい、数着しか持ってきていないドレスの中でも、一番新しいものを身に付ける。


 夜会用の、シックな紫色のドレスだった。

「とてもお似合いでございます」

 ハンナは言った。

「ありがとうございます」




 私は下の階に降り、いつものようにダイニングへ向かう。


 いつもと少し違うのは、使用人たちの数が増えていることだ。 


  この屋敷の主であるレイモンドが久しぶりにちゃんと食事を取るから、使用人たちが張り切っているのだろうと思いきや、そうではないらしい。


 扉付近で数人の使用人たちが、ひそひそと小声で話している。


「用意した?」

「しました」

「何㎏?」

「一応、3です」

「もう少し用意出来ない?」

「は、はい。すぐに農家に」


 なんだか不穏な会話だ。


「あっ、オリビア様!」


 その内の1人が、私に気づいた。

「申し訳ございません、失礼しました」


 どうやら、私が部屋に入れずに右往左往していると思ったらしい。


 すぐに彼らは扉から離れて行った。

「気になさらないでください」

 私は慌ててそう言ったが、彼らは既に私の視界から消えてしまっていた。


 勘違いさせたかな。


 申し訳ない。


 少し落ち込みつつも、気を取り直して扉を開く。


 部屋には、レイモンドが既にやって来ていた。

 彼の体型的に椅子に座れるのだろうかと心配だったけど、なんてことはない、彼専用の大きな椅子があるらしく、普段使う椅子の数倍大きな椅子の上に、レイモンドは人形みたいに座っていた。

「ああ、オリビア様」


 私の姿を認めたレイモンドは、笑顔を浮かべて立ち上がる。

「いらっしゃったのですね」

「え、ええ」


 だが、私の視線はレイモンドではなく、テーブルの上にあった。


 大きなテーブルの上には、私の身体ほどもある大きさの皿がいくつもあり、そこに山盛りになった肉や魚料理、サラダや飲み物などが文字通り隙間なく乗せられていた。


 ざっと、20人分。


 えっ……。

 嘘。

 これ、もしかして1回の食事量?


 これを2人だけで食べるの?

 
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